アメリカ人でさえ
撮らないコメディ映画

本映画の企画を考えた際にプロデューサーたちはニコラ・ブナム監督の名を真っ先に考え付いたのだという。物語は『世界の果てまでヒャッハー!』と全く違うけれど核になるのは同じことで、“スピードを落とせなくなった狂気の車の中の一家”を描いていた。アクション映画を作れる監督はいたが、彼らにはコメディの感覚が欠けていて、逆にコメディの監督はアクション映画に慣れていなかった。ニコラ・ブナム監督なら二つの要素を融合してうまく映画を作れると考えたのだ。「私にとって何より魅力的だったのは、アクションとコメディを混ぜ合わせること、それによって映画の内容が豊かになること、そして突飛な面もあるところだ。この種のシーンを撮った監督は多くはないけれど、ディノ・リージの『LE FANFARON(原題)』には、俳優が本当に運転している場面があった。このシーンを撮るために、撮影隊はカメラマンを乗せた台車を使ったんだ。60年代の映画だから、まず道を撮ったら振り向いて運転手を撮ったのがわかる。30年前でも撮れたとはいっても、撮影には1年かかっただろうね。私の大好きなジャン=ポール・ベルモンドの今ではもう作れないアクションコメディも思い出させる。確かなのは、現在の技術なら、いろいろなことが簡単になり可能性が広がったということ。『ボン・ボヤージュ~家族旅行は大暴走~』は見たこともない斬新な映画で、アメリカ人でさえこんなのは作っていないね。」