ネオナチ批判?ドイツ国民性批判?
ポイントは「ユダヤ人ネタ」を禁じたところにある。
いまの日本人はマスコミ批判と観なければならない。自ら禁じるネタが多すぎる。
現代ドイツを舞台に「アドルフ・ヒトラー」という
人類最大のタブーを登場させて
国家ごと揺さぶった超快作。
現実と諧謔の絶妙な配合で
観る者すべてのモラルを撹拌させる。
民衆はヒトラーを愛し、
そしてヒトラーは民衆に選ばれた。
現代のリベラルな多文化主義とマスメディアの倫理は、
この端的な事実を克服できたのだろうか?
そして私たちはこのユーモラスな知的挑発を、まだ笑える状態にあるのだろうか?
この映画は『薔薇の名前』のアンチテーゼだ。
『薔薇の名前』のメッセージは、
われわれは笑えばファシズムから逃れられる、だった。『帰ってきたヒトラー』は逆に、
笑いがファシズムへと
人を導くこともある、と教える。
この映画、本当に笑っていいのか?
なんかヒトラーがいい奴に見えて来た。
しかし、笑ってしまったが最後、
ヒトラーはあなたの中にもいる。
彼はこの社会にずっといたのだ。
戦後70年。あの時にリアルを感じさせるには、
相当な工夫が必要で、まさにこの映画がそれだろう。
何も考えずに生きたい人には、
絶対にお勧めできない映画だ。
蘇ったヒトラーと、現代人とのギャップに爆笑!
だけでは終わらない。
ズレてるはずのヒトラーが、
次第に現実の世界とマッチしていく。
その姿にゾクッとすること間違いなし。
愛しきヒトラー。
現代に帰ってきたヒトラーは、まるでチャップリン?!
笑うなと言われても笑ってしまう。
これがドイツ流のユーモアなのか!!
ヒトラーで笑える楽しい映画って、素晴らしい!
是非、観て、笑って。
まさか、あのヒトラーに
我々現代人が皮肉られる日がこようとは…。
単なる風刺映画にあらず、
デヴィッド・ヴェンド監督は信念を貫く男である。
最高のコメディにして、最高のスリラー。
アナタの心の中にも、きっとヒトラーが棲んでいる。
そのヒトラーが、今スクリーンに蘇るのだ。
これは心底恐ろしい。
「ったく、くだらない映画だなぁ」と、ニヤリと笑う。
いつしか、そのニヤリの意味が
ひっくり返っていることに気づく。
これはマズいことになった。
笑わなきゃよかった。
冒頭から身構えた。
ナチの傑作プロパガンダ映画「意志の勝利」を思い起こさせた。
あの男の演説に高揚していく自分を抑えるのが必死だった。
この映画は教えてくれる。
狂気は私の中にある。
すごい小説が、もっとすごい映画になった。
愉快で恐ろしい夢を見ているような気持ち。
現代に蘇ったヒトラー@オリヴァー・マスッチの怪演に酔わされてしまった。
本物が、まるで私のような
扱いを受けていて苦笑しながら拝見。
不謹慎コメディ系か、
SF皮肉系かと思いつつ、そんな枠を簡単に超えて、
フェイクドキュメンタリーもセミドキュメンタリーも
ドラマもパロディも社会派も生半可でない掘り進み方、
ラストの強烈なメッセージがひりひりさせてくれます。
この手法にはマイケル・ムーアも脱帽では
そして、モンティ・パイソン的
毒ガスもふんだんに……。
「両側」に振り切る腹のくくり方が超絶。
映画人の「毒」にドイツの希望を見た。
抱腹絶倒しつつ次第に笑みが消えて行く。
もう誰も免責されない。
かつて藤子不二雄は隣人になった
ヒトラーを描いた(『ひっとらぁ伯父さん』)。
この映画で奴はメディアの寵児と化す。
どちらも風変わりで人懐っこい。
こうして私達は悪魔と戯れはじめるのだ。
<五十音順/敬称略>