PRODUCTION NOTEプロダクション ノート

最高に難しかったのは、一人称で書かれた400ページの小説を、どうやって映画にするかだ。
ヴェルメシュはこう語る。「“誇大妄想狂で情緒不安定”でありながら、
一方では“チャーミングで礼儀正しく柔軟性のある”リアルなヒトラーを小説で描きたかった。
多くの人々は、人を洗脳して魔法をかける怪物としてのヒトラーを見たがる。
でもそういう悪魔化は、彼が大衆を巻き込むほど友好的で、賢く魅力的だったからこそ、
政界での台頭やホロコーストが可能だったという事実を隠してしまう。」

そんな原作の精神を、映画にも引き継ぐことをヴェルメシュに約束したプロデューサーたちは、
脚本開発の初期段階から関わることのできる監督を探した。
その結果、デヴィッド・ヴェンドが最も興味深いヴィジョンを持っていた。
彼はヒトラーを街頭に送り出し、フィクションにドキュメンタリーを融合させようとしたのだ。
「現代にヒトラーが現れたらどうなるのか?
この疑問に対する答えを得るには、この手法しかなかった。
何かを主張するには、リアリティが大切だと思ったんだ」とヴェンド監督は説明する。