プロフィール

1971年生まれ、石川県出身。木村威夫氏に師事し、『スリ』(00)、『父と暮らせば』(04)、『紙屋悦子の青春』(06)などの黒木和雄監督作品、『ピストルオペラ』(01)、『オペレッタ狸御殿』(05)などの鈴木清順監督作品に参加。美術監督デビューは、『月光の囁き』(99/塩田明彦監督)。近年の主な作品に、黒沢清監督の『岸辺の旅』(15)、『クリーピー 偽りの隣人』(16)、沖田修一監督の『南極料理人』(09)、『横道世之介』(13)、山下敦弘監督の『マイ・バック・ページ』(11)、『味園ユニバース』(15)、熊切和嘉監督の『夏の終り』(13)、『私の男』(14)、橋口亮輔監督の『恋人たち』(15)など。また『ノルウェイの森』(10)のトラン・アン・ユン監督、『女が眠る時』(15)のウェイン・ワン監督など海外巨匠監督との仕事も多い。吉田監督とのタッグは、『紙の月』(14)に続く2作目。

Q&A

本作で美術的にこだわった点を教えてください。
この映画特有のリアリティラインをどこにどう設定するのか。生々しいリアルさ、では無く、本当らしくありながら寓話的なニュアンスをどうすれば出せるかと思案致しましたが・・結果は如何だったでしょうか。

安宅さんにとって吉田監督はどんな存在ですか?
確固たる狙い、イメージがありながらも、こちらの提案に面白い要素があれば受け入れて頂けるような懐の深さを感じます。一方で、相反した両義性を持つような表現をふいに要求されたりもしますので(確信犯ですよね?)気が抜けないと同時に、非常に刺激になります。

美術という立場から見たキャストの皆さんの印象を教えてください。
今回は非常に優れた方々が集まっていたのではないでしょうか。大杉家のキャストのお名前を最初聞いたときに、個々の方々は勿論素晴らしいが、その特性故、正直家族に見えるのかな?とも少しだけ思いましたが・・(偉そうにすいません!)全くの杞憂でありました。
近しいだけに分かり合えない家族の微妙な空気が、存在感をもって確かに漂っておりました。

安宅さんが映画づくりの喜びを感じる瞬間は?
撮影現場では共同で画を作り上げていく作業の連続になります。
撮影、照明の方は元より、他にも様々なスタッフが関わっていく中で、色々な要素が重なり合い、最終的には自分だけで考えていたイメージを軽々と凌駕していく瞬間が時折あります。それを目撃するとき非常に喜びを感じるように思います。

映画美術のお仕事を志した理由を教えてください。
うーん、難しいですねえ、実は自分でもよく分からないのです。
何となく、というと怒られますでしょうか‥。
美術の仕事としては、先ず監督の思い描いている世界観を共有し、イメージを探ります。それを頼りにして、イメージを可視化し、それを増幅させるような作業になると考えております。そのときに、自分も納得しうるようなイメージの核、テーマとなる部分が抽出出来るかが結構鍵になっているように思います。
それが多少でも出来ていれば幸いですが‥自分では中々判断出来ません。

完成した映画はご覧になって、いかが思われましたか?
監督らしい、非常に多義性を持った作品だと思います。
描き方によっては幾分偏った、声高にテーマを掲げる硬直した物になりかねない要素も多分に含んでいる作品だとは思いますが、実際観た感触は非常に軽やかで柔軟さを持った印象に感じます。
個の内側に閉じていき、収束していくだけの話では無く、真逆ではありますが、開いていき、拡散するような感覚が自分の中には残りました。