一方、ミレンはサザーランドとは全く逆のアプローチをしたとヴィルズィ監督は振り返る。「彼女は役柄を家に持って帰らない。セットにご機嫌で到着し、演技とは関係のないことを話す。食べ物や休暇、イタリアのサレントにある彼女の家のことなどだ。だが、カメラの前に立つと、申し分のない演技をして、私たちみんなを黙らせたりウキウキさせたりする。そして、その日の終わりには『チャオ、みなさん、また明日ね』とだけ言って出て行くんだ。現代の女優の中で最高の一人であるだけではなくユニークな人物だ。率直で、同時に洗練されていて、ものすごく知的で、とても機知に富んでいて、クルーからエキストラまで誰とでもとてもおおらかにやれるのさ。」 「僕たちは彼女をクィーンと呼んでいたよ」と言うのは、脚本のステファン・アミドンだ。「ヘレンは僕が出会った中で、最もプロフェッショナルな人だ。ヘレンとドナルドの二人が一緒にいるのを見るのは興味が尽きなかった。彼女はまさに古典的なシェイクスピア俳優だし、ドナルドは典型的なアクターズ・スタジオ・メソッドの俳優だ。だけど、そうした対照的なアプローチが、ぴったり彼らの演じるキャラクターにはまったんだよ。」 「実際、彼らには監督さえ必要なかっただろうね」とヴィルズイ監督は笑う。「基本的に、私たちの仕事は、常にこの二人の並はずれたアーティストがセットで作り出す品位や詩情を掴もうとすることだった。」 「エラは全力で激しく人生に取り組んでいるの」とミレンは解説する。「彼女は喜びと共に、粘り強く人生にしがみついている。絶対に人生から引き下がらなかったのよ。彼女が口紅とカツラをつけた時に、エラの決意と気骨が見えるはず。それは彼女にとって、世界と対峙するために身につけるユニフォームなの。」