撮影は2016年の夏に行われたが、ロケ場所を探している時から避けられなかったのが大統領選挙だった。ポスターや広告用の掲示板が、いたるところで両陣営の候補者を宣伝し、この夏が歴史的なものになることは明らかだった。ミレンは「私たちが撮影している間、トランプは最高潮だったわ」と振り返る。「11月にどんな結末を迎えるか予測できなかったが、目の前の出来事は私に衝撃を与えたし、とても重要だった」と語るヴィルズィ監督は、選挙戦に沸く人々のシーンを急遽、加えることにした。 ウィネベーゴ社のキャンピングカーの中のシーンでは、クルーはとても狭い空間にすし詰めにならなければならなかった。「私たちはエアコンのない古いおんぼろキャンピングカーに詰めこまれていた。ひどくこたえる東海岸らしい夏の気温の中で」とヴィルズィ監督は思い起こす。「ヘレンとドナルドの前に扇風機を2台置いた。それしか、キャンピングカー内部に風を入れる方法がなかった。ヘアやメイクを呼ぶのも難しかったので、私がドナルドの眉や額を素早く拭いたり、撮影監督のルカ・ビガッツィがヘレンにカツラをかぶせたりした。二人の役者はそうした決して万全とは言えない環境を楽しんでいるように見えた。まるでイタリアのネオレアリズモ映画のようだったね。」