2021.01.19 POSTED

映画『心の傷を癒すということ<劇場版>』
完成披露試写会&トークイベントレポート

今から25年前、阪神・淡路大震災によって瓦礫の山と化した神戸に、“被災者の心のケア”のパイオニアとなった、ひとりの若き精神科医がいた。多くの被災者の“心”に寄り添う壮絶な日々と、彼を懸命に支えた家族との絆を描く感動のヒューマンドラマ「心の傷を癒すということ」。2020年1月にNHKで放送され、大きな反響を呼んだドラマが劇場版として1月29日(金)より公開されます【関西地区は2月12日(金)より公開】。1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災。自らも被災しながらも、避難所などで“被災者の心のケア”に積極的に取り組んだ若き精神科医・安克昌氏を柄本佑が演じ、彼を支える妻・終子に尾野真千子が扮している。そんな本作の公開を記念し、1月15日(金)、本作のプロデューサー京田光広氏(NHKエンタープライズ近畿総支社企画事業部)とドラマ版の総合演出の安達もじり氏(NHK大阪拠点放送局制作部)を迎え、OSシネマズミント神戸で完成披露試写会とトークイベントを行った。京田氏と安達氏の作品との関わりは、京田氏が東日本大震災後に安克昌氏の原作に出会い、これをいつかドラマにしたいと思っていた時に、安達氏とある番組で出会い、安達氏に企画を渡し、安達氏が安先生の魅力に魅了され、ドラマの企画がスタートしたという経緯があります。

まずは、安達氏に原作の魅力について尋ねてみると、「安先生の原作は、2時間ぐらいで一気に読んでしまいました。何より、安先生の息づかいが心に響きましたし、グサッとやられた感覚がありました。私は阪神淡路大震災を直接体験していないので、それをドラマで表現することへの引け目はありましたが、ちゃんと震災と向き合おうと思いました。安先生の関係者の皆さんの話を聞いていると、安先生は本当に魅力的な方だったんだと痛感しましたので、ひとりの人間のドラマとしてちゃんと作りたいと思いました」と語っていました。

そして、神戸での完成披露試写会ということで、安先生の妻・終子を演じた尾野真千子と安先生に扮した柄本佑からビデオメッセージが届けられました。まずは尾野さんが「神戸にお伺いしたかったのですが、こういうご時世ですので、ビデオメッセージとさせていただきます。申し訳ありません」と前置きし、「この作品は、ひとりでも多くの方に観たこと、感じたことを伝えたくなるような、これからも受け継いでいきたくなるような映画です。この作品が伝えている温かく優しいメッセージか、ひとりでも多くの方に届いてほしいですし、伝わってほしいと思っています」と真摯に語っていました。続いて、柄本さんは「まさか劇場版として、しかも大きなスクリーンでこの作品を観てもらえるとは思っていなかったので、非常に感動しております。この作品は、神戸で撮影したので、空き時間に神戸の街を歩かせていただいて、すごく自分の肌に合う街だと思いました。とても暮らしやすい街だと思ったので、また早く神戸ロケのある作品に出会えないかと真面目に思っております。この作品がスクリーンでかかる映画になることで、もうひとつ安先生のご家族にプレゼントできるものが増えたことがとても嬉しいです。ドラマを見られた方は、凝縮されることでまた新たな作品の魅力を感じていただけると思いますし、初めて映画を観られる方は、これをきっかけに4時間のドラマを見ていただけると嬉しいです。震災や心のケアなどが題材になっていますが、1本のエンタテインメント作品として肩肘はらずに楽しんでいただけたら、と思います」とメッセージを送っていました。

そこで、柄本さんと尾野さんのキャスティングについて尋ねてみると、安達氏は「元々、佑くんとは顔見知りだったんですが、ご一緒したことはなくて、この企画が立ち上がった時に、年齢も含め、見た目も安先生に雰囲気が似ているように感じてお声掛けしたところ、快諾していただきました」と柄本さんのキャスティングの理由を明かしていました。京田氏も「僕はご本人にお会いしていないので」と前置きした上で「安先生に似ているというよりも、佑くんなりに表現してくれたことがすごく良かったと感じています。似ている、似ていないよりも、佑くんがすごかったんだと感じています」と柄本さんを絶賛していました。また、尾野さんについて安達氏は、「このドラマ自体にすごく感情移入してくださって、ものすごく自然体で神戸に生きている人として存在してくれていたので、佑さんの放つオーラもあったと思いますが、非常に肩肘の張らない、すごく穏やかな現場でした。佑くんと尾野さんが夫婦としてそこにいるような時間がすごく多かったように感じる、素敵な現場でした」とふたりの雰囲気を褒め称えていました。京田氏も「安先生のご家族とスタッフでご挨拶も兼ねた食事会があったんですが、我々もご家族と一緒にドラマを作らせて欲しいと思っていたので、ご家族にあなたの役は誰がいいかと聞いてみたんです。その時にピンポイントで尾野真千子さんという名前が上がって、その場で全員がピピっときたんです。見事、最高のコンビでした」と、こちらも大絶賛していました。

また、神戸での撮影について聞かれると安達氏は、「神戸のシーンはほぼ神戸でロケをしたんですが、昨年がちょうど震災から25年という節目だったので、行く先々でドラマについて丁寧に説明させていただいたら、涙が出るぐらい、たくさんの皆さんにご協力いただけて、避難所の撮影も300人ぐらいの方にご参加いただきました。神戸の皆さんと一緒に作らせていただいたような感覚でしたし、そういう思いが画面に映っているのではないかと思います」と感慨深く語っていました。

最後に、コロナ禍の中で映画が公開されることについても含め、作品を観てくださる方へのメッセージをいただきました。京田氏は「安先生のドラマを作るに当たって、僕もご家族にまず届けたいと思いましたが、それはドラマでやり遂げたつもりでいました。それが映画になって、まさかこのタイミングで緊急事態宣言が出るとは思っていなかったので、いろいろ考えたんです。実は、今日も僕はオンラインでやりましょうと言ったんですが、劇場も含めて、やはり神戸の方々にはスクリーンで観てほしいということで今日を迎えて、これだけの方に来ていただけたということを考えると、この時期にこの映画は絶対に多くの人に届けなければならないんだと思ったんです。プレゼントは終わったから、日本中の人にこの作品を届けるんだと安プロデューサーから言われているような気持ちになっています。もうひとつは、佑くんも言っていましたが、映画なので、ひとつのエンタテインメントとして、肩肘はらずに楽しんでほしいと思います。家族愛や夫婦愛、素晴らしい人間愛に満ち溢れた映画なので、そういうことを思いつつ映画の世界に没頭していただければと思います」と語り、安達氏も「最初に安先生のご本を読ませていただいた時から、安先生の大きな思いがそこにあるという感覚があったので、先生の思いに寄り添って作品を作りました。元々安先生のご本から始まった作品ですので、映画をご覧になったら、ぜひ安先生のご本を読んでみてください。こんな時代でも、人の思いみたいなものだけは繋がっていたいと思いますし、今できることを精一杯やるしかない、と思っております。思いのバトンをリレーするように、この作品を観ていただいた方に安先生の思いが伝わってくれれば嬉しいです」と語り、イベントは終了しました。