ドランがしまいこんでいた戯曲を取り出した“あるきっかけ”、それはマリオン・コティヤールとの出会いだった。『Mommy/マミー』を出品した、カンヌ国際映画祭でのことだった。「僕はそういうことはとても不器用なんだけれど、彼女と一緒に仕事がしたい、彼女の作品がとても好きだと伝えた」とドランは振り返る。コティヤールも、「素晴らしい夜だったわ。彼との出会いにとても感激したわ」と、初対面の瞬間を懐かしく思い出す。
カンヌから戻ったドランは、ギャスパー・ウリエルとレア・セドゥに偶然出会い、彼らと映画を撮りたいと考える。さらにナタリー・バイと、もう一度一緒に仕事をしたいと思っていた。その時、ドランはラガルスの戯曲を思い出し、「もしかするとあの戯曲は、マリオンと組み、ナタリーとも再タッグを組むための“媒体と手段”なのかもしれない」と閃いたのだ。