スラムに生まれ明日の見えない日々を生きる子供たち。
一人のヴァイオリニストが彼らに教えたのは音楽で未来を切り拓くこと!
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かつては“神童”と呼ばれたヴァイオリニストのラエルチ(ラザロ・ハーモス)だが、プレッシャーに負ける大人になってしまった。サンパウロ交響楽団の演奏者の最終審査でも、手が震えて演奏すらできなかった。このままでは両親に仕送りも出来ないし、たまった家賃さえ払えない。やむなくラエルチは、NGOが支援するスラム街の子供たちのヴァイオリン教師に応募する。
殺伐とした街並みを抜けて学校に着くと、教室は空きスペースを金網で囲っただけで屋根もない。校長(サンドラ・コルベローニ)に促された生徒たちは楽器をギシギシとひっかき始めるが、演奏以前に座り方から教えなければならないレベルだった。 -
携帯電話が鳴れば出る、気に入らないとすぐにケンカ、帽子も被ったまま──まるで動物園だ。一人だけ、サムエル(カイケ・ジェズース)という意欲的で才能のある生徒がいたが、一番の問題児である少年院帰りのVR(エウジオ・ヴィエイラ)が授業中にスナック菓子を買いに行くのを見て、遂にキレてしまうラエルチ。だが、校長に給料を前払いするとなだめられ渋々我慢するのだった。
帰り道、ラエルチは二人組のギャングに止められ、菓子屋の店主に「警察を呼ぶ」と怒鳴ったことを責められる。「仕切ってるのは俺らのボス、クレイトンだ」とすごまれ、ヴァイオリンを弾いてみせろと銃を突き付けられたラエルチは見事な演奏を披露し、二人を黙らせる。
翌日、あっという間に先生が脅されたという噂が広まる。「怖かったでしょ」と訊ねられたラエルチは、「美しい音楽でケモノを手なずけた」と胸を張る。ギャングの恐ろしさをよく知る子供たちは、彼らを黙らせた音楽の力に素直に驚くのだった。 -
次から次へと新たな問題が勃発、子供たちが誰も楽譜を読めないという事実に怒るラエルチだが、途方に暮れる彼らの顔を見て胸が痛み、五線譜とト音記号から教え始める。基礎から叩き込まれた子供たちはめきめきと上達し、ラエルチのこれまで来た先生とは違う型破りな授業により楽しそうに旋律を奏でるようになる。意外にもVRには、サムエルに負けないほどの才能が隠れていた。彼らの姿を見て純粋に演奏を愛していた頃の自分を思い出したラエルチは、音楽への自信と情熱を取り戻していく。
そんな矢先、校長から次の演奏会で最高の演奏ができなければ、学校の存続は難しいと宣告される。ラエルチは子供たちに土曜日も特訓すると告げるが、彼らは様々な事情を抱えていた。サムエルは厳格な父の仕事を手伝わなければならないし、VRはギャングに借りた金を返すためにアヤシげな仕事に手を染めていた。皆と演奏すると、「“自分にも価値がある”と思える」と目を輝かせる子供たちのために、ラエルチは彼らが音楽に集中できるよう奔走するが、思わぬ事件が待ち受けていた──。