少女の“恐ろしい力”は封印されたはずだった
彼女が初めての恋におちるまでは──
ノルウェーの雪深い森に、まだ幼い娘のテルマを連れて狩りにやって来たトロン(ヘンリク・ラファエルソン)。やがて目の前に一頭の鹿が現れる。だが、彼のライフルは、獲物ではなく娘に向けられる──。
それから数年後、美しく成長したテルマ(エイリ・ハーボー)は、オスロの大学に通うため一人暮らしを始める。人里離れた小さな田舎町で、信仰心が深く厳格な両親のもと育ったテルマにとっては、すべてが新鮮だった。
両親から毎日のようにかかってくる電話が面倒なこともあったが、車いす生活の母ウンニ(エレン・ドリト・ピーターセン)を気にかけていた。そんなある日、異変が起きる。真っ黒な鳥の群れが狂ったような勢いで飛び立つと、激しい発作に襲われたのだ。救急車で病院に運ばれたものの原因は分からず心に大きな不安を抱えるが、その時助けてくれた同級生のアンニャ(カヤ・ウィルキンス)と親しくなっていく。
テルマは自由奔放で大人びたアンニャに憧れ、彼女のアパートを訪れると、背伸びをして初めてのお酒を飲み、煙草を吸う。一方のアンニャも、純真無垢だがどこか他人とは違う魅力を秘めたテルマに強く惹かれていく。ある時、想いの募った二人は口づけを交わすのだが、厳しい戒律のもとで育てられたテルマは激しい罪悪感に苦悩する。
それからも発作と共に、不気味な自然現象が周りで起きるようになり原因を探るため検査入院したテルマだったが、彼女の故郷の病院からカルテを取り寄せた医師から、幼い頃に精神衰弱で発作を起こしたことについて質問される。だが、テルマはそんな重要なことを、何ひとつ覚えていなかった。“心因性”という診断を下した医師は、精神を病んでいたテルマの祖母からの遺伝の可能性も疑っていた。さらに、テルマが両親から「死んだ」と聞かされていた祖母が、老人ホームで生きていることが判明する。
テルマが消えた記憶と家族の秘密に混乱していた頃、アンニャが突然、姿を消してしまう。自分の発作との関係を疑ったテルマは、自らの生い立ちを探るべく帰郷し、両親が隠し続けてきた衝撃の事実に直面することとなるのだが…。なぜ、父親は幼いテルマを殺そうとしたのか?テルマの発作とアンニャ失踪の関係は?果たして、テルマが秘めた“恐ろしい力”とは──。