映画『友罪』

生田斗真 瑛太 夏帆/山本美月 富田靖子 佐藤浩市 監督・脚本:瀬々敬久 5月全国公開

17年前─許されない罪を犯した男と、癒えることのない傷を抱えた男。
今、ふたりの過去と現在が交錯し、あの日から止まっていた時計が動き出す─
何人もの人生を決定的に変えた“事件”は、ふたりの男の出会いから始まった─。
ある町工場で働き始めた、元週刊誌ジャーナリストの益田と、他人との交流を頑なに避ける鈴木。共通点は何もなかったふたりだが、同じ寮で暮らすうちに、少しずつ友情を育ててゆく。そんななか彼らが住む町の近くで児童殺人事件が起こり、SNSで17年前に日本中を震撼させた凶悪事件との類似性が指摘される。当時14歳だった犯人の少年Aはすでに出所していて、今度も彼の犯行ではないかというのだ。ネットに拡散していた少年Aの写真を見た益田は愕然とする。そこにはまだ幼さの残る鈴木が写っていた。
驚きと疑問に突き動かされ、調査を始める益田。それは、17年前に自ら犯した“ある罪”と向き合うことでもあった。一度は人生を捨てたふたりの過去と現在が交錯し、止まっていた時計が激しく動き始める─。
それはまた、ふたりに関わる人々の人生も大きく動かすことになる─。
生田斗真×瑛太
史上最難関の役に挑むふたりと、彼らに関わる人々の葛藤をリアルに体現する日本最高峰の俳優たちの魂を焦がす競演
益田には、アクションからコメディ、ラブストーリーまで、多種多様な役柄を完璧に演じ分け、若手俳優の中でも傑出した存在の生田斗真。心を許した友の真の姿を探りながら、封印していた己の罪とも闘う益田に渾身の演技で身を投じた。鈴木には、どんな役柄にも鮮やかに染まり、他に並ぶ者のない地位を手に入れた瑛太。日本映画史上最も困難な役と断言できる、元少年犯の役に挑んだ。
ふたりと関わる人々も、他人には言えない秘密や罪を抱え、“事件”の重要なピースとなっていく。鈴木と偶然知り合う美代子は、元AV女優。彼女に出演を強いた当時の恋人から逃げているのだが、そのことを知っても態度を変えない鈴木に好意を抱く。演じるのは、情感あふれる演技で観る者を魅了する夏帆。益田の元恋人で雑誌記者の清美はスランプに陥り、スクープを焦るあまり卑劣な手段を使ってしまう。演技派としての成長著しい山本美月が演じる。
医療少年院で鈴木を担当した白石は、鈴木に特別な感情を抱き、自らの家族を壊してしまう。扮するのは、味わい深い演技が心に沁みる富田靖子。益田が命にかかわる重傷を負った時に、病院まで運んだタクシードライバーの山内は、息子の罪を償うために家族を解散する。今や日本映画界の至宝となった佐藤浩市が、罪とは何かを問う物語の要となる役どころを担う。
ミステリー界の旗手、薬丸岳のベストセラー小説を映画化
原作は、江戸川乱歩賞を受賞しデビュー、その後も吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞などに輝く薬丸岳のベストセラー小説「友罪」(集英社文庫刊)。犯罪の被害者と加害者に果敢に斬り込む衝撃作から、事件が二転三転するエンターテイメントまで、様々なミステリーを世に出し、高い評価と熱い支持を得ている作家が、「発表する時、喜びよりも先に恐れを抱いた」と告白する問題作。
監督は、緊迫感溢れるサスペンスと、人間の本質を問う重厚なテーマを融合させた『64‐ロクヨン‐』で、大ヒットを記録した瀬々敬久。
なぜ殺したのか? 益田が犯した罪とは? 鈴木に関わるふたりの女性の想いの行方は? 物語はふたりに関わる人々をも巻き込み、予想もしない衝撃の結末へとなだれこんでいく。人間存在の謎に満ちた深みへと導く、慟哭のヒューマンサスペンス。

ジャーナリストの夢に破れた益田(生田斗真)は、部屋を借りる金も使い果たし、寮のある町工場で見習いとして働き始める。同じ日に鈴木(瑛太)という男も入ったが、彼は自分のことは一切語らず、他人との交流を拒んでいた。鈴木のことを不審に思った寮の先輩・清水(奥野瑛太)と内海(飯田芳)は益田を強制的に連れ、鈴木の部屋をガサ入れする。そこで益田は女性の裸婦像が書かれたスケッチブックを見つける。
ある夜、酔っぱらって寮の玄関で倒れていた清水を一緒に介抱する益田と鈴木。益田は、鈴木が自殺した中学時代の同級生に似ていると話しかける。それを聞いた鈴木から、「俺が自殺したら悲しいと思える?」と唐突に尋ねられた益田は、戸惑いながらも「悲しいに決まってるだろ」と答えるのが精一杯だった。
工場からの帰り道、鈴木は男に追いかけられている女をかばう形になり、男から一方的に殴られる。彼女の名は美代子(夏帆)。元恋人の達也(忍成修吾)に唆されAVに出演した過去を持ち、達也と別れて以降も執拗につきまとわれていた。鈴木は美代子のマンションで、けがの手当てを受ける。
数日後、慣れない肉体労働に疲れ果てた益田は、めまいを起こして機械で指を切断する重傷を負う。しかし、鈴木の冷静な対処と、病院まで運んでくれたタクシードライバー・山内(佐藤浩市)の応急処置のアドバイスのおかげで、何とか益田の指はつながるのだった。
夜勤明け、妻の智子(西田尚美)の実家へ駆けつける山内。義父が亡くなったのだが、妻と会うのは10年ぶりだった。息子の正人(石田法嗣)が交通事故を起こして人の命を奪った罪を償うために、家族を"解散"したのだ。それなのに、正人が結婚しようとしていると聞いた山内は、怒りと当惑で言葉を失う。
入院中の益田のもとに、元恋人で雑誌記者の清美(山本美月)が見舞いに訪れる。清美は埼玉で起きた児童殺人事件の記事で行き詰っていると打ち明け、17年前の連続殺傷事件の犯人・青柳健太郎の再犯だという噂について意見を求めるが、益田はジャーナリスト時代に自身の記事に因って招いた暗い過去が思い起こされ、拒絶する。
数週間後、カラオケパブで清水や内海、そして鈴木が益田の退院祝いをしてくれる。鈴木の傍らには、あれ以来、時々会うようになった美代子もいる。皆の勧めから鈴木もマイクを取り、ぎこちなくもアニメソングを歌う。その楽しげな表情が嬉しく、益田はスマホのカメラを鈴木に向けるのだった。帰り道、益田があらためて鈴木に指の件でお礼を言うと、鈴木は「友達だから」とうれしそうに答えるのだった。
寮に戻りスマホを見ると、清美から再度「17年前の事件について意見を聞かせて」というラインが届いていた。ため息をつきながらもパソコンを開き、事件について検索した益田は、当時14歳だった犯人の青柳健太郎の顔写真を見て、息をのむ。そこには鈴木によく似た少年の姿が写っていた。まさかと更に検索し、医療少年院で青柳の担当だった白石(富田靖子)の写真を見て固まる益田。それは、鈴木のスケッチブックに描かれていた女性だった。
時を同じくして、それぞれが抱える問題が露わになる。山内は恋人が妊娠したという息子を訪ね、「お前の為に家族を解散したっていうのに、お前が家族をつくってどうするんだ」と怒りをぶつける。白石は鈴木の再犯の噂に心を痛めていたが、鈴木にばかり心を砕いてきた代償で疎遠になっていた高校生の娘が妊娠したという知らせを聞き、戸惑う。美代子は、かつて出演していたAVを達也によって寮のポストにDVDを投函されてしまい、寮の皆がそれを知ってしまう。
スマホの動画を再生し、カラオケで歌う鈴木の無邪気な笑顔を見つめる益田。翌日、益田は17年前の青柳健太郎の犯行現場へと旅立つ。本当に鈴木が青柳健太郎なのか?なぜ殺したのか?そんな益田を待ち受けていたのは、17年前に犯した自分の罪だった─。

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【映画化にあたり】
日々報道される少年犯罪。かつての少年、今やその親として感じる心の痛みに、一度大いなる覚悟を以て向き合う深い陰影の映画を作れないか。プロデューサーがそんな思いを抱いていた頃、出会ったのが本原作。2015年の春、映像化権を取得したプロデューサーと瀬々敬久監督によってプロット~脚本開発は進んでいった。原作は「神戸連続児童殺傷事件」から着想を得ているが、本作は実際にあった事件の余波や現在地を、憶測を元に再現するための映画化ではない。脚本開発で最も重視されたのは「業に囚われても生きていく人間の姿、そのもの」である。そのために今回は映画の主たる視点を、あえて加害者側のものに寄せると決めた。すべての人が受け入れられるものではないかもしれないが、人間というものに対するある種の“願い”を、表現者として提示する、その決意に行き着いた。
【ロケ地と設定】
作品の拠点となる町工場には、埼玉県入間郡に実在する工場が選ばれ、2017年7月22日にクランクイン。主演2人の撮影初日には、本編冒頭の益田(生田斗真)と鈴木(瑛太)が社長に連れられて工場を訪れるシーンが予定されていたが、当日はあいにくの雨。瀬々監督の「セミが鳴くような照り付ける太陽の下で撮りたい」というこだわりもあり、その後何度も延期。このように撮影中は、曇天続きだったが、結果的には作品全体のトーンに合った天候だったともいえる。また、より群像劇感を引き出すために、メインの登場人物が皆工場で働いているという原作の設定を変更。原作者の快諾を得たうえで、工場に勤務しているのは益田と鈴木とし、山内(佐藤浩市)は息子が起こした事故の贖罪に奔走するタクシードライバー、美代子(夏帆)はAV出演の過去を隠して人目を避けながら生きる女性として脚色した。さらに、瀬々監督による入念なリサーチから、少年院の法務教官兼技官である白石(富田靖子)のパートが強化。少年院時代の鈴木を描かない代わりに、現在の弥生が更生少年たちと向き合う姿を描くことで、間接的に過去の鈴木の姿が浮かび上がってくる構成となった。また、加害者家族と被害者遺族との会話などにも細心の注意を払ったことで、脚本は改稿を重ね、クランクイン直前まで手直しが入った。
【キャスティングについて】
それぞれが難役となる本作。周囲に翻弄されながらも、誠実に人と向き合い答えを探し求めていく主人公・益田のキャスティングには生田斗真。益田と同様に誠実さと繊細さを兼ね備え、コメディからシリアスまで意欲的に出演し続ける彼は、薬丸氏の小説が好きで本作のオファーを受ける前に既に原作に魅了されていたという。一方、益田と相対する謎めいた雰囲気を持つもう一人の主人公・鈴木には、生田との共演経験も多く、瀬々監督からの信頼も厚い瑛太が起用された。元少年Aという答えの出せない難しい役だったが、その一挙手一投足につい目が向いてしまう見応えのあるキャラクターへと作り上げてくれた。また、加害者の父・山内には、『64-ロクヨン-』での熱演が印象的だった邦画界の至宝、佐藤浩市。瀬々監督とは年が同じということもあり、枯れた雰囲気を出した白髪のアイデアなど、衣装合わせの段階から、役柄について深く話し合う光景が見られた。AV出演経験という過去を背負い孤独に生きる美代子には夏帆。体当たりで臨まなければならない役だったが瀬々組でこの役が演れるならと出演を快諾。その思い切りの良さは芝居でも存分に体現された。出版社勤務で益田の再起を願う元恋人・清美には山本美月。人々の暗い影が中心に描かれる本作において、唯一自身の目的が明確で真っ直ぐな女性を演じる。鈴木の過去を知る法務教官兼技官の白石には富田靖子。鈴木や更生していく少年たちに寄り添い、厳しくも温かく包み込む懐の深さは見事。その他、世代を問わず日本映画の光と影を支え続ける魂系実力派キャストが、瀬々監督のもとに集結したことで、本作が到達すべき世界観が固まっていった。
【撮影、音楽について】
瀬々監督が描くイメージを気心知れた各部のスタッフが瞬時に汲む。そんなチームワークの良さもあり、タイトなスケジュールながらも着実に撮影は敢行。しかも、ほぼ毎日のように、第一線で活躍する演技派俳優がクランクイン。たとえ1シーンの出演だけでも、その登場人物のこれまで生きてきた歩みが見えるような彼らの芝居は、瞬間最大風速的に現場に刺激をもたらしていった。そんな中、監督がもっとも撮影に時間を要したのは、夜の公園で益田と鈴木が対峙するシーンだった。夜間暗い公園での撮影だが、2人の大事な表情の変化やセリフの応酬が長く続くシーンということもあり、日が暮れる前に入念な段取りをした後、照明部の綿密なライティングを経て撮影開始。酔った2人がアドリブではしゃぐ冒頭から一転、感情がこみ上げてくる演技を魅せる生田と瑛太。カットがかかる度に、監督の繊細な演出が行われ、撮影は日付が変わった深夜まで及んだ。印象的な光景は、益田と鈴木のラストシーンの撮影でも見られた。益田のラストは今回幾度となく悩まされた天候不順で撮影が中断。しかし生田の集中力は切れることなく、約1ヶ月積み上げてきた益田の集大成として、本作で観客に一番届けたい“願い”をしっかり残してくれた。一方それにシンクロする鈴木のラストは、焼けるような炎天下での撮影となった。1カット10分の長回しで、鈴木というキャラクターの結論を絶妙なニュアンスで表現。ようやく監督のカットがかかった瞬間、瑛太の顔は汗と涙でいっぱいだった。こうして撮れた対照的な2人のラストは、この先色褪せることなく、時代を越えて残るであろう素晴らしいシーンとなった。音楽は瀬々監督の指名から、半野喜弘に決定。近年『雨にゆれる女』など、映画監督としても活躍している彼は、ラッシュ鑑賞後に「自分が音楽を付ける必要はないのでは?」と言ったほど、キャストの芝居に感銘を受けてくれた。そのため、多くの音で彩らず、決して感情にも寄り過ぎないで俳優の芝居を引き立ててくれる劇伴が仕上がった。また、「物語の最後に流れる益田のモノローグがこの映画で伝えたいことの全てであり、それを咀嚼しながらエンドロールを見届けてほしい」という監督・プロデューサーの強い思いから半野の劇伴がそのままエンドロールに静かに寄り添い奏でられることに決定した。
【映画化にあたり】
日々報道される少年犯罪。かつての少年、今やその親として感じる心の痛みに、一度大いなる覚悟を以て向き合う深い陰影の映画を作れないか。プロデューサーがそんな思いを抱いていた頃、出会ったのが本原作。2015年の春、映像化権を取得したプロデューサーと瀬々敬久監督によってプロット~脚本開発は進んでいった。原作は「神戸連続児童殺傷事件」から着想を得ているが、本作は実際にあった事件の余波や現在地を、憶測を元に再現するための映画化ではない。脚本開発で最も重視されたのは「業に囚われても生きていく人間の姿、そのもの」である。そのために今回は映画の主たる視点を、あえて加害者側のものに寄せると決めた。すべての人が受け入れられるものではないかもしれないが、人間というものに対するある種の“願い”を、表現者として提示する、その決意に行き着いた。
【ロケ地と設定】
作品の拠点となる町工場には、埼玉県入間郡に実在する工場が選ばれ、2017年7月22日にクランクイン。主演2人の撮影初日には、本編冒頭の益田(生田斗真)と鈴木(瑛太)が社長に連れられて工場を訪れるシーンが予定されていたが、当日はあいにくの雨。瀬々監督の「セミが鳴くような照り付ける太陽の下で撮りたい」というこだわりもあり、その後何度も延期。このように撮影中は、曇天続きだったが、結果的には作品全体のトーンに合った天候だったともいえる。また、より群像劇感を引き出すために、メインの登場人物が皆工場で働いているという原作の設定を変更。原作者の快諾を得たうえで、工場に勤務しているのは益田と鈴木とし、山内(佐藤浩市)は息子が起こした事故の贖罪に奔走するタクシードライバー、美代子(夏帆)はAV出演の過去を隠して人目を避けながら生きる女性として脚色した。さらに、瀬々監督による入念なリサーチから、少年院の法務教官兼技官である白石(富田靖子)のパートが強化。少年院時代の鈴木を描かない代わりに、現在の弥生が更生少年たちと向き合う姿を描くことで、間接的に過去の鈴木の姿が浮かび上がってくる構成となった。また、加害者家族と被害者遺族との会話などにも細心の注意を払ったことで、脚本は改稿を重ね、クランクイン直前まで手直しが入った。
【キャスティングについて】
それぞれが難役となる本作。周囲に翻弄されながらも、誠実に人と向き合い答えを探し求めていく主人公・益田のキャスティングには生田斗真。益田と同様に誠実さと繊細さを兼ね備え、コメディからシリアスまで意欲的に出演し続ける彼は、薬丸氏の小説が好きで本作のオファーを受ける前に既に原作に魅了されていたという。一方、益田と相対する謎めいた雰囲気を持つもう一人の主人公・鈴木には、生田との共演経験も多く、瀬々監督からの信頼も厚い瑛太が起用された。元少年Aという答えの出せない難しい役だったが、その一挙手一投足につい目が向いてしまう見応えのあるキャラクターへと作り上げてくれた。また、加害者の父・山内には、『64-ロクヨン-』での熱演が印象的だった邦画界の至宝、佐藤浩市。瀬々監督とは年が同じということもあり、枯れた雰囲気を出した白髪のアイデアなど、衣装合わせの段階から、役柄について深く話し合う光景が見られた。AV出演経験という過去を背負い孤独に生きる美代子には夏帆。体当たりで臨まなければならない役だったが瀬々組でこの役が演れるならと出演を快諾。その思い切りの良さは芝居でも存分に体現された。出版社勤務で益田の再起を願う元恋人・清美には山本美月。人々の暗い影が中心に描かれる本作において、唯一自身の目的が明確で真っ直ぐな女性を演じる。鈴木の過去を知る法務教官兼技官の白石には富田靖子。鈴木や更生していく少年たちに寄り添い、厳しくも温かく包み込む懐の深さは見事。その他、世代を問わず日本映画の光と影を支え続ける魂系実力派キャストが、瀬々監督のもとに集結したことで、本作が到達すべき世界観が固まっていった。
【撮影、音楽について】
瀬々監督が描くイメージを気心知れた各部のスタッフが瞬時に汲む。そんなチームワークの良さもあり、タイトなスケジュールながらも着実に撮影は敢行。しかも、ほぼ毎日のように、第一線で活躍する演技派俳優がクランクイン。たとえ1シーンの出演だけでも、その登場人物のこれまで生きてきた歩みが見えるような彼らの芝居は、瞬間最大風速的に現場に刺激をもたらしていった。そんな中、監督がもっとも撮影に時間を要したのは、夜の公園で益田と鈴木が対峙するシーンだった。夜間暗い公園での撮影だが、2人の大事な表情の変化やセリフの応酬が長く続くシーンということもあり、日が暮れる前に入念な段取りをした後、照明部の綿密なライティングを経て撮影開始。酔った2人がアドリブではしゃぐ冒頭から一転、感情がこみ上げてくる演技を魅せる生田と瑛太。カットがかかる度に、監督の繊細な演出が行われ、撮影は日付が変わった深夜まで及んだ。印象的な光景は、益田と鈴木のラストシーンの撮影でも見られた。益田のラストは今回幾度となく悩まされた天候不順で撮影が中断。しかし生田の集中力は切れることなく、約1ヶ月積み上げてきた益田の集大成として、本作で観客に一番届けたい“願い”をしっかり残してくれた。一方それにシンクロする鈴木のラストは、焼けるような炎天下での撮影となった。1カット10分の長回しで、鈴木というキャラクターの結論を絶妙なニュアンスで表現。ようやく監督のカットがかかった瞬間、瑛太の顔は汗と涙でいっぱいだった。こうして撮れた対照的な2人のラストは、この先色褪せることなく、時代を越えて残るであろう素晴らしいシーンとなった。音楽は瀬々監督の指名から、半野喜弘に決定。近年『雨にゆれる女』など、映画監督としても活躍している彼は、ラッシュ鑑賞後に「自分が音楽を付ける必要はないのでは?」と言ったほど、キャストの芝居に感銘を受けてくれた。そのため、多くの音で彩らず、決して感情にも寄り過ぎないで俳優の芝居を引き立ててくれる劇伴が仕上がった。また、「物語の最後に流れる益田のモノローグがこの映画で伝えたいことの全てであり、それを咀嚼しながらエンドロールを見届けてほしい」という監督・プロデューサーの強い思いから半野の劇伴がそのままエンドロールに静かに寄り添い奏でられることに決定した。