映画化に向けての動きは早かった。伊坂原作の映画を手がけるのが今作で5作目となる制作プロダクションのダブが、「ライトヘビー」が世に出たと同時に伊坂に打診。最終章となる「ナハトムジーク」が完成し、書籍化が決まった2013年、待ちに待ったプロジェクトが始動する。とは言え、これまでの伊坂原作にない恋愛小説集。「監督をどうするか」が最初の課題になる。すると当時『こっぴどい猫』を見て今泉力哉監督の群像劇に興味を持っていた伊坂より、この小説を映像化するなら彼にお願いしてみたいと推薦が。インディーズ系の新鋭に白羽の矢が立つ。ダブがたまたま同時期に今泉監督作品を手がけていたのも、運命のめぐり会わせだろう。ほぼその場の連絡で「やりましょう」と即決。その後、今泉は『サッドティー』『パンとバスと2度目のハツコイ』などの公開を通じ、恋愛群像劇の名手としてめきめき名を上げていく。「原作者が作品に関わることでできることの1つは、監督を信頼することだと思う」。試写を見た後、伊坂は改めて今泉にそう語ったという。