宮城県の小さな港町、五十嵐家に男の子が生まれた。祖父母、両親は、“大”と名付けて誕生を喜ぶ。ほかの家庭と少しだけ違っていたのは、両親の耳がきこえないこと。幼い大にとっては、大好きな母の“通訳”をすることも“ふつう”の楽しい日常だった。しかし次第に、周りから特別視されることに戸惑い、苛立ち、母の明るささえ疎ましくなる。心を持て余したまま20歳になり、逃げるように東京へ旅立つ大だったが・・・。
親子の物語が、そしてひとりのコーダ*の心の軌跡が、点描のように紡がれていく――。監督は、本作が9年ぶりの長編作品となる、『そこのみにて光輝く』 『きみはいい子』の呉美保。作家・五十嵐大氏の自伝的エッセイを原作に、脚本は『正欲』の港岳彦。吉沢亮が、“きこえる世界”と“きこえない世界”を行き来しながら生きる主人公を体現、自身の居場所を見出していく若者の心を繊細に演じた。母・明子役には、ろう者俳優として活躍する忍足亜希子。
やがて母への想いが観る者の胸にも静かに温かく満ちていく、心に響く映画が誕生した。
*コーダ:きこえない、またはきこえにくい親を持つ聴者の子供
宮城県の小さな港町、五十嵐家に男の子が生まれた。祖父母、両親は、“大”と名付けて誕生を喜ぶ。ほかの家庭と少しだけ違っていたのは、両親の耳がきこえないこと。幼い大にとっては、大好きな母の“通訳”をすることも“ふつう”の楽しい日常だった。しかし次第に、周りから特別視されることに戸惑い、苛立ち、母の明るささえ疎ましくなる。心を持て余したまま20歳になり、逃げるように東京へ旅立つ大だったが・・・。
1994年2月1日、東京都出身。2009年芸能界入り。映画『リバーズ・エッジ』(18)で第42回日本アカデミー賞新人俳優賞、一人二役を演じた映画『キングダム』(19)で第62回ブルーリボン賞助演男優賞、第43回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞などを受賞。大河ドラマ「青天を衝け」(21・NHK)で主人公・渋沢栄一を演じる。翌年に月9ドラマ初出演・初主演となる「PICU 小児集中治療室」(22・CX)に出演。2023年には6作品(『ファミリア』、『東京リベンジャーズ2』2部作、『キングダム 運命の炎』、『かぞく』、『クレイジークルーズ』)が公開されるなど、目覚ましい活躍を続けている。本作で、初めて呉美保監督とタッグを組む。2024年7月12日に映画『キングダム 大将軍の帰還』、2025年に映画『国宝』が公開予定。
1971年3月12日、大分県出身。ラテンロックバンドのヴォーカル&司会者としてデビュー。俳優、司会者、タレントとして幅広く活躍。主な出演作に、映画『交渉人 真下正義』(05)、『あきらとアキラ』(22)、『沈黙の艦隊』(23)等。ドラマ「踊る大捜査線」(98~)シリーズ、「テセウスの船」(20・TBS)、大河ドラマ「麒麟がくる」(20・NHK)、「パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~」(22・NTV)、「新聞記者」(22・Netflix)、「モダンラブ・東京~さまざまな愛の形~」(22・AmazonPrimeVideo)、「THE MYSTERY DAY~有名人連続失踪事件の謎を追え~」(23・NTV) 、「沈黙の艦隊シーズン1~東京湾大海戦~」(24・AmazonPrimeVideo)大河ドラマ「光る君へ」(24・NHK)等。呉美保監督作は『酒井家のしあわせ』(06)以来2本目の出演となる。
1955年2月3日、滋賀県出身。1979年6代目 (1980年度) クラリオンガールに選出され、芸能界デビュー。映画 『海潮音』に出演し、女優としてのスタートをきる。五木寛之のベストセラー 『四季・奈津子』(80)の映画化で四姉妹の主役・奈津子役に抜擢され、映画初主演、圧倒的な存在感を示した。主な出演作は、『64』、『二重生活』、『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』(16)、『教誨師』、『祈りの幕が降りるとき』(18)、『明日の食卓』 、『彼女』(21)、主演作『なん・なんだ』、『夕方のおともだち』(22)、ドラマでは、大河ドラマ「功名が辻」(06)、「砂の塔〜知りすぎた隣人」(TBS)、「隠れ菊」(NHK-BS)(16)、 連続テレビ小説「スカーレット」(19-20・NHK)等。
福岡県出身。1981年森田芳光監督の映画『の・ようなもの』で俳優の道へ。2011年、園子温監督の『冷たい熱帯魚』で、二面性のある連続殺人鬼役を演じ、多数の映画賞を受賞。その独特の存在感と持ち前のキャラクターは、どの役柄にもリアリティを持たせ、映像作品にも欠かせない俳優として活躍している。近年の主な出演作は、舞台「悲しみよ、消えないでくれ」(15・18)、「ボイラーマン」(24)、映画『ある男』(22)、『君は放課後インソムニア』(23)、『仕掛人・藤枝梅安㊀㊁』(23)、『山女』、ドラマ「ゆとりですがなにか」(16・NTV)、「緊急取調室」(14~・EX)、「アトムの童」(22・TBS)、連続テレビ小説「おかえりモネ」(21)(NHK)、大河ドラマ「どうする家康」(23)(NHK)、「THE DAYS」(23・Netflix)等。
1977年3月14日、三重県出身。スクリプターとして映画製作者の経歴をスタートさせ、初の長編脚本『酒井家のしあわせ』がサンダンス・NHK国際映像作家賞を受賞し、2006年同作で映画監督デビューを果たす。『オカンの嫁入り』(10)で新藤兼人賞金賞を受賞。『そこのみにて光輝く』(14)で、モントリオール世界映画祭ワールドコンペティション部門最優秀監督賞を受賞し、併せて米国アカデミー賞国際長編映画賞日本代表に選出される。続く『きみはいい子』(15)はモスクワ国際映画祭にて最優秀アジア映画賞を受賞。『私たちの声』(23)にて8年ぶりに脚本も担当した短編『私の一週間』を監督。本作は9年ぶりの長編作品となる。
1983年、宮城県出身。作家・エッセイスト。2020年10月、『しくじり家族』(CCCメディアハウス)でエッセイストデュー。2021年に本作の原作『ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと』(幻冬舎)、2022年初の小説作品『エフィラは泳ぎ出せない』(東京創元社)を手掛ける。他の著書に『隣の聞き取れないひと APD/LiDをめぐる聞き取りの記録』(翔泳社)、『聴こえない母に訊きにいく』(柏書房)等。
『ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと』
「誰もが生きやすい世界は、いろんな境界線が混ざり合った世界だと思う」。耳の聴こえない親から生まれた子供=「コーダ」の著者が描く、母子の格闘の記録。感涙の自伝的エッセイ。
※『ぼくが生きてる、ふたつの世界』に改題し、幻冬舎文庫より発売中。
1974年3月5日、宮崎県出身。日本映画学校(現日本映画大学)ドキュメンタリー演出コース卒業。『僕がこの街で死んだことなんかあの人は知らない』(98)でシナリオ作家協会主催大伴昌司賞を受賞。近年の主な映画作品は『あゝ、荒野』前後篇(17/岸善幸監督)、『宮本から君へ』(19/真利子哲也監督)、『MOTHER マザー』(20/大森立嗣監督)、『とんび』(22/瀬々敬久監督)、『アナログ』(タカハタ秀太監督)、『正欲』(岸善幸監督)(23)、『ゴールド・ボーイ』(24/金子修介監督)、テレビドラマ「前科者 -新米保護司・阿川佳代-」(21/WOWOW)、「仮想儀礼」(23/NHKプレミアムドラマ)等。
五十嵐大さんの自伝である原作をひもといた日、ぼくにはきこえない親がいるわけでもないのに、「“まるで自分の話のようだ”」と思いながらひと息に読みました。人様の人生を勝手に自分ごとにすべきでないと思いつつ、深くそう感じ入ってしまったのは、強い共感力を引き出す心理描写と清潔な筆致によるものでしょう。ひたすら「“この物語が広く世に伝わりますように”」と念じながら映像への翻訳作業に取り組みました。仕上がった映画は、子どもっぽくて不器用な五十嵐さん(を演じる吉沢亮さん)を、呉美保監督がときには叱咤し、ときにはうんうんと頷きながら並走し、ときには赦し、そしてずっと愛していました。この映画ができてよかった。この映画の誕生に、深い意義と愛を感じています。