日本とハリウッド、 両者の視点を取り入れた脚本作り

脚本開発は『余命1ヶ月の花嫁』や『キセキ -あの日のソビト-』などのヒット作で知られる斉藤ひろしに依頼された。 その後、ローズ監督によって手が加えられたのだが、監督による大きな変更点は、原作には僅かにしか登場しない雪姫のキャラクターの創造だ。今、海外の映画マーケットにおいては、主要人物に女性を入れることは不可欠な要素だった。
さらに、物語のオープニングとエンディングをつなぐペリーとの交渉も、ローズ監督によって加えられた。それによって、海外と日本がどういう状況にあるなかで、どんな意味のある遠足だったのかが明確にされ、直接ではないが、安中での出来事も影響して、開国へ向かっていったという大きな物語となった。ローズ監督は、サムライがマラソンをしたというユニークなイベントの、歴史の中での立ち位置を見出し、俯瞰から見た時代の流れまでを描こうとしたのだ。また、原作のユーモラスな部分は残しつつ、よりシリアスかつ叙事的な脚本に変更された。
こうしてローズ監督が書き上げた脚本を、『座頭市 THE LAST』や『一命』の山岸きくみが、再び日本の時代劇として異論をはさむ余地はないかを推敲するというキャッチボールが幾度か繰り返されて、脚本は完成した。