トッド・フィールド監督は本作の発想について、「子供の頃に何が何でも自分の夢を叶えると誓うが、夢が叶った途端、悪夢に転じるというキャラクターについてずっと考えていた」と語る。「リディア・ターは芸術に人生を捧げた結果、自分の弱みや嗜好をさらけ出すような体制を築き上げてしまったことに気づく。彼女はまるで全く自覚がないかのように、周囲に自分のルールを強要する。しかし、作家のジャネット・マルカムが言うように、『自覚していたとしても、非道は許されない』のだ」
自分のルーツはジャズだと語るフィールド監督は、多くの人と同じようにレナード・バーンスタインをきっかけにクラシック音楽の世界を知ったという。本作でクラシック音楽を取り上げた理由の一つとして、フィールド監督は「バーンスタインは1970年代にハーバード大学で講義を行っていたが、お高く止まることなく、愛情をもって語っていた。その講義の中で彼が断言していたのが、クラシック音楽は騒音だということだ。もっと身近な音楽として、公立学校でも広く教えられるべきだとつくづく思うよ」と話す。