STORY
"C'mon ! AKAI !"
1985年2月、大和田正春戦。トレーナー、エディ・タウンゼントの声が響く……。
その試合から数時間後、赤井は大阪市富永病院で急性硬膜下血腫、脳挫傷と診断され、緊急の開頭手術を受けていた。大和田との試合、第7ラウンドで強烈なパンチをくらい、KO負け。意識不明に陥ったのだ。生死の境をさまよった赤井が見たものは……。
それから35年後。自宅で時間を持て余したアロハシャツ姿の赤井英和。トランプでタワーを作ろうとするが、うまくいかず、「うわー!」と少年のような絶叫を上げる。かと思えば、その4時間後、突然チャーハンを作り始めた。「うん! うまい!」と妻・佳子。キッチンのガスコンロ、床にコメがこぼれているのを見て、苦笑い。一見なんでもない家族の団らんだが、赤井が家にいたのはワケがある。
2020年春、新型コロナウイルスが全世界を襲った。日本でも緊急事態宣言が発動され、不要不急の外出ができなくなった。俳優・タレントの赤井の仕事はすべてキャンセルになったのだ。
「怖いよ、今は仕事もイベントも舞台も映画もドラマも自粛しているからな。仕事もしたいけど、なかなか厳しい状況やからな……」。とはいうものの、赤井は “今”を満喫している。赤井英和は、今という瞬間瞬間を生きる男なのだ。
そんな赤井に息子の英五郎は、ボクシングとの出会いを聞く。
「あの時、浪速高校を受験しました。その晩かな、先輩が、受かってもいないのに、『なあ、赤井。食堂の前に朝10時に来い』って言うんだ。なにかな、と思ったら、なんてことはない、ボクシングの雑用係で呼ばれたんだ……」
赤井は、鮮烈に覚えているボクシングとの出会いについて語り出す……。