2人の女優と役作り
ケイト・ウィンスレットとシアーシャ・ローナン。この誰もが引き付けられるキャスティングは、フランシス・リー監督の第一希望だった。メアリー・アニングという人物について、ケイトはこう語る。「彼女は貧しい家に生まれ、階級社会から疎外されて生きてきたけれど、意志が強く好奇心が旺盛で博識。すべて独学で学び、生涯学び続けた。彼女を心から尊敬する。役作りをするにあたっては、まずは化石収集を学んだの。何日間も石を打ち砕き、ライム・レジスの博物館でメアリーの自筆の文を見た。あと、私にとって難しかったのは静けさ。メアリーは冷静沈着だけど、私は声も大きいし活発で動き回るのが好きなタイプ。だからフランシス(・リー監督)は私を身体から変身させた。体の動かし方、放つエネルギーレベル、すべての視線、動作、各シーンのリズムなどすべて、的確に把握し、私を静めてくれたの。素晴らしい体験だった。」
リーは言う。「ケイトは本気で役柄にのめり込む。彼女はメアリーに関する本をすべて読破し、数週間ほどライム・レジスに滞在し、現地で数日過ごしてコツを完全に学んだ。彼女は化石採集を心から気に入っていたよ。」
シアーシャは、シャーロットという役をこう分析する。「この時代、女性は結婚して、家事をして、子供を産むべきだと考えられていた。だからこそシャーロットは死産を経て自分のことを“失敗作”だと感じている。」
監督はシアーシャに“役の背景”を作るように勧めた。自分で役の人生を作り上げることによって、役が自分と近いものになり、撮影初期から役を身近に感じることができるからだ。プロデューサーのクローニンは語る。「物語が進むにつれ、シャーロットは男性が支配する世界で自分の声を見つけるだけでなく、自分の嘆きを表現する方法を見つけていく。この役には、とても繊細にアプローチできる俳優が必要だった。シアーシャは演技において、もろさだけでなく、強さも伝える秀でた能力を持っている。」