123人1役の史上初のキャスティングと
清純派から個性派女優へと生まれ変わった
ハン・ヒョジュの魅力
キム・デミョン、 ト・ジハン、ぺ・ソンウ、パク・シネ、イ・ボムス、パク・ソジュン、キム・サンホ、チョン・ウヒ、上野樹里、イ・ジェジュン、キム・ミンジェ、イ・ヒョヌ、チョ・ダルファン、イ・ジヌク、ホン・ダミ、ソ・ガンジュン、キム・ヒウォン、イ・ドンウク、コ・アソン、キム・ジュヒョク、ユ・ヨンソク・・・。女性のハートをわしづかみにした新星から、韓国映画界を代表する演技派俳優まで、1本の映画で出会えるとは想像もしなかった俳優たちが、たった1つの役のために集結した。オーディションに参加した者を含めて123人のウジン役の俳優たちは、誰もがウジンを一人の人物として表現するため努力したと口を揃える。特に本作の主人公ウジンは老若男女問わず、さらには外国人にまで姿を変えるため、男の役にもかかわらずパク・シネ、チョン・ウヒ、ホン・ダミ、コ・アソンら演技派女優が集結、日本からは上野樹里が韓国映画に初出演するなど、観客は色々な場面で新しいウジンに出会うことになる。
そんなウジンの愛を一身に受けるヒロインを演じるのは、韓国映画界の次世代を担う女優として注目されるハン・ヒョジュ。『セシボン』(15)、『監視者たち』(13)、『ファイヤー・ブラスト 恋に落ちた消防士』、『王になった男』(12)など、出演作品の累計観客動員数は2,000万人を超え、その人気を証明している。多彩なキャラクターを通じて映画出演を重ねてきた彼女は、本作の主人公イスを演じたことで、最も存在感にあふれた20代の韓国人女優として地位を固めつつある。そして注目すべきなのは、ウジン役を務めた俳優たちとハン・ヒョジュの驚くべき化学反応である。彼女は穏やかなムードで現場をリードし、ウジン役の俳優たちとの呼吸を絶妙に合わせた。恋の始まりのときめきから、仲睦まじく微笑ましい姿まで、見る者の胸を弾ませることになるだろう。
広告界の著名ビジュアル・アーティストでもある
ペク監督初監督作品と制作陣
CM界で活躍、韓国では最高のビジュアル・アーティストとして知られるペク監督が、初めて長編映画の演出を務めたことは制作段階から大きな注目を集めていた。彼は90年代から自動車、電子、通信などのテレビCMを数多く演出、斬新な構成と目を奪うような感覚的映像で、広告界の抜きん出た演出家として現在も活躍している。特に、短尺のCMの中でも輝きを放つストーリーを語る才能を持ち、ストーリーテラーとしての評価も高い。さらにミュージックビデオからデザイン、監督独自の感性を込めたカリグラフィーまで多方面で活躍しており、映画への新たな挑戦に対し熱い関心が寄せられている。卓越したセンスが生み出す美しい映像に加え、ペク監督は脚本にも直接参加。常識ではあり得ない設定にも説得力を持たせている。
ペク監督の優れた演出に韓国最高の制作陣が加わることによって、本作はさらに完成度を高めた。原案「The Beauty Inside」に惚れ込んだペク監督は『オールド・ボーイ』(03)、『カップルズ』(11)などの製作で面識があったヨンフィルム代表のイム・スンヨンに自ら映画化を提案し、優れた視点で原案を見極めるイム・スンヨンと共に本作の製作にこぎつけた。そして第33回青龍映画賞撮影賞に輝くキム・テギョン撮影監督が合流。ディテールとキャラクターの感情を余すことなく捉える撮影で美しい映像を生み出した。『ハウスメイド』(10)、『海にかかる霧』(14)で青龍映画賞美術賞、『10人の泥棒たち』(12)釜日映画賞美術賞を受賞した美術監督イ・ハジュンの作り出す空間と繊細な色彩は観客のストーリーへの没入感を高め、映画のトーンを完成させている。『JSA』(00)、『オールド・ボーイ』(03)、『渇き』(10)、『群盗』(14)といった作品の音楽を手掛けた音楽監督のチョ・ヨンウクは、作品が持つ雰囲気を音楽で伝えることにかけては右に出る者がいない。韓国広告界の著名ビジュアル・アーティストとして知られるペク監督と韓国映画界を率いる最高の制作陣の出会いは、上質のファンタジーロマンスを美しい映像として世に送り出したのである。
カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・
フェスティバル三冠受賞のインテル&東芝合作
ソーシャル・フィルムがスクリーンで生まれ変わる!
本作は2012年のインテルと東芝の合作ソーシャル・フィルム「*The Beauty Inside」を原案にした作品である。全編40分余りの6つのエピソードで構成されたこのソーシャル・フィルムは、毎日違う姿になる男という設定だけでなく、制作方式も変わっている。「誰でも主人公の男を演じることができる映画」というコンセプトでfacebookを通じて1つのエピソードを公開したあと、1週間のうちにユーザーから送られてきた映像で、次回のエピソードが構成されていくのである。主人公アレックスの姿が毎日変わるという設定のおかげで、誰が送ってきた映像でも、そのまま活用してエピソードを構成することができた。観客も一緒にストーリーを作っていくだけでなく、主人公を演じられる前代未聞の制作方式は、SNSを通じて急速に広がり、熱い反響を得た。
さらに、美しい映像美でも話題となった「The Beauty Inside」は、世界2大広告祭であるカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル三冠とクリオ国際広告祭金賞を制覇するという快挙を果たした。名実共に広告界最高の作品としての座を固めたこのソーシャル・フィルムが、長編映画『ビューティー・インサイド』に生まれ変わったのである。老若男女国籍を問わず毎日違う姿に変わるという原作の設定は、映画の中のウジンの役柄でも引き継がれており、イスが毎日姿を変える男ウジンに出会い、すべての秘密を知っても恋に落ちるという内容も原案の流れを生かしている。さらに、場面の細かい設定と映画的な面白さを追求して新たに描かれたのは、ウジンとイスそれぞれの家族の物語。そして、原案では「毎日姿が変わる」秘密を告白して結ばれるふたりの姿で終わっているが、原案では描かれなかったふたりのその後の物語が描かれ、その展開に観る者も心を引き付けられるに違いない。
※「The Beauty Inside」:インテルと東芝の合作で、「Inside」シリーズの第2弾として2012年に製作されたソーシャルフィルム。監督:ドレイク・ドレマス、出演:メアリー・エリザベス・ウィンステッド、トファー・グレイス、マシュー・グレイ・ギュブラーほか。
第1弾は、「Inside」(2011/D.Jカルーソー監督)、第3弾「The Power Inside」(2013/ウィル・スペック、ジョシュ・ゴードン監督)。
ペク監督により感性を刺激する演出
本作のさらなる魅力は2つ。1つ目は、見る者の目と耳をひきつけるビジュアルと音楽である。見る者を虜にする映像と完璧にマッチする音楽を使い、感覚に訴える手法がペク監督のCMの特徴でもあり、今回の作品でもその特徴が十分に発揮されている。観客の耳に印象を残す音楽は、イギリスのポップグループ“Citizens!”の「True Romance」。ペク監督は、映画のテーマに沿って愛の本質を歌いあげ、観客の感情移入度を高めるミディアムテンポの曲を求め、歌詞に至るまで完璧な「True Romance」を見つけだした。映画のテーマソングとして色々なシーンで使用され、甘くそしてほろ苦い愛の感情をこの曲が徐々に盛り上げてくれる。映画を代表するもう1曲が、1920年代に作曲され、様々な歌手や楽団によって新たな解釈が生み出され、広く知られている「アマポーラ」。ウジンとイスの最も好きな曲が「アマポーラ」であり、2人の共通点が分かるテーマ曲になっている。
2つ目は、家具デザイナーであるウジンと、アンティーク家具専門店“ママスタジオ”で働くイスを取り巻く多彩な空間の描写である。特にイスが働くママスタジオは、一見バラバラに散らかっているような家具が美しいハーモニーを作り出す空間として、ペク監督が最も神経を使った場所の一つである。ペク監督は自分が行ってみたい想像上のインテリアショップを基に、ママスタジオのデザインに取りかかった。特に、マンハッタン、チェルシーの工場地帯が持つ、雑然としながらも整頓された二面性のある雰囲気を作り出すことにこだわった。そこに原案「The Beauty Inside」に登場する家具専門店のデザインをプラスし、原案を壊さずに監督独特のデザイン感覚を生かした空間を完成させた。>
今だから言える?
123人から1人の人物を作り出すためには…
#1.“ウジン”は総勢123人?
ウジン役に扮したのは、ストーリーの流れにおいて重要なキャラクターを演じた21人の俳優を含め全部で123人。ペク監督と制作陣はこの123名を決定するため、総勢400人余りの俳優に会い、彼らのうち123人がオーディションを通じてウジン役を獲得した。
#2.あらゆる芸能事務所社長が総出動!
うちの社長がなぜあそこに?
キャスティングされて重要な役柄を任された21人のウジンの俳優たち。面白いのは、映画の中でこの俳優たちが所属している芸能事務所の社長たちに会えることだ。彼らは大部分がモンタージュのウジンとして出演しているが、社長がモンタージュとして出演することは制作陣と約束した俳優キャスティングの必須条件のうちの1つだった。
また、現場スタッフの多くが、やはりモンタージュのウジンとして映画の中に出演した。
#3.“俳優”ハン・ヒョジュ
彼女は脚本家でもあった
本作に並々ならぬ愛情を抱いていたハン・ヒョジュはイスの役柄にのめり込み苦心した。特にウジンとの最後のシーンの撮影では、彼女はずいぶん悩んだという。ハン・ヒョジュはペク監督にイスとしてウジンに言いたい言葉をセリフとして提案し、ペク監督は彼女の感性を取り入れて観客の心に余韻を残すセリフを生み出した。
できるのだろうか。
問いつつ見守った2人の恋は胸に迫り、
気づくと涙が……
深沢 潮
(作家)