最も困難だったのは、ルビーを演じる若い俳優を見つけることだ。物心ついた時から家族に対する責任を感じていたルビー役には、年齢以上の成熟した雰囲気を醸し出すことが求められた。へダーは、「CODAと話してわかったことは、彼らは親に伝達しなければならない状況に追い込まれたことで、あっという間に人一倍多くの大人の事情に身を置いてしまうの」と指摘する。
この役を勝ち取る役者は、ルビーの心情の微妙なニュアンスをすべて演じるだけでなく、手話を流暢に使いこなせる必要があった。さらに、ルビーの歌声が合唱団の先生を感動させるレベルであることを観客に納得させなければならないし、漁師の仕事もできなくてはならない。
英国俳優のエミリア・ジョーンズは、美しく個性的な声を持ち、初めて習うのにもかかわらず、すぐに手話に慣れ親しむなど、まさにルビー役にぴったりの資質を備えていた。出演が決まると、ジョーンズは講師のアンセルモ・デソウザのもとで、ASLとろう文化の勉強に取り組んだ。ジョーンズは、「大変だったけど、私は挑戦するのが大好きなの」と振り返る。