新たによみがえるディケンズの名作
新たによみがえるディケンズの名作
アーマンド・イアヌッチ監督は、長年チャールズ・ディケンズのファンであったという。数年前、ディケンズの第8作目の小説「デイヴィッド・コパフィールド」(初版1850年)を読み返していた時に、映画化を考えたと語る。「これは現代にも通じる物語だ。でも、今まで映像化された作品は、ドラマ性や背景に寄りすぎて深刻すぎると感じていた。この小説には出来事や背景が多く描かれているけれど、僕にとっては、そこはさほど重要ではなかった」。誰もが知るディケンズというヒーローが、貧しい孤児から立派な小説家へと成長していく自伝的要素の強い原作を、監督はシニカルながらも心温まる世界観をもって、数奇な人生の「物語」として描き出していく。イアヌッチ監督がディケンズの小説に手を出したのは初めてではない。自身が脚本と出演を務めたBBC TVスペシャル「Armando’s Taleof Charles Dickens(原題)」は、「ヴィクトリア時代の深刻さ」を取り除いた、いわばディケンズの再考察だった。この数年間で彼は、『In the Loop(原題)』や、「官僚天国!~今日もツジツマ合わせマス~」、HBO「Veep/ヴィープ」などの作品を手がけ、政治色の強い物語を巧妙にエンターテインメント作品に仕立てるというスタイルで高い評価を得ている。