スタッフが最も苦戦したのは、ヴィクトリア時代の3つの異なる背景をどう再現するかであった。『スターリンの葬送狂騒曲』でも監督と仕事をした美術のクリスティーナ・カサリは、ロンドンでは忙しない上に汚く、ドーヴァーでは海岸の雰囲気が漂い、カンタベリーは優雅な感じにしたかったという。イングランド中を駆け巡り、多種多様で風変わりな場所を求めた。デイヴィッドが生まれた家は、ノースフォークに見つけた。「温かくて、美しくて、太陽の光に満ちた素敵な場所だった」とカサリは語る。みすぼらしく過酷な瓶詰め工場は、東ロンドン地区にあるポンプ場で撮影した。サフォーク州ベリー・セント・エドマンズの印象も彼女は語る。「この歴史ある街に大きな馬車宿があると知って興奮したわ。列車などがない時代、人々にとって重要な場所だったからよ」。また、監督は型破りな方法で、豪勢な時代の衣装を再現しようとした。「小説は暗くて、明暗がハッキリしている印象だけど、私たちは物語が今でも生きているかのように活気にあふれ、美しいものにしたかった。だから、登場人物と少し相性の悪い色や服を組み合わせたの。それがなんとも素敵だった」と、カサリは衣装デザインを賞賛する。