複雑な魅力をあわせ持つ、実在の殺人犯カルロス・ロブレド・プッチからアイデアを得たオルテガ監督だが、映画の主人公としては「怪物カルロス」とはいくぶん異なる、架空のキャラクター「カルリートス」を生み出した。カルリートスは、自分が何をしているのか、自分でも理解していないキャラクターである。
映画化にあたって、カルロスの本質を変更した理由について説明するために、オルテガ監督は自らの少年時代を振り返る。「なぜか幼い頃から、犯罪というものに魅かれていた。映画のさまざまなキャラクターと出会うにつれて、ますます犯罪に魅力を感じるようになった。とにかくはじめは、自分の目で見たいと思っていたけれど、実際は身体がアドレナリンの放出を求めていたようだ。それは、犯罪で得られる感覚と同じものだろう。ティーンエイジャーになって、ストリートにたむろしていた頃に、暴力の現実を目の当たりにしたんだ。そのあまりの過激さは、狂っているという言葉では言い尽くせなかったね」
そんな体験をしたオルテガ監督は、「暴力の本質を見てしまったからこそ、強盗から殺人鬼になった少年の物語を映画に撮ろうと決めた時、悪を描くのではなく、美しいもの、観客への贈りものになるような作品にしようと考えた」と語る。