鬼才に常識を捨て去る決意をさせた小説

ポール・ヴァーホーヴェン監督に、フランスの作家フィリップ・ディジャンの小説「エル ELLE」の映画化を薦めたのは、プロデューサーのサイド・ベン・サイドだ。ヴァーホーヴェン監督は、その物語の斬新さに驚くと共に、「自分自身が今まで出会ったことがないこのストーリーに、ふさわしい撮影方法を見つけなければならない」と決意したと振り返る。ヴァーホーヴェン監督ほどハリウッドの常識を超越してきた鬼才が、「つまり僕らはできるだけ早く、常識を捨て去る覚悟を決める必要があった」と言うほどの小説だったのだ。その結果、映画は表面的な道徳性からは完全に解き放たれた。主人公のミシェルが、自宅で覆面の男に襲われるという事件が物語の発端なのだが、脚本を手掛けたデヴィッド・バークは、ヴァーホーヴェン監督と徹底的に議論を重ね、ミシェルを被害者ではなく、とてもアグレッシブな女性として描いている。