Production Note
プロダクション ノート

メリル・ストリープでなければ、映画化できない!歌にも定評のあるメリルは“オンチ”を特訓して挑む
 マーティンは「フローレンスを演じられる人物はただ一人、メリル・ストリープだけだ」と考えていた。そうでなければ、映画化は諦めるつもりだった。クーンはメリルが一緒に仕事をしたいと思う人物を引き入れる必要があると考え、スティーヴン・フリアーズに監督を依頼する。脚本を気に入った彼は「メリルがOKなら」と即座に回答、さらにメリルからも快諾の返事が届く。「演劇や音楽を学ぶ者なら誰でも彼女のことを知っているわ。スティーヴンが電話してきて『史上最悪のオペラ歌手の役をやってほしい』と言われた時は大喜びしたわね。ずっと彼と一緒に仕事をしたいと思っていたの。」 撮影前にメリルは「ド下手」に歌う歌唱法をマスターすることを求められた。「下手に歌うのは簡単だと思ったの。でも、想像したよりもずっと大変だったわ。フローレンスは一番難しいアリアに挑戦するのよ。しかもあのマリア・カラスが晩年に出すのを苦労した、ヘ長調の高音で歌うことができたの。思い切り大胆に音程を外すけれど、彼女には最後にはちゃんと歌えるんじゃないかと期待を持たせる何かがあったのよ。」  メリルはヴォーカルコーチとボイストレーニングを行い、上手く歌うことから始めたと語る。「そこからちょっとずつ、オンチになるように崩していったわ。本物のフローレンスならどう歌ったかは考えず、自分の中のフローレンスなら、どんな風にアプローチするかを考えたの。息を吸い込むタイミングが遅すぎて音程を外してしまうのだけれど、彼女の音楽に対する強い想いと愛情が感じられるはずよ。」