ミシェル・アザナヴィシウス監督と原作の出会いは、全くの偶然だった。ある日、アザナヴィシウスは電車で出かけた際に、その時読んでいた本を持ってくるのを忘れてしまった。そこで駅で新しく購入したのがアンヌ・ヴィアゼムスキーの本だった。
アンヌはジャン=リュック・ゴダールとの日々を描いた本を2作書いている。「彼女のひたむきな12カ月」と「それからの彼女」だ。「彼女のひたむきな12カ月」は2人の関係の始まり、つまり魅力的だが不器用な男が、ド・ゴール主義で有名な一族の娘アンヌと出会うところから始まり、67年のアヴィニョン演劇祭での『中国女』のレセプションまでを描いている。その続編にあたる「それからの彼女」では68年5月にゴダールを襲った危機、つまり彼の思想の先鋭化と2人の結婚生活の崩壊が描かれており、今回の映画には「彼女のひたむきな12カ月」の内容も少し入っているが、メインで描かれるのは「それからの彼女」だ。
「読んですぐに映画が浮かんだ」と言うアザナヴィシウスがアンヌに電話で映画化のオファーをした際、彼女はすでにいくつかのオファーを断っていると言った。当時のことを、監督はこう振り返る。「彼女には、自分の本を映画にしたいという気持ちがなかった。電話を切る前に『本当に残念だ、だってこの本はとても愉しいのに』って言ったのを覚えているよ。そしたら彼女はすぐ答えたんだ。『自分もそう思うが人に言われたのは初めて』ってね。全てはそこから始まった。」