ルイと進めたゴダールの役作りについてを、監督はこう振り返る。「僕らはあるルールにのっとって役割を分けた。ルイはゴダールファンを魅了することを考え、僕はゴダールを好きじゃない人や、そんなに興味を持っていない人を惹きつけることを考えた。ルイがゴダールに多大な敬意を払う一方で、僕は、僕の創作のゴダールに肉付けするために少し曲解する傾向にあった。大げさに言えば、彼は崇敬に傾き僕は不敬に傾いたとも言えるね。そうして最終的には、現実のゴダール、アンヌの視点から見たゴダール、ルイの化身、それと僕のゴダールの交わったところに新しいゴダール像が生まれたんだ。」
当時をルイはこう語っている。「僕が監督に〝ゴダールを愛する人を傷つけるのは絶対に避けたい″と言うと、彼は〝ゴダールを嫌うものを追い払いたくない″と答える。この欲求と恐れのバランスを取ったところが監督の許容力のなせる業だよ!」
またアザナヴィシウスは、ルイがゴダールの真似がとても上手なことに気づき、モノマネは望んでいないとルイに伝えていたと言う。「でもセリフはゴダールの言葉遣いで書かれていたので、読み合わせでちょっとでもルイが真似をすると、途端にとてもおもしろくなっちゃうんだ。しかも正直僕はそれが大好きだった。しばらくは抵抗したけど、そのうち観客が人物像を受け入れられるぐらいにゴダールを真似るのはアリにしようと思った。その代わり、役を型にはめてしまわないようにと最大限の気も配ったよ。プライベートの彼/社会的な彼、コミカルな彼/悲劇的な彼、愛/政治、そんなものの中を自由に行き来できるように。ここに至るのに何時間も話し合ったよ。本当に何時間もだよ! こんなに俳優と話した事はかつてないね!!」
彼のパートナーとなるアンヌを演じたステイシー・マーティンは振り返る。「フランスにはゴダール狂がたくさんいるけれど、ルイは恐れてはいなかった。その代わりに、とても努力していたわ。私がすごいと思ったのは、彼がゴダールを風刺画みたいにデフォルメしなかったことね。彼はあくまで1人の男だった。私たちは常に“偶像”としてのゴダールとヴィアゼムスキーではなく、人間としての彼らに夢中になったのよ。」