本作中でアンヌはゴダールと出会い、女優として、監督の妻として、そして一人の女性として次第に成長を遂げていく。そんなアンヌの変化について監督はこう説明する。「観客には最初に彼女と恋に落ちてもらう必要があったので、冒頭では彼女をアイドルみたいに扱った。そのあと、ステイシーと僕はアンヌから笑みを減らしていったんだ。最初は結構笑うんだけど、どんどん少なくなり、最後には全く笑わなくなる。ゴダールから自由になるまでね。彼女に笑いが戻ることが彼女の解放を示唆しているんだ。彼女を媒介して、映画は人生と愛を表していく。ストーリーを動かすのは彼女だし、彼女が欠点に関わらずゴダールを愛するから僕らも彼を受け入れられるし、彼女は映画の定点なんだ。」
ステイシーは、撮影前の役作りの段階ではアンヌには会わなかったという。「撮影前は躊躇したわ。会ったほうが良いのか悪いのか、迷っていたの。彼女の書いた原作とアザナヴィシウスの脚本に魅せられていたので、自分自身で何かを見つけたいとも思っていたし、心の底では、本人に会ってしまったら探求心が薄まって、影響を受けるんじゃないかとも恐れていたのね。本と脚本にはたくさんの情報が詰まっていて、私もそこに自分自身で何かを加えたかった。」
そんな想いで取り組んだ撮影が終わった後の気持ちをステイシーはこう振り返る。「私はアンヌの、ゴダールとの間に起きたことの捉え方に心を揺さぶられた。辛いこともあった人生のパートを文字で綴ることは簡単ではないと思うわ。でもゴダールについて書く時の彼女はとても情け深いの。たとえネガティブな表現をしているときですらね。お互いへの愛が伝わってきて、とても感動した。愛は形を変えたけれど、存在し続けているかのような…。私たちはこのカップルと時を過ごし、彼らの物語の虜になった。最初はおかしくて、次第に胸を打たれ、そして物悲しさが漂っていく。ストーリーには一つの愛の始まりと終わりが描かれていて、そして同時にアンヌの進化も表現されている。ゴダールとの出会いに始まり、疑いなく彼の影響で彼女は変わり、成長し、学び、そして自分自身をもっと発見していくのね。そんな物語のすべてに、私はずっと感動していたわ。」