ベレニス・ベジョが演じたのは、ジャーナリストであり、スタイリストであり、映画製作者でもあったミシェル・ロジエ。自信に満ち、自立していて美しく、そして何よりゴダールに威圧されていない彼女に、アンヌは憧れをいだき、次第に傾倒していく。
そんなミシェルの夫ジャン=ピエール・バンベルジェは、リベラシオン紙の共同創始者であり、たくさんの映画への出演・プロデュースもした人物だ。彼は妻よりも控えめな人物であり、このカップルはアンヌとゴダールの鏡像となっている。演じたミシャ・レスコーは飄々とした優雅な雰囲気を役にもたらした。
映画評論家で監督のミシェル・クルノーを演じたのはグレゴリー・ガドゥボワ。「実際のクルノーとはずいぶん違う。本物は魅力的なすごい色男だ」と監督は笑う。「彼は友達に裏切られ、それでもその友達を敬愛し続ける男。68年にカンヌ映画祭が中止になったとき、クルノー本人がどんな反応をしたのか知らないが、でもプライドの観点からとらえるのはとても面白いと思った。ガドゥボワは卓越した俳優で、あらゆるセリフに深みを与え愉快なものにするんだ。演技の表現が広いのに、微妙なニュアンスも含むことができる。本当に感銘したよ。」
のちにゴダールと共に〝ジガ・ヴェルトフ集団″を立ち上げるジャン=ピエール・ゴラン役のフェリックス・キシルは、ゴランの深刻で、また時に激しくラジカルな部分を表現しつつも、批評的にならない演技を見せる。彼はゴダールに魅了されていたし、またゴダールも彼に魅了されていた。知性的な恋愛とも言える彼らの関係において、フェリックスはその役を完璧に演じている。
ジャン=アンリ・ロジェを演じたアルチュール・オルシエは当時の若者の血気盛んで、パリっ子らしく生意気で、まったくもって文化人ではない役柄をうまく表現している。
また、映画終盤のホテルの一室でのシーンでは見知らぬ声でのナレーションが入るが、あの神視点の文章は、哲学者ロラン・バルトの「恋愛のディスクール・断章」からの引用だと監督は言う。あの声の持ち主はゴダールが60年に監督した『小さな兵隊』で主役を演じたミシェル・シュボールである。
アザナヴィシウスは楽しそうに話す。「こういうイタズラは他に2か所あるんだ。ゴダールにレストランで侮辱されている人物はジャン=ピエール・モッキー。モッキーとゴダールには類似するところがある。そしてゴダールの助手だったロマン・グピルも警察官として出ているんだよ!」