1960年生まれ、大分県出身。京都大学在学中から自主映画を製作。『課外授業暴行』(89)でデビュー後、劇場映画からドキュメンタリー、テレビなど様々な作品を手掛ける。『ヘヴンズストーリー』(10)では、ベルリン国際映画祭の批評家連盟賞とNETPAC(最優秀アジア映画)賞を受賞。『アントキノイノチ』(11)では、モントリオール世界映画祭ワールド・コンペティション部門イノベーションアワードを受賞した。『64‐ロクヨン‐』2部作(16)では、前編で日本アカデミー賞優秀監督賞受賞。その後も、『8年越しの花嫁奇跡の実話』(17)、『友罪』(18)、『楽園』(19)、『糸』(20)、『護られなかった者たちへ』(21)、『とんび』『ラーゲリより愛を込めて』(22)など話題作を連発している。
COMMENT
十代後半から二十代前半にかけて沢木耕太郎さんのノンフィクションの幾つかを夢中になって読んだ経験があります。それらは、「老人と青年」が主人公として描かれ、「命と使命」についての葛藤の物語であり、「永遠と一日」の感受性が、常に描かれていました。老齢に差し掛かってしまった今、もう一度あの時間を『春に散る』を通して生き直してみたいと思っています。佐藤浩市さんと横浜流星さんという二人の役者に託して。
昭和から映画の現場の様々を生きて来た佐藤浩市さんの繊細と豪胆。そして今回は、亡父、三國連太郎さんや息子の寛一郎くんとの実人生も、劇中の横浜流星さんとの疑似父子の中に深い影を落としてくるような気がしています。
一方の横浜流星さんにはずっと以前から注目していました。彼の一本気な眼差しが、現在この瞬間だけを生きようとする若者像にぴたりとはまる気がしています。二人のそういう今の佇まいと立ち向かい方を映画に刻み残していきたいと思っています。そういえば、沢木耕太郎さんの著作のタイトルを思い出しました。『流星ひとつ』、今回のキャスティングもまた、沢木耕太郎さんに導かれたのかもしれません。