フィンランドの新鋭女性監督による鮮烈な長編デビュー作

メガホンをとったのは、本作が長編デビューとなる女性監督のハンナ・ベルイホルム。様々な短編映画やテレビシリーズを監督し、2018年に発表した『Puppet Master(原題)』は世界の映画祭で上映され、高い評価を受けた。『ハッチング―孵化―』のプロジェクトのきっかけは、2014年に開催されたあるイベントでのハンナと脚本家のイリヤ・ラウチとの出会いだった。そこでイリヤは、少年が鳥の卵から自分の悪い分身を孵化させるというアイデアをハンナに話した。それを聞いたハンナは主人公を少女にすることを提案し、二人は脚本開発にとりかかった。「この映画は鎧をまとい、対面を保つことをテーマにしている。物語は母と娘の2人の強い女性を中心に描いている。主人公のティンヤは、母親の望みをすべて満たすことで、彼女の愛情を得ようとする。母親は、周囲の人間をコントロールし、自分の人気ブログを通じて自身の完璧な生活を全世界に発信することで幸せを得ようとする。私自身が完璧主義者であるから、両方のキャラクターに心から共感できる。私も自分の家族にどう生きるべきかを押しつけていることがよくある。それが正しい幸せを手に入れる道であるかのように。多くの観客、特に女性の方は、映画を通して、コントロールしたい、喜ばせたいという衝動と、不完全な自分の姿を見せることへの恐怖に気づくことだろう」とハンナは語る。ホラージャンルの作品で定評のあるハンナは、ホラーに惹かれる理由について「恐怖はとても大きな感情だし、ホラー映画では非常に映画的な方法でストーリーを語ることができる。キャラクターの中にあるもの、私たちの感情が何らかの形で外部に現れることもあるので、映画製作者にとってホラー映画を作ることはとてもエキサイティングなことなのよ」と話す。