美しい北欧に潜む恐怖を表現したプロダクションデザイン

本作の特徴は、恐怖の舞台が暗闇の中ではなく、過剰なまでロマンチックな北欧スタイルに装飾された明るい部屋の中であることだ。母親が幸せな家族と全く綻びのない家という完璧なイメージを示すために、インテリア全体を彼女がデザインした設定になっている。母親は家族の中に秘密を持ちたくないので、この映画の中では暗い影はなく、全てが柔らかな光の下に置かれている。そして、パステルカラーの物やバラの花など、一見だけすると素敵だと思われるものでいっぱいにされている。監督のハンナは「美術監督のパイヴィ・ケットゥネン、撮影監督のヤルッコ・T. ライネと作品の世界観を話し合ったときに私が求めたのは、完璧なおとぎの国ではないけど、全体を少しだけ現実より格上げすることだった。母親の完璧で理想的な世界観を再現しているけれど、最後にはそれがとても恐ろしいものであることがわかる。従来の映画とは少し違って、暗闇の重苦しい雰囲気の場所ではなく、美しく明るい環境で起こる恐怖を表現したかった」と語る。また、本作の大きな特徴は全編を通して自然な感じがしないことだ。ティンヤが道を歩くシーンや病院を訪れるシーンでは他の人間は一人も存在していない。これは、登場人物たちがドールハウスのような世界の中で見せかけの生活を送っていることを表現する監督の狙いだという。