PRODUCTION NOTEプロダクション ノート
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最初にドキュメンタリー部分が撮影された。ヴェンド監督、撮影監督のハンノ・レンツ、
ヒトラーに扮したマスッチ、そしてディレクターのファビアン・ザヴァツキ役に選ばれた
ファビアン・ブッシュが、ベルリンやミュンヘンといった大都市だけでなく、
ドイツ中を車で回った。政治家やドッグブリーダー、礼儀作法のコーチや陰謀説を唱える人たちと
アポを取り、街を行き交う人々にアプローチし、近付いてくる人々と交流した。
ムーラーは「驚くことに、多くの人々が偽のヒトラーを歓迎し、彼と一緒に自撮りをしたがった。
民主主義に毒づき、誰かがもう一度ドイツで思い切った手段を
取ってくれることを望んでいた人たちもいた」と語る。
ヴェンド監督が付け加える。「まるでポップスターと遭遇したようだった。
彼らは本物のヒトラーであるはずがないとわかっていたけれど、彼を受け入れて心を開いていた。」
ブランデンブルク・アン・デア・ハーフェルの街で、
ネオナチ組織NPD(ドイツ国家民主党)のデモに参加した人たちだけが、
ヒトラーに扮したマスッチがホテルのバルコニーに立って彼らに向かって手を振った時、
困惑の表情を露わにした。
「最初は怖かったよ。恐怖を克服する必要があった」とマスッチは告白する。
だが、どうやらヒトラーは、特に女性の注意を引くらしい。何人かの女性がマスッチに
「愛してるわ」とハグしたと言う。「もちろん、僕を激しく非難する女性もいた。
それは健全なことだと思ったよ。『恐ろしいわ』と言う黒人女性もいた。
僕はヒトラーとしてこれらの状況に対応しなければならなかった。
僕が役者だということを完全に忘れている人たちもいた。真剣に話しかけてきた彼らの会話から、
彼らがいかに騙されやすいか、いかに歴史から学んでいないかがわかったよ。」
380時間以上に及ぶ撮影素材を持ち帰ったヴェンド監督は、
「この旅は非常に恐ろしかったけれど、この映画にセミ・ドキュメンタリー手法を用いたことは
正しかったと実感した」と振り返る。「1本の映画で政治や社会を変えることはできないが、
この映画を観て、観客たちが討論を始めてくれればうれしいね。」