プロフィール

1960年生まれ、愛媛県出身。黒澤明監督、市川崑監督の作品に録音助手として参加。91年、君塚匠監督の『喪の仕事』で録音技師デビュー。『蕨野行』(03/恩地日出夫監督)にて日本映画技術協会映像技術賞受賞。主な作品に、小栗康平監督の『埋もれ木』(05)、『FOUJITA』(15)、原田眞人監督の『クライマーズ・ハイ』(08)、『駆込み女と駆出し男』(15)、『日本のいちばん長い日』(15)、中島哲也監督の『告白』(10)、『渇き。』(14)、三木孝浩監督の『僕等がいた 前・後篇』(12)、『陽だまりの彼女』(13)など。他に『LoveLetter』(95/岩井俊二監督)、『蜩ノ記』(14/小泉堯史監督)など。吉田監督作品は、デビュー作『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(07)以降、『クヒオ大佐』(09)、『パーマネント野ばら』(10)、『桐島、部活やめるってよ』(12)、『紙の月』(14)、そして本作まで、全ての作品の録音を手がける。

Q&A

本作で音的にこだわった点を教えてください。
どの作品でもそうなんですけど、やはり現場録音(シンクロ)を第一に考えますね。俳優さん達のテンションを大切にしたいから、今回の作品も出演者の方々の考えやその時の感じ方を最優先にしました。AR(アフレコ)ではなかなか出せないものがあるんじゃないかなと思います。

矢野さんにとって吉田監督はどんな存在ですか?
第一回作品から録音を担当させていただいてますが、正直、未だに監督の考えについて行けてない感じがします。まあ少しは理解してないと作品が仕上がらないのですが。出演者の方々も最初は、戸惑う方も多いと思いますよ。作品中に現場が、時々中断することもありましたからね。ただ、勉強させられますね。仕上がった作品を見て、監督が拘っていたこと、表現方法はこういうことだったんだねと!

録音・整音という立場から見たキャストの皆さんの声やお芝居の印象を教えてください。
今回の出演者の方々は、個々に個性のある方々だったと思います。けれども、録音部としては良かったですね。男性陣はしっかりとした低音があり、亀梨さんはさすが歌を歌ってるということもあるとは思いますが、小さい台詞でもはっきり聞こえますね。発声練習をしっかりしてる印象があります。女性陣も楽でした。

矢野さんが映画づくりの喜びを感じる瞬間は?
喜びですか? そうですね。劇場からお客さんが出て来て色々な表情、意見を見聞きした時ですね。仕上げが終わってすぐだと、色々なことを気にして作品を落ち着いて観れないですからね。

録音というお仕事はどんなお仕事ですか?
今、改めて録音部で良かったと思います。作品の初めから最終の仕上げまで、関われますからね。自分の中では、一番、演出部に近いのではと思います。仕上げ作業によって、色々な作品になっていきますからね。俳優さんの表情や動きに対して、効果音や音楽のボリュームを変えて、表情をより豊かにしたり、勢いを感じさせたり、色んなことが出来ますからね。

完成した映画はご覧になって、いかが思われましたか?
吉田監督の作品の中でも僕は好きですね。なんとなく、こういう家族の描き方も良いなって思うし、変な家族だけど最後は一つになって、お父さんはお父さん。お母さんはお母さん。子供達は子供達。ひと味違う、監督の描き方がすごく素敵だと思います。