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監督からのコメント

『生きうつしのプリマ』は、私の過去に着想を得て作りあげた半自伝的とも言える特別な作品です。
私の母は晩年アルツハイマーを患い、1979年に亡くなりました。母が亡くなってから半年後、ある女性から母について聞きたいことがあるといった内容の手紙が届きました。そのやりとりの中で私は人生において大きな衝撃を受けることになるのですが、そこからこの作品の構想は始まりました。でも、それを実際に物語として脚本にして映像化するまでには、私自身の中で大変長い時間を要しました。
主人公ゾフィとその母に瓜二つのカタリーナが2人ともジャンルは違えど歌手であるというのは、私自身の体験を盛り込んだわけではなく、この映画のために新たに設定しました。2人を演じたカッチャ・リーマンとバルバラ・スコヴァは、“女優”であると共に“歌手”でもあったので、女優としての輝きだけでなく、歌手としての才能も披露してもらえるような作品にしたいと考えたのです。2人とは過去に何度も一緒に仕事をしていましたが、同じ映画で2人を起用したことはありませんでした。2人からはずっと共演できるような作品を書いてくれと言われていました。共にとても素晴らしい女優ですし、2人が出てくれるのであれば、このあたためていた構想を彼女たちの為にきちんと脚本にして、映画化しようと考えたのです。歌も歌える程度の女優なら大勢いますが、2人は“女優”と“歌手”という2つの職業を見事に両立させている稀有な女優です。カッチャ・リーマンは自身のグループを率いて自分で曲を書き、歌い、演奏もしています。バルバラ・スコヴァは何年にも渡り、「月に憑かれたピエロ」(アルノルト・シェーンベルク)の独唱者を務めていることでも知られています。この作品は、ある意味2人に捧げるオマージュなのです。そんな2人の周りにも、名優と呼ばれるとても素晴らしい俳優たちが集合してくれました。彼らの演技がさらにこの作品を面白いものにしてくれたと感じています。