誇らし気に低予算を謳う
ホラー映画と違い、
キャビンもの大道を往く本作は
哀しい人間の業と絶望を
見事に映し出している。
高機能のエンタメ術に加え、
荒廃した世界像が
現代の不安を映し出す。
これはアメリカ映画の
最先端のひとつだ。
いま最も「守る男」がハマる俳優、
ジョエル・エドガートンの
無骨な魅力も際立っている。
最初から最後まであまりにも不穏!!
疑心暗鬼の連鎖で増幅する
狂気にあてられ、
鑑賞後は疲労困憊に……。
背後に常に得体の知れない“何か”が佇み
近づいて来るような恐怖、
本作はまさしくそれ。
混沌とした闇の渦に
じわじわと呑まれていく。
極限まで記号化された”死の恐怖”。
これはゾンビが登場しない
「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」だ!
得体の知れない何かに蝕まれた、
“平凡な家庭” 、故のスリラー。
狂気と紙一重の正気には、
静かな限界が迫ってくる。
得体の知れなさ過ぎる不安と、
狂気に落ちていく疑心暗鬼。
なんとも言いようのない
執拗な恐怖に満ちた映画だった。
IT=死神がドアのむこうに立っている。
もはや「あの世」になった世界で、
人々がどう生きるかを描いた映画だ。
幾度となく脈打つ緊迫感と
激しさが押し寄せてくる、
最後まで考えさせられ
体感させられる恐怖。
絶対的な死を前にした時、
心は恐怖に支配される。
愛、絶望、狂気、
自分は人として存在出来るのだろうか?