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2023.11.21
映画「怪物」Blu-ray&DVD 発売決定!

映画「怪物」Blu-ray&DVD 発売決定!

2024年2月21日(水)Blu-ray&DVD の発売が決定いたしました!
豪華版にはメイキングや完成披露試写会・初日舞台挨拶などの特典映像を収録。
さらにアウターケース&デジパック仕様、フォトブックを封入。

■商品概要
Blu-ray 豪華版7,700円(税抜:7,000円)
DVD 豪華版 6,600円(税抜:6,000円)
DVD 通常版 4,400円(税抜:4,000円)
詳しくはこちら

2023.09.11
人気イラストレーターの大塚いちおさんより、 『怪物』をご鑑賞いただいてのイラストが到着!

2012年の是枝監督のTVドラマ「ゴーイング マイ ホーム」から派生した絵本『クーナ』を是枝監督と共に手掛けられた人気イラストレーターの大塚いちおさんに『怪物』をご鑑賞いただき、イラストをお描きいただきました。

大塚いちおさん(イラストレーター/アートディレクター)
Eテレ「みいつけた!」のキャラクターデザインやセット、衣装、小道具などデザインと番組アートディレクションを担当。
川崎フロンターレ ファミリーアートディレクター。

HP http://ichiootsuka.com/
X @ichiootsuka 
instagram ichiootsuka

「inside out」
嵐の後の彼ら2人の心の中と風景、そんな情景を僕なりに描いてみました。

2023.09.05
『怪物』の感想を素敵なイラストで表現頂きました!

イラストレーターの水沢そらさんからのイラストが届きました。

水沢そら さん(イラストレーター)
website http://mizusawasora.com
Instagram https://www.instagram.com/doblon/
X https://twitter.com/Sora_rubyred

柵があるから「あっち」と「こっち」
その気になればいつでも乗り越えられる、こんなちっぽけな柵に何ができるのでしょうか。
ふと見上げれば空はどこまでもつながっているはず。

2023.09.03
『怪物』の感想を素敵なイラストで表現頂きました!

イラストレーターの藤安初枝さんからのイラストが届きました。

藤安初枝さん(イラストレーター)
Instagram:@fujiyasu_h

X : @fujiyasu_h

様々な場面でふたりの少年が見せる表情がとても印象的でした。森を駆けていくふたりの眩しさが胸にずっと残っています。

2023.09.02
『怪物』の感想を素敵なイラストで表現頂きました!

イラストレーターの中島梨絵さんからのイラストが届きました。

中島梨絵 さん(イラストレーター)
公式HP http://nakajimarie.com
X(Twitter) https://twitter.com/NKJM_RIE

2023.09.01
『怪物』の感想を素敵なイラストで表現頂きました!

イラストレーターのagoeraさんからのイラストが届きました。

agoeraさん(イラストレーター)
WEB agoera.org
X(Twitter)  https://twitter.com/agoera
Instagram  https://www.instagram.com/agoera/

枝の間を差し抜ける光。葉がざわめく音。表情を隠す影。声をかき消す風。

2023.08.30
『怪物』の感想を素敵な絵画で表現頂きました!

映画『怪物』をご覧いただいたアーティストの皆様に、映画の感想を絵画やイラストの作品にて表現頂きました。
順次公式HPにてご紹介致しますので、お楽しみに!

山内若菜さん(日本画家)
Instagram https://instagram.com/ruocaishannei?igshid=OGQ5ZDc2ODk2ZA==
FB https://www.facebook.com/wakana.yamauchi.75
HP http://wakanayamauchi.com

「新緑」

「萌緑」

「赤視」

「惑紺」

「吹くひと」

2023.08.18「怪物」感想文コンクール実施します!

2023.8.18(金)~2023.9.30(土)23:59

感想文を書いてくれるの、だーれだ?
詳しくはこちらから

2023.07.18
『怪物』大ヒット上映記念!是枝裕和監督過去作ナイト上映2DAYS決定のお知らせ

本作の大ヒット上映を記念して、来る7月21日(金)22日(土)にTOHOシネマズ新宿にて、
「『怪物』大ヒット上映記念!是枝裕和監督過去作ナイト上映2DAYS」の実施が決定致しました!
詳細は下記劇場サイトにてご確認ください。皆様のご来場お待ちしております。

詳細
【日程】 7月21日(金)、7月22日(土)
【劇場】TOHOシネマズ 新宿

https://www.tohotheater.jp/event/kaibutsukinen-nightshow.html

7月21日(金)
20:10~ 『怪物』
22:55~ 『海街diary』
25:40~ 『万引き家族』

7月22日(土)
20:10~ 『怪物』
23:00~ 『三度目の殺人』
25:40~ 『そして父になる』

2023.07.14
本作の「英語字幕付き上映」追加上映劇場決定!

109シネマズプレミアム新宿にて、「英語字幕付き上映」が決定致しました!
詳細は下記劇場サイトにてご確認をお願いいたします。皆様のご来場お待ちしております。

英語字幕付き上映 詳細
【日程】 7月21日(金)~8月3日(木)
【劇場】109シネマズプレミアム新宿
https://109cinemas.net/premiumshinjuku/

2023.07.14
是枝監督や出演キャストに直接映画についての質問ができる 「ティーチインイベント」追加実施決定!!

この度、本編をご覧いただいた方がその場で直接是枝監督や出演キャストに質問ができる 「ティーチインイベント」を東京で追加実施する運びとなりました。
詳細は、以下のご案内と劇場サイトにてご確認をお願いいたします。
引き続き、追加実施する場合は、こちらの公式サイトや公式SNSにて告知して参ります。

■7月23日(日)
【劇場】(東京)TOHOシネマズ 日比谷 スクリーン9
【日程】7月23日(日)12:00の回 上映終了後
【登壇】是枝裕和監督、黒川想矢さん(予定)
https://www.tohotheater.jp/
theater/081/info/calendar.html

※予定は変更になる可能性がございます。その場合も公式サイトにて告知いたします。

2023.07.07
是枝監督に直接映画についての質問ができる 「ティーチインイベント」追加実施決定!!

この度、本編をご覧いただいた方がその場で直接是枝監督に質問ができる
「ティーチインイベント」を埼玉の川越スカラ座にて追加実施する運びとなりました。
日時など詳細は、以下のご案内と劇場サイトをご確認ください。
引き続き、追加実施する場合は、こちらの公式サイトや公式SNSにて告知して参ります。

■7月21日(金)
【劇場】(埼玉)川越スカラ座
【日程】7月21日(金)15:00の回 上映終了後
【登壇】是枝裕和監督(予定)
http://event.k-scalaza.com/?eid=1264639

※予定は変更になる可能性がございます。その場合も公式サイトにて告知いたします。

2023.07.06本作の「英語字幕付き上映」、続映決定!

明日以降の「英語字幕付き上映」が以下の通り決定致しました。
詳細は下記劇場サイトにてご確認をお願いいたします。皆様のご来場お待ちしております。

英語字幕付き上映 詳細
【日程】 7月7日(金)~7月13日(木)

【劇場】TOHOシネマズ日比谷
https://hlo.tohotheater.jp/
net/schedule/081/TNPI2000J01.do

2023.06.30【ベイビークラブシアター】&【おやこシネマ】 親子で映画館へ!『怪物』上映決定

親子で映画館へ!
ベイビークラブシアター&おやこシネマで「怪物」の上映決定!!


小さなお子さまがいらっしゃる皆様にも気兼ねなく映画をご覧いただける、
TOHOシネマズの【ベイビークラブシアター】とシネマサンシャインの【おやこシネマ】で「怪物」の上映が決まりました!

詳しくは下記をご覧ください。


★TOHOシネマズ ベイビークラブシアター
7月6日(木)実施

実施劇場はこちら
https://www.tohotheater.jp/
service/baby_club_theater/index.html


★シネマサンシャイン おやこシネマ
7月11日(火)、12日(水)実施

実施劇場はこちら
https://www.cinemasunshine.co.jp/
oyako_cinema/

2023.06.26
6月30日(金)より、本作の「英語字幕付き上映」が決定致しました!

詳細は、下記劇場サイトにてご確認をお願いいたします。

英語字幕付き上映 詳細
【日程】 6月30日(金)~

【劇場】
TOHOシネマズ日比谷

https://hlo.tohotheater.jp/
net/schedule/081/TNPI2000J01.do

TOHOシネマズ新宿
https://hlo.tohotheater.jp/
net/schedule/076/TNPI2000J01.do

TOHOシネマズ六本木ヒルズ
https://hlo.tohotheater.jp/
net/schedule/009/TNPI2000J01.do

(※六本木では、英語通訳付き是枝監督ティーチイン実施上映回もございます。詳細は以下ご確認下さい。)

2023.06.26
是枝監督に直接映画についての質問ができる「ティーチインイベント」“英語通訳付き”実施決定!
さらに、バリアフリー日本語字幕上映をご覧いただいた方向けに「ティーチインイベント」“手話通訳付き”実施も決定!!

★英語字幕付き上映 英語通訳付きティーチインイベント

この度、「英語字幕付き上映」をご覧いただいた方がその場で直接是枝監督に質問ができる
“英語通訳付き”ティーチインイベントを以下の通り実施する運びとなりました。
日本語・英語どちらでもご質問いただけます。

【劇場】(東京)TOHOシネマズ六本木ヒルズ
【日程】7月6日(木)19:00の回 上映終了後
【登壇】是枝裕和監督(予定)
https://hlo.tohotheater.jp/
net/schedule/009/TNPI2000J01.do

※予定は変更になる可能性がございます。その場合も公式サイトにて告知いたします。

2023.06.26
 

★バリアフリー日本語字幕上映 手話通訳付きティーチインイベント

さらに、この度「バリアフリー日本語字幕上映」をご覧いただいた方がその場で直接是枝監督に質問ができる
“手話通訳付き”ティーチインイベントを以下の通り実施する運びとなりました。

【劇場】(東京)TOHOシネマズ錦糸町楽天地
【日程】7月7日(金) 17:00の回 上映終了後
【登壇】是枝裕和監督(予定)
https://hlo.tohotheater.jp/
net/schedule/029/TNPI2000J01.do

※予定は変更になる可能性がございます。その場合も公式サイトにて告知いたします。

引き続き、追加実施する場合は、こちらの公式サイトや公式SNSにて告知いたします。

2023.06.26
是枝監督や出演キャストに直接映画についての質問ができる 「ティーチインイベント」追加実施決定!!

この度、本編をご覧いただいた方がその場で直接是枝監督や出演キャストに質問ができる
「ティーチインイベント」を愛知・大阪・京都で追加実施する運びとなりました。
日時・登壇者の詳細などは、以下のご案内と劇場サイトにてご確認をお願いいたします。
引き続き、追加実施する場合は、こちらの公式サイトや公式SNSにて告知して参ります。

■7月1日(土)
【劇場】(愛知)ミッドランドスクエア シネマ  スクリーン1
【日程】7月1日(土) 15:30の回 上映終了後
【登壇】是枝裕和監督(予定)
http://www.midland-sq-cinema.jp/
topics_detail/3229

■7月2日(日)
【劇場】(大阪)大阪ステーションシティシネマ  スクリーン3
【時間】7月2日(日) 10:40の回 上映終了後
【登壇】是枝裕和監督・安藤サクラさん・柊木陽太さん(予定)
https://www.osakastationcitycinema.com/
site/oscc/news/detail/s_72_1790.html

【劇場】(京都)T・ジョイ京都  スクリーン9
【時間】7月2日(日) 13:10の回 上映終了後
【登壇】是枝裕和監督・安藤サクラさん・柊木陽太さん(予定)
https://tjoy.jp/t-joy_kyoto/
theater_news/detail/22314

※予定は変更になる可能性がございます。その場合も公式サイトにて告知いたします。

2023.06.21
カンヌ凱旋記者会見全文

MC
戻ってきたばかりの監督からご挨拶をお願いいたします。

是枝監督(以下、監督)
2時間くらい前に羽田についたばかりなんですけれども、この作品にとって本当に素晴らしい評価をいただいたなと思っております。無事にこの脚本賞の盾を、僕が運んだわけではありませんが、坂元さんにお渡しできすることができて、ちょっとホッとしています。今日は有難うございます。遅い時間にすみません。

MC
一足先にご帰国されていましたが、この度見事受賞されました坂元裕二さんよりご挨拶をお願いします。

坂元裕二(以下、坂元)
こんばんは、脚本家の坂元裕二です。本日はお越し下さり有難うございます。
こういう場に出るのは初めてですので、とても緊張していますが、どうぞ宜しくお願い致します。


<質疑応答>

質問者
今回はおめでとうございます。受賞されてトロフィーを今受け取られたばかりですが、
そのトロフィーの重み、実感みたいなものはいかがですか?

坂元
実感は正直あまりありません。まだ受賞を初めて聞いた時に寝ていたものですから、第一報を聞いた瞬間、まず初めにまだ夢を見ているのかなと思いました。その後もまだ続いているようで、今も夢の中にいるような、そんな思いと、ただこの重み自体がやはりこの作品の責任感だと感じますので、そこは私自身、手にも背中にも乗っかったとても大きな責任だと感じております。

質問者
今回世界的な評価を受けたということで、今後映画の脚本に対する向き合い方ですとか、考え方のようなものに変化は出てきそうな予感というものは自分の中にありますでしょうか?

坂元
最近、映画の脚本を書くようになりまして、ほぼ2本目のようなものなんですが、まだやはり監督のお力を借りながら、プロデューサーのお力を借りながら、ゆっくりと進んでいるところですから、やはり今回含めて周りの人のお力によるものだと考えております。

質問者
先ほど一報を聞いた時に寝ていらっしゃったということですが、どなたからどのような手段、どういう状況で一報が入ったか教えてください。

坂元
朝方というか、深夜4時頃だったものですから、寝ておりました。着信はあったようなのですが、気付かずにそのまま寝ていまして、そのうちに、またそのニュースをご覧になった方からショートメールをいただいて、それで初めて音が鳴ったんですね。その音で気付いて、見たところ、プロデューサーや監督から、受賞しましたというお話を聞きまして、何と言いますか私はご覧のようにあまり感情の起伏がないものですから、「うれしい」とか「やったー」という気持ちよりは、何か「ズシン」という思いが訪れて、水を一杯飲みました。それが最初の行動でしたね。

質問者
以前、完成披露試写会の舞台挨拶の際に、この脚本は子供の頃の記憶・経験を思い出しながら書いたとおっしゃっていました。また、受賞の後に是枝監督が紹介されたコメントの中では、たった一人の孤独な人のために書いたとおっしゃっていました。差し支えない範囲で、この作品の元になったという経験がどのようなものだったのか、また、たった一人の孤独な人という、その人に伝えたい言葉が今ありましたら教えてください。

坂元
監督にお送りした、「たった一人の~」というコメントに関しては、慌てて書いたものでしたから、文章が下手だったんですが、きっとどこかにいるであろう孤独に過ごしている誰か、それは特別な誰かを指しているわけではなく、また多くの沢山の人に届けるという気持ちではなく、誰かこの映画を受け止めてくれる、そんな人がいると信じて、その人のことを頭の中で思い描きながら常に書いていました。
子供の頃に関しては、その時に話していた通りで、仲良かった友達のことや、何人かの僕が小学校時代から中学にかけて出会った友人や出来事、そんなことを思い返しながら書きました。

質問者
感情の起伏があまりないと今おっしゃっていましたが、賞というのはもらうと嬉しいものでしょうか?

坂元
周りの方から「おめでとう」と言われて初めてうれしくなります。
沢山の方から、まずは監督から、プロデューサーから「おめでとう」と、勿論チームの一人ですので、みんなでもらった「脚本賞」だと思っていますから、その時点で私が身内からお祝いされるのも不思議なことではありますが、沢山の人からその後も「おめでとう」という言葉をいただきました。それが、やはりうれしかったです。一番うれしかったのは、ジョン・キャメロン・ミッチェル監督から「脚本賞受賞おめでとうございます」というメッセージが届きまして、タクシーの中にいたんですが、涙が出ました。うれしかったです。

質問者
是枝監督はカンヌで沢山もらっていらっしゃると思いますが、賞をもらうという気持ちはどのようなものでしょうか?

監督
勿論、うれしいです。華やかな場所が好きなわけでは勿論なく、僕も周りから感情があまり見えないと言われがちなんですが、内側では色々感情の起伏があるタイプなんですが(笑)、特に自分が褒められると、本当かな?と疑問が湧きますけれども、自分の映画に関わってくれた役者さんとかスタッフが褒められるのは、うれしいですね。今回は会場にいて、何かとても幸せな気持ちになりました。

質問者
坂元さんに質問です。受賞しそうだな、するんじゃないかなという予感はなかったんでしょうか?

坂元
まったく考えてもいませんでした。カンヌに呼んでいただけたこと自体が私にとって何より嬉しいことでしたし、それ以上のことは考えていませんでした。勿論私も『怪物』のチームの一人として、作品を観てとても好きになれた作品でしたので、評価を受けると嬉しいなという気持ちでした。本音で、自分のことは全く考えておりませんでした。

質問者
脚本のどんなところを評価されたと考えていますか?

坂元
勿論、審査される方が脚本を読んでくださっているわけではないので、出来上がった作品から脚本を評価していただいたと思うのですが、それは作品のすばらしさ、そして脚本に関しては、どうでしょう、自分ではなかなか評価しづらいんですが、ジョン・キャメロン・ミッチェル監督は「人の命を救う映画になっている」とおっしゃってくださったので、もしそれが誰かの心にそうあるなら、こんなに嬉しいことはないなと思っています。

質問者
子供と親と教師という3つの視点が巧みに表現されていると思ったんですが、その辺はどういった意識で書かれたのかを教えてください。

坂元
3つの段階をふむのは、私が以前経験したことなのですが、車を運転しておりまして、赤信号で待っていました。その時前にトラックが停まっていて、青になったんですが、そのトラックがなかなか動きださなくて、しばらく待っても動かないものですから、私は前の車がよそ見しているのかなと思って「プップッ」とクラクションを鳴らしたんですね。そのトラックはそれでも動かなかった。
どうしたんだろうと思っていると、ようやく動き出した後に、横断歩道に車いすの方がいらしたんです。そのトラックは車いすの方が渡り切るのを待っていたんですが、トラックの後ろにいた私にはそれが見えなかったんですね。それ以来、自分がクラクションを鳴らしてしまったことを後悔し続けておりまして、このように世の中には普段生活していて見えないことがあり、私たち、私たちと言っていいのか、まず私自身、自分が被害者だと思うことにはとても敏感ですが、自分が加害者だと気付くことはとても難しい。それをどうすれば加害者が、被害者に対してしていること、気付くこと、それができるだろうか、そのことを10年余り常に考え続けてきて、その一つの描き方として、この方法、この描き方を選びました。

質問者
是枝監督に。坂元さんの脚本の優れているところ、どのように評価されているのかを教えてください。

監督
ぼく個人が、でいいですか?

質問者
はい。

監督
受賞後のカンヌの囲みで、坂元さんの脚本のどこが評価されたと思いますか?という記者の質問が出て、
審査員の人たちと話す機会があれば聞いてみたいなと思っていたのですが、ちょっと今回はそういう集まりがなくて、いきなり花火があがってお祭りになっちゃったものですから、ちゃんと聞けていないんですよ。それがちょっと残念なんですけれども、僕自身は最初にプロットをいただいた時から、一体何が起きているのかわからない、わからないのに読むのが止められない。どこまでいってもわからない。映画が半分過ぎても多分まだわからないということが、あぁこんな書き方があるんだなと、自分の中にはない物語の語り方でしたし、読み進めていくうちに、読んでいた自分が作品によって批評されていく、自分がその今の坂元さんのお話でいうと、クラクションを鳴らす側に否応なくなってしまうという、そのある種の居心地の悪さというんですかね、良い意味で。それが最後まで持続するということが、とても面白かったです。エンターテインメントとしても本当に面白かったんですね。それが僕は一番チャレンジしがいのある脚本だなと思ったところの一つです。沢山ありますけれども、それが一つですね。

質問者
坂元さんにお伺いします。先ほど映画の脚本は2本目とおっしゃっていましたが、そもそものお話として映画の仕事をやりたいということが、脚本を書かれるルートにあったという風に伺っております。例えば、フジテレビヤングシナリオ大賞に応募する前にディレクターズカンパニーの方に長い脚本を出して、それと同時に短くしたものをフジテレビに送ったらフジテレビの方で通ってしまった。でも、どうしても映画をやりたい、ということで、ご自身で監督作をやったこともある。そんな過去がありながら、近年だとドラマというものは結論が出ていないから面白い、映画は2時間で結論が出るから面白くないというような発言をされていたのもちょっと聞いたことがあります。もともとやりたかった映画の世界で、脚本という道で賞をとったということの喜びについて、どう思われていますか?

坂元
映画がつまらないと思ったことは全くありませんし、一人の映画ファンとして映画が大好きです。自分が高校生の頃に多くのこの世界にいる人達がそうであるように、映画をたくさん浴びるように見て、この映画の世界で映画をつくる仕事をしてみたい、と10代から20代前半のときはずっと思っていました。
1本映画をつくったのですが、その時に全く自分が監督という仕事に向いていないということが分かりまして、それ以来辞めようと思って25年くらいですかね、もう少しで30年くらい経ちます。30年も経つともしかしたら今ならできるんじゃないかと思ったりはしていたんですが、今回の是枝さんの仕事をみて、やっぱり自分にはこれはできない、無理だとはっきり分かりましたので、本当に映画監督ってすごい仕事だなと思いました。すみません、質問の答えになってましたか?

質問者
映画監督が凄いということは分かりましたけれども、脚本でカンヌの頂点に立った、もともとやりたかった映画で賞を取れたということの達成感、そういうものはあるんじゃないですか?

坂元
そうですね。私30年前にカンヌ映画祭に遊びに、観光で行ったことがありまして。それは仕事でもなんでもなく、ユーロスペースという会社の堀越謙三さんや、亡くなられた吉武美知子さんにパスを取っていただきまして、吉武さんに案内されながらカンヌで映画をたくさん観ました。その時に、いつかここで自分の作品を上映できたらどんなに幸せだろうか、そんなことを毎晩考えていました。遠巻きにレッドカーペットを見ながら。それから30年経って、賞を獲ったということも勿論嬉しかったのですが、上映できたこと、それが30年来の願いで、願いというか忘れていた願いが蘇ってきて、ああここにあったんだという気持ちになりました。

質問者
ドラマの世界でもなかなか難しい時期もあったかと思うんですよね。テレビから離れた時期もあった。ゲームの脚本を書かれたこともあった。テレビドラマに向き合うってこと、脚本家っていう職業として向き合うことが難しい時期もあったと、著書の中でも書かれていますけれども、今ご自身の脚本家の人生を振り返ってみて、やっぱり幸せの頂点というところなんでしょうか?

坂元
全く頂点とは思っておりません。なかなか日々とにかく、(記者の)皆さんも同じようにパソコンの白い紙に向かって書かれていらっしゃるかと思いますが、私も日々ただただ締め切りに追われ、文字を埋めていくということをコツコツ毎日1日中やるしか、それでしか、ものが出来上がらないので、そこになかなか達成感というものが生まれるということはなく、ただただ文字を書き貫いていく、これが自分の人生だと、振り返れば思っていますので、そこに達成感というものが、この仕事をしているとなかなかそう簡単に手に入るものじゃないのではないかなと。ただ、お客様から観てました、時に救われましたという言葉をいただけると、ちょっとそのコツコツやっていた日々を思うと、無駄ではなかったなとそんなことを思うぐらいです。

質問者
子供のセクシャルアイデンティティについて、かなり踏み込んだ内容の脚本と作品になっていることが、クィア・パルム賞を受賞されたことになっていると思うんですが、このテーマについては、お二人はかなり最初の段階から形を変えないまま、この企画をもんで映画化されたということになるのでしょうか?それとも色々話し合いで脚本をつくったというお話をカンヌの記者会見でされていましたが、そこのテーマについては紆余曲折があって最終的な形になったんでしょうか。

坂元
まず私からお話しますと、どんなお話でもどんなテーマでもそうなんですが、まずは取材、勉強、自分自身のこれまでの経験、それを踏まえながらとにかく自分の中にある“まずこうだろう”を捨てて、まず知ること、自分自身を疑うこと、それを考えながら取材・勉強を続けてきました。ある段階で監督含め監修の方に入っていただき、多くの指摘をいただきながら修正していきました。その具体的な過程に関しては監督の方が詳しいかと思うんですが、ただ自分たちが分かった気にならない、それはいつもそうなんですが、自分たちは何も知らないんだということを、常にふまえながら勉強していったという感じですね。そして、脚本に修正をいれ、大きく変えていきました。

監督
そうですね。プロットをいただいた段階で、これはちゃんと勉強しないとまずいなと思って。プロデューサーと相談しながら、協力していただける団体の方たちに連絡を取って、最終的には、LGBTQの子供たちの支援をしている団体の方に、本を読んでいただいたり、演出上どういう風な注意点があるかということをお伺いしながら、描写については現場にインティマシー・コーディネーターの方にも入っていただいて撮影をするという様な形をとりました。
もう少し踏み込んでお話した方がいいですか?
僕もなかなかどこまで踏み込んだ描写をするのか、彼らがどういう、要するに自認をしているのかというあたりが、演出する上でポイントになるなと思ったので。団体の方たちと話していた時に、あの年齢の子たちが、例えば自分がゲイであるとか、トランスジェンダーであるという自認、もしくは他認をするというような認識をするということは、まだ早い段階の子供たちだ、ということで、そういう特定の描写をむしろ避けた方がいいのではないかというアドバイスをいただいて、極力というか、そういう描写を脚本から少しカットした、ということはあります。
そのうえでーー、これはもう映画を観ていただいたうえでの話になると思うんですけれど、、、その名付けようのない、自分の中に芽生えた、得体のしれないもの、あの子たちにとっては。それを彼らは「怪物」と名付けてしまう、もしくは周りの抑圧によってそう呼ばされてしまう、そのことを描きたい。僕が考えたのは、そのように自分の中に芽生えてしまった、自分でも理解できない自分の感情とか存在を、「怪物」だと思ってしまうという感情とか行為というのは、色んな所で色んな状況に置かれた子供たちの中で起きているだろうなと思っていて。多分さきほど坂元さんが「孤独な人」といった人達だと僕も思っています。その子たちを、孤独な状況に追いやってしまっている私たちっていうものを、要するに彼らから見れば私たちの方が「怪物」であるという、この私たちが彼らに見返されるというスタンスを、どういう風に映画の中に描いていくかということまでやるべきだということを、その相談させていただいた団体の方と話し合ったうえで僕が学んだことでした。一番学んだのはそこでした。そこを見失わないようにしようと思いました。この辺で大丈夫ですか?

監督
すみません、もう一点追加を。一部でその子供たちが抱えた葛藤をネタバレだから言わないでくれと、言っているというようなことがささやかれたり、発言が飛び交ったりしているようなことを耳にしているんですけれども、観た方の感想で、なるべく先入観なく見た方がいいっていうのは間違いないと思うんですね。そういう感想をいくつも目にしましたけれども。決して、彼らが重ねた葛藤をネタとして扱ったつもりはありません。あの、構成上、おそらくむしろ観た方が自分が当事者としてあの子供たちと向き合うためには、これも坂元さんの脚本の技術だと思いますけれども、できるだけ振り回された方が、見終わったときに自分がどこに着地するのかということが最初に分からないほうが、いいのではないかなという風に思っておりますので、そこは誤解のないようにという風に、僕自身は宣伝のスタッフにも伝えております。ごめんなさい、余計な話かもしれませんが以上です。

質問者
坂元さんに伺いたいんですけども、先ほど、今回の作品を通して監督をするのは自分には無理だというようなことを感じたということをおしゃっていましたけれども、今回自分が書いた脚本がこういう形で映像化、作品になったのを観て、自分の想像以上のものができたのかとか、どういうようなことを感じたのかというところを教えていただけますでしょうか。

坂元
まず、主演する二人の子供たちを観ているうちに、自分の子供時代のことをどんどん、どんどん思い出しました。自分の名前も忘れて顔も忘れていたはずの友人の顔が、その時急に思い出すなどして、それはもう新鮮な驚きでした。
映画全体としては、本当に本づくりの段階から監督はじめ皆さんに引っ張っていただいて、多くの知己をいただきながら書きあがったものが、編集の段階でもまたよりどんどん変わっていき、というか良くなっていき、映画が成長していく、作りながら、私が書いた設計図にしかすぎない脚本が、どんどん人々が息づいていく、作品になっていくその様子に驚きましたね。一人の観客として出会えたので、それが何よりかなと思っています。

質問者
実質、今回が映画の脚本としては2本目という風におっしゃっていましたけども、それがこれだけ世界的に大きな賞をもらって、このことがご自身の今後に影響を与えたりするようなことがあると思われますか?

坂元
もう少し早く映画を始めていれば変わったのかもしれないですけど、私もう結構なベテランでカスカスなんですね。絞っても何もでない状態なので、まあ日々いろんなことを学び周りの方に助けていただきながら、書いてるんですが、正直自分がこれから何を書けるのか全く見えてはおりません。振り返った時に『怪物』が自分をもうひとつ成長させてくれたものだったなって10年後に、もしこんなこと言いながらバリバリ書いていたとしたら、この時だったなと思うのかもしれませんが、今はもうカスカスです。(笑)

質問者
あともう一つだけ確認で。今内容に関してカスカスだということだと思うんですけど、例えばこれから書くもので映画になるのかドラマになるのか、それとも他のものになりうるのか、そこら辺については何かありますか。

坂元
当面、映画を書くことは決まっています。ドラマは決まっていません。

質問者
先ほどの質問と重なることがあると思うんですが、これまでたくさんのお仕事をされてこられて、トレンディドラマもご自身を鍛えてくれたとおっしゃっておられて。そのあとも様々な社会的テーマと言われるようなところにも次々と取り組んでこられて、作風の幅を広げてこられたという印象を持っているんですけども、この『怪物』はご自身にとってこれまでの書かれた作品の中での位置付けと言いますか、これまでの取り組みの中から『怪物』のプロットに繋がるものがあったのか、そういったことをお伺いしたいです。

坂元
2010年に「Mother」というドラマをつくりまして、脚本を書きまして、2011年に「それでも、生きてゆく」というドラマの脚本を書きました。その時からずっと、先ほどもお話しましたが、抱えていた問題が自分の中にずっとあって、それがここでこんなお話をすることが相応しいのかどうか分からないのですが、加害者というのをどのように描けばいいのか、それが私にとって12年間の長い長い課題というか、自分が考えていきたいテーマだったんですね。先ほどもちょっと言いましたが、加害者がどのようにすれば被害者の存在に気づくことができるか。私たちは被害ということに対して自分自身よく考えることがあるんですが、自分自身の加害という行為に関して考えることは難しい、気づくことは難しい。それをどうすればいいんだろうかということは、私の長年のテーマだったんですが、先ほどのクラクションの話もそうなんですが、『怪物』で辿ったのは加害者が被害者の存在に気づいていく、その道のりを自分なりに今現在書ける最も適したもの、現状書けるものがコレだったという。そういうことを、“社会的”という話も出たんですが、それにまつわることをずっと考えてきたということなんですよね。ですから、これで一つ自分なりの道筋というものになっているといいなと思うんですが、それが、答えが出るかは分からないのですが、現状コレです。

質問者
ありがとうございます。関連して監督にもお伺いしたいのですが、是枝監督はこれまで坂元さんの作品を観ていて、ご自身の関心とやはり同じものがあって同じ時代を生きていて、そういったこともあって、もしご自身が脚本お願いするなら坂元さんにと前々から言われていたと。今の“社会性”といった、坂元さんがずっと取り組まれてきた、そのことに関しては監督としては今回の作品を含めても、テーマといったところと、今の坂元さんの発言に関して監督からひと言頂ければと思うんですが。

監督
難しいですね。世代的には僕の方がちょっと上なんですけれども、僕も初めて書いた脚本はディレクターズカンパニーに持って行っているんですよ。僕は89年だったか90年だったか。相米慎二に憧れて。出発点から結構似てるんですよね。90年代、僕はフジテレビの視聴率1%未満の深夜ドキュメンタリーをやりながら、坂元さんのドラマを見る、心の余裕のない20代〜30代を過ごしたんですけれども。先ほどの「Mother」や「それでも、生きてゆく」―「それでも、生きてゆく」は僕の中では圧倒的な打ちのめされ方をしたドラマなんですけれど、自分が関心を持っているモチーフをこんな形で連続ドラマで、しかもラブストーリーで真摯に取り組んで、ドラマを通して何ができるのかを模索している、作り手がいる。本当に、演者と演出と脚本が信じられないくらい高いレベルで成立しているなと。そこから目が離せなくなったっていうのが、正直なところで。“社会派”と言われると坂元さんも「ん?」と思うと思うし、僕も“社会派”っていわれるくくり方であまりピンとこないっていうのが正直なところなんです。モチーフとして選んでいることと、その先で作り手が何を考えて何を描こうとしているのかと、結果的にどんなものになったのかというのは、必ずしもイコールでつながらないもので。特にドラマでも映画でもそうですが、集団でつくってるし、作り手が描こうと思っていないものが描かれちゃったりするので、あまりそれを決めたくないなという気持ちはあります。ただ、同じ時代に生きて同じ空気を吸ってきた。でも吐き方が違ってきた。吐き方は違っていた脚本家と監督が、今回は息を合わせてつくったという感じです。

質問者
ちょっと軽い質問してもいいですか。すみません。
せっかくカンヌに行かれたので、坂元さんにはレッドカーペットを歩いた時とか、現地で過ごした感想を聞きたいのと、是枝監督には、授賞式後、役所広司さんと2ショットで写真を撮られたりされていましたが、現地で経験したことなど聞ければというのもあり。さらに、1つちょっと気になっていたのが、レッドカーペットでかかっていた曲が『菊次郎の夏』の「Summer」だったのが凄く気になっていて、もし現地で間違えちゃったんだと言われたとかあったら、と気になっていたんですけど…とりあえず、そのカンヌの思い出話、楽しかった思い出話などを聞けたらなと思います。

坂元
楽しかった思い出ではないんですが、私3日間滞在していたんですが、お腹を壊してしまいまして、
3日の内2日寝込んでおりました。ただ、ギャガのスタッフの方が優しく、クッキーとウエハースを持ってきてくださって、そのウエハースを食べたらとても美味しくて、カンヌに来て良かったなと思いました。多分、一生あれより美味しいお菓子を食べることはないような気がします。とっても美味しかったです。帰るときでしたね、治ったのは。

質問者
じゃあ全然、南仏のお料理みたいなのは…

坂元
料理は機内食は美味しくいただきました。でもほんとに、どんな料理を食べるよりどんな美味しいものを食べるより、スタッフが持ってきてくださったウエハースが最高でした。

質問者
公式上映のときは大丈夫だったのですか?

坂元
あの日は大丈夫でした。あの次の日の午前中に倒れてしまったんです。いい思い出です、これは。

質問者
ありがとうございます。

監督
レッドカーペットの音楽はですね、事前に何にしますかと聞かれました。それで坂本龍一さんの今回の『怪物』のテーマ曲をお願いします、という風に伝えました。かかったら久石譲さんだったんですよ。(苦笑)これはなんでだか分からない。何かを間違ったんだと思うんですけど。

質問者
やっぱりそうですよね。絶対、坂本龍一さんの曲じゃないの?!と凄く思っていて。

監督
当然そうだと思って歩き始めたんですけど、違いましたね。(苦笑)
上映終わって出てきてもまたかけてきたので、大好きな曲ではあるんですが・・・なぜあれがかかったのかは分かりません。授賞式でレッドカーペットを歩いていても、「タケシ!」と声をかけられましたんで。もしかすると、どっかで何かこう違っていろんなことが伝わってるかもしれないです。(苦笑)

質問者
そのあとの北野監督のレッドカーペットでも「Summer」が流れていたので・・・

監督
そうですか。そっちでもしかすると『怪物』が流れたんじゃないかと思ってたんですけど。(笑)

質問者
だから、日本の作品は全部久石譲なのかなと思っていたんですが。

監督
だとすると、だいぶ雑ですよね。(笑)まあいい曲でしたけどね。いい曲だったんですけど、ちょっと
せめて坂本さんにして欲しかったな、というのがレッドカーペットを歩いた皆の共通の意見でしたね。

質問者
やっぱそうですよね。凄い気になってました。

監督
すみません。伝えておきます。役所さんとの舞台裏については、、、まず、受賞の瞬間に役所さんの名前が呼ばれたときに、僕と安藤サクラさんが一番叫んで歓声をあげていると思います。そのぐらい格好よくてというかですね、本当に嬉しかったです。役所さんがあの場所で評価をされるということが。
裏で記念写真を撮って、役所さんも恥ずかしがり屋さんなので、あまり受賞した喜びをそんなに言葉にするということはなくてですね、裏で話したのは、今後の日本映画をどうしていくか、みたいな。日本映画界をどうよくしていくか、みたいなことをまた戻ったら話し合いましょうね、という実務的な話をしていました。ずっと応援していただいているので、僕らがやっている活動も含めて。そのお礼を伝えて、日本に戻ったらまた話しましょうっていう、そういう話です。

質問者
ありがとうございます。

質問者
坂元さんにお伺いしたいんですけど。今回、脚本賞を受賞して、今後の作品とかもより一層注目度が高まるかなと思うんですけど、その辺、プレッシャーや不安に感じることはありますか?

坂元
プレッシャーのない仕事をしたことがなくて。しかもあまり結果も出たことが、私はそんなにないものですから、いつも怒られながら、謝りながら仕事をしていて。それはビジネス的な面で、とても脆弱な脚本家なものですから。いつも細々と、細々というか、細々というと自虐が過ぎますが、皆さんにお仕事をいただきながらやっているものですから、それは今後もプロデューサー次第だと思うんですけど・・・これでそのプロデューサーたちがおめでとうって言ってくれたり、ご飯食べましょうって言ってくれたり・・・なんの質問でしたっけ?嬉しかったです。

質問者
世に出していく上で…

坂元
本当にもうカスカスなんです。ただただ、仕事をしましょうって言ってくださることが嬉しくて。それにホイホイついて行ってしまっている自分がお調子者で情けなくて。本当に書けない、ゴメンゴメン、と言いながら謝りながら、周りの方が大丈夫書けるよって言ってくださって、支えられながらやっているので。すみません、愚痴をこぼして。今後、自分が変わっていくとは現状は思えないです。ただただもう、脚本を書くのは地味に毎日朝、仕事机に座って、夜寝るまでずっとパソコンの前に座って。私の万歩計、日々12歩なんですね。トイレに3回行ったくらいなんですけど。大晦日、元旦以外はずっとそんなことをしていて。愚痴で申し訳ないですけれど、楽しい仕事でもないですし、ただただ真面目に文字を書くことでしか何も得られないものですから。こうやってとても華やかな場に立たせていただきましたが、公開が終わったらまた私締め切りに追われて、コツコツとパソコンの前に向かうしかないですので。とても楽しい気持ちにはなれないです。

質問者
そしたら、賞を受賞しても自分にご褒美といか、そういったリラックスする瞬間はないってことですか?

坂元
昨日、そのジョン・キャメロン・ミッチェル監督からメールが届く直前に、ヒカリエでモロゾフのプリンを買いまして、これがご褒美だと自分に言い聞かせて、メールを読み返しながらプリンを食べました。

質問者
次の作品に向き合うときに、インスピレーションとかそういったものとかって自分の中であったりするんでしょうか?

坂元
本当にごめんなさい、後ろ向きの話ばかりで。やっぱり35年経つとインスピレーションが皆無になります。何もひらめかないですし、思いつくことも何もなくて、パソコンに我慢して向き合った時間の長さだけが何か生んでくれる状態です。もう何か普段ポンッと思いついたり、お風呂に入ってる時に閃いたとか、頭に電球が灯るようなことが、もう全くないですから。ただただ頑張ってパソコンの前から離れない、椅子から立たない、それを一年中続ける、ということだけが、それを辞めない、諦めずに真面目にやる、ということだけが、書き終わるという日を迎えるので。すみません、インスピレーションの話をされただけでこんなに長い愚痴を言ってしまって。

質問者
是枝監督、どうですか聞いてて

監督
ねえ、ちょっと、あれですよね、坂元さんにそう言われちゃうと。(苦笑)
でもあの、似てる瞬間はあって。僕も編集をしているとやっぱりもう、閃きを待っていてもしょうがないので、朝からとにかく夜中まで画面の前に座って、あーでもないこーでもないって手を動かし続けるっていう。それをとにかく休まずにやっているうちに何か、千回試せば一回いいことが訪れるみたいな、そういう気持ちで祈りながら、画面の前に座っている時間がありますけれども。今すごくシンパシーを感じたのは、同じような瞬間を生きながら、ようやく作品を生んでいるんだなという、そこでした。

質問者
今後もお二人で作品をつくったりとか、そういったことを考えていますか。

監督
チャンスがあれば僕はお願いしたいと思ってますが、坂元さんがいやもうこれでっていうことだとちょっと困っちゃうんですけども。でも今、周りの声に応える形で、こう、ね、引き受けてって言われてるから、声掛け続けようかなって思ってます。

坂元
仕事1回ってこう、偶然でもあるじゃないですか。でも、2回仕事するっていうのは偶然じゃないですから、そんな、監督とお仕事できることが簡単なことだとは、もちろん僕は前提として、“脚本家”是枝裕和さんをとてもとても尊敬していて、見上げている存在ですので、その方が自分で書かずに僕に依頼するということが、とてもそんな簡単にあることとは思ってませんけれど。またね、もう一回やりましょうって言われることが、仕事をしていくうえで最も嬉しいことですから、2回目っていう必然があったらこんなに幸せなことはないですよね。

質問者
是枝さんに一つお伺いしたいんですけども。今回『怪物』が脚本賞で、トラン・アン・ユン監督が今回監督賞をとりましたけど、『幻の光』と『シクロ』でしたっけ、あの年以来の再会と共に受賞ということで、喜びを分かち合っていたとしたらご感想をお聞きしたいです。

監督
いやぁ、嬉しかった。デビュー作でベネチアに行ったときに、彼はカメラドールを撮った後の二作目でベネチアに来ていて、同じコンペで出会ったのがお互い、多分同い年だと思うんですけど、33歳の時で。そこから交流が始まって、彼が日本で『ノルウェイの森』を撮るときには現場に陣中見舞いに行ったり、僕がキャンペーンでパリに行ったときにはご飯を食べたりみたいな関係はずっと続いて来たんです。
ただなかなか同じタイミングで作品を発表するということもなく、映画祭で再会ということもなかったものですから、それが今回こういう形でご一緒できて、僕は上映にも参加させていただきましたし、主演がジュリエット・ビノシュさんだったので、なんか三人で会場でこう抱き合ったのが、なんだろう今回の中盤のクライマックスでした。最終日の授賞式のときには、ホテルで着替えて廊下に出たら、エレベーターを降りたトラン・アン・ユンがやはり着替えの途中でいて、あ、呼ばれたんだね!ってお互いにそこで分かって、またそこで一度抱き合いましたけども。なんか映画祭って、そういう形で長い時間かけてつくってきたことが報われるっていうのは、賞以上に、そういう瞬間というような気もしています。
とてもいい再会でした。

以上

2023.06.19
是枝監督に直接映画についての質問ができる 「ティーチインイベント」追加実施決定!!

この度、本編をご覧いただいた方がその場で直接是枝監督に質問ができる 「ティーチインイベント」を以下日程で追加実施する運びとなりました。
詳細は劇場サイトにてご確認をお願いいたします。
引き続き、追加で実施する場合は、こちらの公式サイトや公式SNSにて告知して参ります。

①6/24(土)
【劇場】(長野)岡谷スカラ座 スクリーン3
【日程】6月24日(土)14:40の回 上映終了後
【登壇】是枝監督(予定)
https://userweb.alles.or.jp/scalaza/

②6/26(月)
【劇場】(東京)TOHOシネマズ新宿 スクリーン4
【時間】6月26日(月)19:00の回 上映終了後
【登壇】是枝監督(予定)
https://hlo.tohotheater.jp/
net/schedule/076/TNPI2000J01.do

※予定は変更になる可能性がございます。その場合も公式サイトにて告知いたします。

2023.06.19
クィア・パルム賞授賞式での、審査員長ジョン・キャメロン・ミッチェルと是枝監督のスピーチ全文

2023/5/19

<授賞式前のアナウンス>
私たちは、審査員満場一致で是枝監督の『怪物』にクィア・パルム賞を授与することを決定しました。私たちは皆、本作に信じられないほど感動させられましたし(個人的には是枝監督のベストだと思っています)、この美しく構成された、「男の子」として期待される姿に適合できない2人の子供の物語は、クィアな人たち、そして型にはめられることに馴染めず、また馴染むことを拒否するすべての人たちにとって、力強い慰めになることでしょう。この映画はきっと命を救うでしょう。
だから私たちは、金曜日の夜に時間を見つけて、感謝に満ちたはみ出し者集団からこの賞を受け取ってくれることを願っています。あなたがたにキスを! ジョン

we contacted le pacte about the fact that my Queer Palme Jury unanimously voted to award our prize to Mr Kore-eda for Monster. We were all incredibly moved by the film (i think it’s his best) and the beautifully structured story of these two children who cannot conform to what is expected of them as boys will be a powerful comfort to queer people and anyone who is cannot and even refused to “fit in”. This film will save lives. So we hope he might find time on friday night to accept the award from a grateful group of misfits. Kisses to you and him!  John

 

<授賞式でのスピーチ>
私たちはクィア・パルムの審査員であり、あなたでもあります。私たちはホテル・ドゥ・キャップ(カンヌ近郊の高級ホテル)やリムジンに身を隠したりしません。(カトリーヌ・)ドヌーヴに会うことも、市長とディナーをすることもありません。私たちはパンクな審査員であり、誇り高く、許されない存在です。私たちは共に集まり、自分たちで楽しみを作りだすのです。10日間で12本の映画を観ました。そこから1本を選ぶのは大変な作業でしたが、ある作品が満場一致で選ばれました。
上映後、最後に劇場に残されたのは私たち5人でした。私たちは、それぞれの違いを取り去られ、剥き出しにされた気分でした。 私たちは一人の人間になったのです。素晴らしい映画とは、そうあるべきではないでしょうか?
私たちが見た映画は、形式と構造のマスタークラスでしたが、その時々のいわゆる偉大な映画監督とは違って、決して「あなたの監督である私を見よ。私はあなたより優れている」とは語り掛けてきませんでした。この監督は私たちの仲間です。この映画は、異質な者、馴染めない者の周りに亡霊のように群がる孤独、痛み、恐れを捉えています。そして、それ以上に重要なのは、誠実さ、優しさ、許しという奇跡的な行いによって、硬直した社会構造により課せられた苦しみから登場人物たちが解放されていくということです。
この嵐のような物語の中心にいるのは、他の男の子と同じようには振る舞えない、とても繊細だけれども信じられないほど強い2人の男の子です。彼らはお互いを見つけ、貴重な時間を過ごし、それは生きていくのに十分なことなのかもしれません。
適合することができず、また適合することを望まない私たちクィアな人間は、この映画に敬意を表します。なぜならこの映画の制作者は、アウトサイダーはシャーマンであり、アウトサイダーは社会の進化と生存に不可欠な秘密を知っていることを理解しているからです。そして、アウトサイダーが伝えることのできる最大の知識は「共感」です。
繊細な詩、深い思いやり、そして見事なテクニックで、登場人物の経験のあらゆる面に敬意を表した是枝裕和監督の『怪物』に、クィア・パルム賞を授与します。

We are the Queer Jury and we are you. We don’t hide in the Hotel du Cap or in Limousines. We don’t meet Deneuve, we don’t have dinner with the Mayor. We’re the punk jury, proud loud and not allowed. We party together and we make our own fun. Between the fun we saw 12 films in 10 days and picking just one was a hard task. But one film became our unanimous choice.
After it screened, the last people in the theater were the five of us. We felt stripped, stripped of our differences. We became a single person. Isn’t that what a great film should do?
The film we saw is a masterclass of form and structure but unlike the so-called great filmmakers of the moment, this filmmaker never says look at me, your director: I am better than you. This director is one of us. This film captured the loneliness, hurt and fear that cluster like ghosts around those who are different, those who don’t fit in. But more importantly, it showed us miraculous acts of honesty, kindness and forgiveness that allow its characters to begin to free themselves from the suffering imposed by a rigid social structure.
At the center of this cyclonic story are two very delicate but incredibly strong little boys who cannot and will not behave like other boys. They find each other, which for the precious time being, may be enough for them to live.
We as queer people who cannot and do not wish to conform, honor this film because its maker understands that the outsider is a shaman, the outsider possesses secret knowledge that is vital to the evolution and survival of our society. And the greatest knowledge the outsider can pass on is empathy.
For honoring every facet of your characters’ experiences with such delicate poetry, profound compassion and magnificent technique - we award the Queer Palme to Kore-eda Hirokazu for Monster.

 

<授賞式、是枝監督受賞スピーチ>
ありがとうございます。まずこの作品を満場一致で選んで頂いたジョン・キャメロン・ミッチェルさん、審査員の皆様、ありがとうございます。そしてこの喜びをここで分かち合って頂いている皆様にもお礼申し上げます。ありがとうございます。
(ジョン・キャメロン・ミッチェルさんが)お話してくださった映画紹介の中に、この映画を通して僕が描きたかったことが全て語られていて、ここで僕が何か言葉を重ねることは何も必要ないような気がしています。
僕がこの映画のプロットを手にしたのは4年半ほど前なのですが、その瞬間からこの主人公2人の少年が抱えている葛藤とどういう風に、それを演じる少年と同じように、作り手であるプロデューサー、監督、脚本家がその葛藤と向き合うべきなのか、どうしたら向き合えるのかを、とてもとても時間をかけてやってきました。
様々な偏見や心無い言葉によって、二人は自分の中に怪物を見てしまい、また生まれ変わりを望んでしまいますが、
映画が着地するゴールは、むしろ彼らを追い詰めてくる世界の側に怪物が居て、生まれ変わるべきなのは世界の側だと、その世界から二人が自分たちの幸せをつかんで飛び出すのだという、そういうゴールだけは見失わないように、この映画を作りました。
映画がすべてを語っていると思うので、監督がここでなにかをいうのは、おまけのような、いらない蛇足なのですが、本当に、この映画を愛していただいて感謝いたします。ありがとうございました。

 

★クィア・パルム賞
カンヌ国際映画祭の独立賞のひとつで、LGBTやクィアを扱った映画に与えられる賞。
2010年に創設され、第63回カンヌ国際映画祭から授与されています。公式部門とは別に独立した審査員が組織され、映画監督や俳優、ジャーナリストや大学教授、各国のクィア映画祭のプロデューサーなど、毎年5~8人が審査員となる。カンヌ国際映画祭のコンペティション部門、国際批評家週間、監督週間、ある視点部門に出品されたすべての作品が対象となり、日本映画としては初の受賞。

★ジョン・キャメロン・ミッチェル (映画監督、脚本家、俳優、プロデューサー)
1963年、アメリカ、テキサス州生まれ。
原作戯曲・主演を務めた舞台「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」が、1997年にオフ・ブロードウェイで初上演されるや大ブームを巻き起こしてロングランを記録、オビー賞、ドラマ・リーグ賞など数々の賞を受賞する。2001年、同舞台を脚本・監督・主演を務めて自ら映画化。批評家からの評価も高く、ゴールデン・グローブ賞、インディペンデント・スピリット賞にノミネートされ、サンダンス映画祭観客賞と監督賞をW受賞という快挙を成し遂げる。2014年、舞台はリバイバル作品としてブロードウェイに進出、トニー賞4部門に輝く。続く2015年には、ミッチェルが再び主演を飾り、トニー賞名誉賞を受賞。
その他の監督作品は、『ショートバス』(06)、インディペンデント・スピリット賞にノミネートされた、ニコール・キッドマン主演の『ラビット・ホール』(10)、『パーティで女の子に話しかけるには』(17)、TVシリーズ「ナース・ジャッキー5」(13)、Netflix「サンドマン」(22)など。アニメ「ユーリ!!! on ICE」のヴィクトルのモデルとなったことでも話題。

2023.06.19
カンヌ記者会見 全文

2023年5月18日

作品がうまれた経緯について
・是枝監督
お集まり頂きありがとうございます。昨晩のプレミア上映を終えまして、今スタッフと上映を噛み締めているところです。この作品に僕が参加したのは2018年の12月です。プロデューサーの川村元気さん、山田兼司さん、脚本家の坂元裕二さんが映画の開発をスタートさせていて、プロットが出来た段階で僕にお声がけをいただきました。その段階で完成形の三部構成というものは出来上がっていて、非常にチャレンジをしているプロットだなと感じました。実際にはそこに存在しない「怪物」というものを人が見てしまう、そういうプロセスを、観客を巻き込みながら進めていくストーリーテリングがとても面白くて、読んですぐに参加させて頂く決断をしました。

今回のテーマを選ぶにあたり、個人的きっかけがあったのか、普遍的な問題があると考えたのか
・坂元裕二さん
きっかけとしては、私が以前経験したことが一つあります。私が車を運転している時に起きたことです。赤信号で前のトラックが止まっていたので私も止まったんですね。その後、信号が青に変わったのに、前のトラックが動こうとしない。しばらく待っても前のトラックが動かないものですから、軽くプップッとクラクションを鳴らしたんです。それでも動かないので、どうしたんだろうと思っていると、そのトラックがやがて動き出して、立ち去ると横断歩道に車椅子の方がいらっしゃいました。私にはトラックで、車椅子の方が見えなかったのですが、私はクラクションを鳴らしてしまった。そのことをずっと後悔していて、私たちには生きている上で見えていないものがある、それを理解していく上ではどうすればいいのか、そんなことを物語にしたいと常々思っていました。

坂元さんとどのように脚本を作りあげていったのか。
・是枝監督
これまでに三度ほど、公式の場で対談をさせて頂いていて、その都度私の方から、自分の映画で自分で脚本を書かないなら、坂元さんにお願いしたいというラブコールはずっと送っていました。アウトプットした作品に関していうと、僕は主には映画をつくっていましたし、坂元さんはテレビのドラマを作られているので、違うフィールドのように見えたかもしれませんが、同時代に生きながら、ネグレクトの問題であったり、犯罪の加害者家族の問題だったり、疑似家族のモチーフだったり、時代とともに彼が注視しているトピックというものと、僕が自分の中で引っかかっていて題材として映画にしていたものというのは、時期は多少ずれるのですが、凄くリンクしていました。なので、同じ時代の空気を吸っている方だという認識がありました。そのずれながら発表していた作品が、今回、川村さんたちのおかげで一緒にこういう形でコラボレーションが成立した。僕たちだけでは多分成立しないので、そうやって繋げてくれる人がいたということに感謝しています。実は、川村さんから電話をいただいた時点で、私は読む前にこの仕事は受けようと思っていました。それほど、自分には書けない物語、描けない人間を丁寧に丁寧に紡いでいかれる脚本家だと思っていたので。自分が描いてきた映画の細部のディテールをどういう風にきちんと彼のストーリーテリングの中で活かしていくかということ。そのことだけを考えて現場に臨みました。非常に楽しいコラボレーションでした。

撮影はどのようにアプローチしたのか?
・是枝監督
撮影に関していうと、『万引き家族』でもご一緒した近藤龍人さんに入って頂いて、僕が何かを言うというよりも近藤さんの設計図が見事で、三部構成をどう描き分けるのか、三部に至った時に子供たちにどうカメラが寄り添うのか、そこから物語もカメラも大きく動き出すということが、僕が現場で見ていても非常に見事に展開されていました。本当に今回はおんぶに抱っこで、彼の素晴らしい撮影のおかげだと思っています。子供たちに関しては、通常は選んだ子供たちの個性に則って役を演じてもらうことが多いのですが、今回二人の少年たちが抱えている内的な葛藤も含めて、なかなか本人の個性をそのままというわけにも行かないと思っていました。オーディションで二人を選んで、実は(台本あり、なしの)どちらも試してみたんですけど、二人とも「台本があったほうがいい」と即答だったので、であるならば自分の存在の外側に、きちんと二人の少年の役作りというものをやってみようと思って、本読みをしたり、稽古をしたり、2人で遊んでもらったり、そういう時間を撮影の前になるべく長くとって、後は撮影現場ではサクラさん、瑛太さんがいてくれたので、僕は安心して任せていました。とても素晴らしい芝居というか、存在感を見せてくれたと思います。

安藤サクラさんは、『万引き家族』に続いての是枝さんとのタッグですね。
・安藤サクラさん
監督から『万引き家族』からそんなに時間も経たないうちにお声掛け頂けると思っていなかったので、お話を頂いた時はすごく嬉しかったです。ただ、もう一度監督の元に戻るには自分には早いのではないかという不安も抱えていました。でもその間にコロナ禍などもあり、少しゆとりを持って監督の現場に入ることになりました。監督は、そこにいる全てのスタッフ・キャストを尊重し、みんなが同じ目線で意見を交わし合い、作品に関わっていくことを心から楽しみながら、志を持って、ストレスなくいられる現場を作ってくださいます。だからこそ本番中は研ぎ澄まされた集中力で、新しいものが生まれていきますし、その監督の現場にそんなに時間を空けることなく戻れたことで、より一層監督が作る撮影現場、作品の現場の、改めて信頼関係に気付かされました。それが監督の特別な環境だなと思います。私は二度目だからこそ…、うまく言えない!(笑)でも楽しかったです!

公式上映を観ていかがでしたか?撮影を振り返っていかがですか?
・黒川想矢さん
昨日映画をもう一度観て思ったことがあるんですが、何も考えてなかったなと思っていて、ちょっとショックだったけど、改めて(作品を)観て、そういうことがあるんだなと(いうことが感じられて)面白かったです。現場では皆が本当に優しくて、撮影している時は…なんだか一つの家族みたいな感じで、とても楽しかったです。
・柊木陽太さん
作品を見てすごく自分の役に集中して演じることができていたなと思いました。
自然な感じで撮影に取り組むことができたのは監督のおかげかなと思います。撮影は凄く楽しくて、みなさんと一緒に頑張れたのがよかったです。ありがとうございます。

日本ではLGBTQ(など性的少数者)を扱った映画は少ないのでは?
・是枝監督
そうですね。確かにそんなに多く今までは作られてこなかったのかなと思います。だだ、この作品をどういうふうに捉えるのかも含めて、僕もプロットを読んだ時に、この少年たちが抱える感情というものを、ある種の紋切り型に捉えていくのではなく、成長過程に起きる、誰もが感じるであろう内的な葛藤、自分の中に自分でも捉えきれない、言葉にしにくい感情を抱えてしまったときの少年たちの話であると僕自身は捉えました。制作のプロセスで、そういった問題を抱えた子供たちのケアをされている専門家の方に相談して、レクチャーをしていただいたり、そのようなアプローチをプロデューサー陣と相談しながら出来る限りした上で撮影には挑みましたが、そのことに特化した作品というふうには自分では捉えていませんでした。誰の心の中にも芽生えるであろう、それが時には他人に暴力的に向いてしまう、もしくは自分の中で自分自身を食い潰してしまうような、そういう存在と出会ったときに、どういうふうにそれを乗り越えていこうとするのか、そういう物語だと捉えました。

二人の男の子が互いを好きになることについて
・黒川想矢さん
男の子が好きとか、好きになることができるとか、そういうのは多分違って、例えばりんごが好きだったら、「あ、そうなんだ」となる。「男の子が好き」っていうことは、僕はまだ聞いたことはないのですが、実際湊を演じてみて依里のことを本当に好きになれたし、どんな状況でもりんごが好きなように男の子も好きになれるんじゃないでしょうか。
・柊木陽太さん
男の子が好き、という言葉がない。男の子が好きでもおかしくないし、自然なことだと捉えることできたらいいかなと思います。
・是枝監督
難しい質問に答えてくれてありがとうございました。

音に関して。
・是枝監督
音楽室の音に関しては、僕よりも坂元裕二さんが答えた方が良いと思いますが、一つだけ言うと、作品を編集したものを坂本龍一さんに送って観ていただいた時に「音楽室が素晴らしい。音が3回鳴るのが素晴らしいので、自分の音楽がこれを邪魔しないようにしたい」と言っていただきました。あの音楽室のシーンに描かれる音のあり方が本を読んだ時にも、作品を見た時にも、非常に理想的な形で映画の中で音が響くという瞬間だったと自分でも捉えています。その素晴らしいシーンを書いたのは、隣にいる坂元さんです。
・坂元裕二さん
私は脚本家なのですが、常に言葉というものに疑いを持ちながら物語を紡いでいます。この物語の冒頭から、常に人と人は対話をしながら、そこに誤解が生まれ、争いが生まれ、分断が生まれています。しかし、同時に言葉には、愛情を伝える力がある。その矛盾した存在である言葉と、私たちはどのように付き合っていけばいいのか。その一つの表れとして、言葉ではなく、あそこで一つの音として、3者の中に届いた。そこに言葉では繋がり得なかった彼らが何かを感じたのではないか、そんな思いを描きたかったんです。

永山さんは脚本に対してどのようなアプローチを行いましたか?
・永山瑛太さん
初めまして、永山瑛太です。気を遣って質問をしていただいてありがとうございます。(会場笑い)ストーリーの中で台本上は時間軸が跳んでいくので、シナリオとは別で、自分のシナリオをノートに書いて、一貫性を持って演じただけでした。現場でどういう見え方になるのかというのは是枝監督にもちろんお任せして、僕自身は保利という役をシンプルに受け止め、子供たちだったり、学校、先生に対する憤りを感じた安藤サクラさん演じる母親のお芝居をひとつひとつ、頭で思考していくことよりも、肌で感じていくことを大事にして現場に挑みました。

永山さんは、どのように役作りしたか?脚本を読んでのこの映画への解釈は?
・永山瑛太さん
自分も子供がいまして、一緒に生活していても、毎日子供たちは成長して、違った言葉や動きをしています。それを、僕は父親として受け止めていきたいという気持ちで家庭の中にいるのですが、それと同じ感覚で、今回は教師役ということで、特に想矢くん、陽太くんを受け入れるときに、僕としては突き放すという意味ではなく、ほうっておくというか、放任するといいますか、それでもやっぱりすべての生徒に対して、意識を持って、全員に同じ愛情を注ぐことはできないなと今回改めて感じたんですけど、それでもやっぱりみんなのことは毎日撮影中に気になりました。
今から映画を観てくださる方もこのタイトルの「怪物」、そして日本でも「怪物、だれだ?」という予告が流れていて、周りの人からもどんな映画なの?と聞かれるのですが、僕の中でもいまだにわからない、現場中も結局誰が怪物だったのか、それは自分の内側に潜んでいるものなのか、外側にあるものなのか、一人一人観ていただく方の正解があると思いますし、僕はいろんな観た方の意見を聞いて、とてもそういった意味で捉え方の余白というか、自由な捉え方をしていい素晴らしい映画なんだなというのを改めて感じています。

作品から「生まれ変わる」というテーマも感じましたが
・是枝監督
二人の少年の中で繰り返されているのは、自分が生まれてきたこと――特に湊くんは「なんで生まれてきたのか」っていう投げかけを最後にしますけれど――それをちゃんと肯定できないが故に、生まれ変わって別のものになりたい。それは二人がする「怪物だーれだ」のゲームが非常に象徴的に表していると思います。それと同時にこの物語が、世界がある断絶だったり、不寛容に満ちてしまった時に世界が生まれ変われるのか?ということを、この少年たちが問うているのではないかと思いました。であるが故にある種のカタストロフィーを期待してしまう、そのことによって自分が生まれ変わるのではないかということをどこかで信じたいと思う気持ちがあるのが、脚本を読んでいても、二人の芝居を見ていても、とても切なく切実なものとして感じました。二人が役ではなく、本当に世界の成り立ちや生まれ変わりを信じているのかどうかは話し合ったことはありませんが、湊と依里にとってはそれが一つの救いだったのではないかと思っていますし、最終的にそれを二人が選択しなかった、そうではない未来に辿り着いた、そういう物語になれば良いなと思い演出しました。

是枝監督の前作『ベイビー・ブローカー』も主人公がクリーニング屋さん、その前の『万引き家族』も安藤サクラさんの役がクリーニング屋さん。
今回は坂元さんが書かれた脚本にも関わらず、また安藤さんはクリーニング屋さんで働いている。これは何かのメタファーか?偶然なのか?
・坂元裕二さん
前世で一緒にクリーニング屋さんで働いていたのかもしれません(笑)。自分でも理由がみつからないのですが、僕はクリーニング屋さんが好きで、憧れを持っています。とてもテクニックのいる仕事で、アイロンをかけてシワを伸ばす姿、あの様子に「美しいな」といつも思っています。
・是枝監督
僕も好きなんですよね(笑)今、なかなか「職業」がまとう匂いとか色っていうものがどんどん消えていっている中で、クリーニング屋さんの仕事って、「水」の蒸気の音や、「火」ではないですが、「熱」があるじゃないですか。今回の物語は、「火事」にはじまって、「湖」があって、「台風」がきて。ということを考えると、その両方をはらんだ場所としての「クリーニング屋さん」というのがある。これは保利先生が飼っている「金魚」もそうなのですが、「水」がどういう風に物語に点在しているか、というのは、多分坂元さんも意識して書かれていたんだろうな、と自分では捉えながら演出しました。
シンプルに言っちゃうと、好きですね、クリーニング屋。同じ理由だけど(笑)

坂元さんは是枝監督と初タッグですが、監督のことをどんな風に思っていましたか?
・坂元裕二さん
私は30年ほど前に観光でカンヌ映画祭に来たことがあります。そのときに、いつかこういった場で作品を発表することができたらどんなに幸せだろうと思いながら、あっという間に30年が経ちました。その間、是枝監督が数々の作品をカンヌ国際映画祭で発表しているのをみながら、憧れと少しのヤキモチをもって見上げていました。自分になくて是枝監督にあるものは、強い社会的な責任感だったり、他者に対する思い遣りであったり。この3日間一緒にカンヌにいるだけでも常に感じるんです。私にはそれが少し足りない。それをこの映画に少し足しました。それが今回ご一緒した利点、長所かなと思います。

2023.06.08
是枝監督に直接映画についての質問ができる 「ティーチインイベント」実施決定!!

この度、本編をご覧いただいた方がその場で直接是枝監督に質問ができる 「ティーチインイベント」を実施する運びとなりました。
現在は、以下①②の2箇所での実施が決まっております。
是非、以下劇場サイトをご確認の上、ご参加ください。
上映後に監督が登壇し、本編に関する皆様からのご質問にお答えする流れとなります。
さらに、追加実施も調整中です。引き続き、情報更新をお待ちください。
次回更新は6月19日(月)21:00を予定しています。
(予定は変更となる場合がございます。)

①6/14(水)
【劇場】TOHOシネマズ池袋 SC6
【日程】6月14日(水)19:00の回 上映終了後
【登壇】是枝監督(予定)
https://www.tohotheater.jp/
theater/084/info/event/kaibutsu-teachin.html

②6/16(金)
【劇場】T・ジョイ横浜 SC6
【時間】6月16日(金)19:00の回 上映終了後
【登壇】是枝監督(予定)
https://tjoy.jp/t-joy_yokohama/
theater_news/detail/22017

2023.06.06
初日舞台挨拶実施のご報告

公開初日を迎えた6月2日(金)に、都内劇場にて、
安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、角田晃広、中村獅童、
さらに脚本の坂元裕二、是枝裕和監督が登壇しての舞台挨拶が行われた。

第76回カンヌ国際映画祭で脚本賞受賞を果たした坂元は、30年前にプライベートで同映画祭を訪れたことを回想しながら
「今回是枝監督に連れて行ってもらってレッドカーペットを歩くことができた。30年前の忘れていた夢を叶えることができて感無量だった。
想像以上の歓声で迎えていただき、胸がいっぱいになりました」と嬉しい報告をしていた。
『万引き家族』で同映画祭を訪れた際は弾丸ツアー状態だったという安藤だが、今回は「授賞式にも参加できて映画祭全体を感じることができた。
授賞式の素晴らしい瞬間あの場所にいさせてもらうのは物凄いことだと実感。素晴らしい経験で大興奮でした」と映画祭を満喫。
永山はレッドカーペットの思い出として「コレエダ!サクラ!という声掛けの中で、”コレーエダー!…”、”…(コレー)エイタ!”と言われた気がして
振り向いたけれど全然こっちを見てなくてとても恥ずかしい思いをしました」と赤面エピソードを紹介。さらにレッドカーペットの最後に是枝監督から
”振り向いて手を振って”とアドバイスされたという記憶を振り返るも「坂元さんと両手で手を振ったんですけど、そこを捉えた写真を見たら、
二人だけ捕らわれた宇宙人みたいだった」と慣れない状況を思い出して笑わせた。坂元も「歓声があまりにもすごくて一人で、一つの手で、
返しきれていない気がして、両手を上げてしまったら宇宙人でした」(笑)と壮観な光景のなかで起きたお茶目なエピソードを語った。
また、黒川も初カンヌ滞在を振り返り「映画上映翌日に街を散歩していたら、”Congratulation!”や”I love your film!”と色々な人から声をかけられて凄く嬉しかった」、
柊木はレッドカーペット闊歩時に「記者の方たちから”This, way, HINATA!”って声をかけられて嬉しかった。でも外国の方はヒの発音が難しいそうなので、
サニーに名前を変えようと思う」とまさかの改名を提案。
一方、『首』の上映でカンヌ入りしていた中村は「現地で偶然是枝監督とお会いして嬉しかった。しばらく歩いていたら是枝監督が外国の方々に囲まれてサインをしていて、
凄いなと思った。そしてアフターパーティーでは北野監督と是枝監督の2ショットを遠目で見て凄い2ショットだなと感動しました」と貴重な一コマを証言していた。
そんな中、カンヌ不参加かつ『怪物』の舞台挨拶初登壇の角田は「ニュースでは見ていましたよ」といい、W快挙については「でしょうね!と思いました。
完成した映画を観たときに黒川君と柊木君も凄いから『ああ、カンヌで評価されるでしょうよ』と思っていたので案の定でした!」と想定内だったと鼻を高くしていた。
初の是枝組について角田は「空気は穏やかで是枝監督の口調も丁寧で優しい」と満足そうに振り返るも、安藤から「本番中に笑かしに来た」と暴露され、
中村からは「ふざけているんですか!?真面目にやってください!」といじられる始末。それでも是枝監督からは「間合いの取り方や画面の中でのポジション取りが的確。
タイミングよくフレームに入ってくるのは天性のもの」と高評価を受けて、角田は「ありがとうございます!」と深々と頭を下げていた。
舞台挨拶後半には脚本賞で贈呈されたカンヌのトロフィーがステージに登場。キャスト陣には初お披露目となり、坂元から実物を見せられた黒川は「……」と感動のあまり絶句。
柊木は「す、すごく、き、綺麗です」と目を輝かせていた。
最後に坂元は「皆さんに観ていただける日を待ち続けていました。心を込めて作りましたのでどうぞよろしくお願いいたします」と晴れやかな表情で、
さらに是枝監督は「スタッフ・キャストの力を結集して作り上げた作品です。多くの方々に届くといいなと思います。楽しんでください」と挨拶し、舞台挨拶を締めくくった。

2023.05.31
カンヌ国際映画祭 脚本賞受賞!凱旋記者会見実施のご報告

第76回カンヌ国際映画祭で脚本賞、クィア・パルム賞の二冠に輝いた
『怪物』の是枝裕和監督が5月29日の夜、羽田空港に到着。
ひと足はやく帰国していた脚本家の坂元裕二と共に空港内で凱旋記者会見に臨んだ。

会見冒頭では、監督より坂元にカンヌより持ち帰った脚本賞のトロフィーが直接手渡され、
その後の質疑応答では、2人から改めて受賞の喜びやカンヌ国際映画祭について、
作品づくりについての詳細が語られた。

2023.05.29
第76回カンヌ国際映画祭 脚本賞(坂元裕二)受賞!


第76回カンヌ国際映画祭にて、現地時間5月27日(土)20時半(日本時間/28日(日)未明)より開催された
授賞式におきまして、『怪物』が脚本賞を受賞!!
脚本を手掛けた坂元裕二の代わりに檀上に上がった是枝監督は
「ありがとうございます。一足早く日本に帰った坂元裕二さんに、すぐ報告します。僕がこの脚本の基になったプロットを頂いたのが2018年の12月なので、もう4年半前になります。そこに描かれた2人の少年たちの姿をどのように映像にするか、少年2人を受け入れない世界にいる大人の1人として、自分自身が少年の目に見返される、そういう存在でしかこの作品に関わる誠実なスタンスというのを見つけられませんでした。なので、頂いた脚本の1ページ目に、それだけは僕の言葉なんですけども、『世界は、生まれ変われるか』という1行を書きました。常に、自分にそのことを問いながら、この作品に関わりました。一緒に脚本を開発した川村さん、山田さん、作品に関わっていただいたスタッフ、キャストの皆さん、みんなの力でこの賞を頂けたと思っております。ありがとうございました」とスピーチ。
授賞式後には、坂元から「夢かと思いました。この脚本はたった一人の孤独な人のために書きました。それが評価されて感無量です」と喜びの声が寄せられた。
カンヌ国際映画祭において日本映画の脚本賞の受賞は、2021年の第74回カンヌ国際映画祭にて濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が受賞して以来2年振り、是枝監督作品のカンヌ映画祭でのコンペ部門での受賞は2022年の『ベイビー・ブローカー』に続き2年連続となる。
脚本賞受賞に先だって、本作は独立部門「クィア・パルム賞」でも受賞を果たしている。

2023.05.24
坂元裕二が紡いだセリフを完全収録! 映画『怪物』の“決定稿”を掲載したシナリオブックが公開日より発売!

今回発売となるシナリオブックでは、本作の“決定稿”を完全収録。
台本は撮影現場での演出や編集により一部変更となるが、
完成した映画からはこぼれ落ちた会話も盛り込まれている「決定稿」は、いわば『怪物』のルーツと言える。
映画公開日6月2日(金)より、全国の書店やAmazonなどのほか、TOHOシネマズ全上映劇場を含む82館の映画館(※5月24日現在)にて、ご購入いただけます。
映画を観た興奮と共に持ち帰り、坂元裕二脚本の妙ともいえるセリフまわし、心を掴まれる登場人物の描写などを映画鑑賞後に振り返ってみてください。

書籍名:怪物
著者:坂元裕二
発売日:2023年6月2日(金)
定価:¥1,600(税込¥1,760)
仕様:B6(128×182mm)/176P
発行:株式会社ムービーウォーカー
発売:株式会社KADOKAWA

お近くの書店や劇場での取り扱いがない場合は、以下でもお買い求めいただけます。
・Amazon https://www.amazon.co.jp/
dp/4040006585/

・カドカワストア https://store.kadokawa.co.jp/shop/
g/g302302005760/

・MOVIE WALKER STORE https://goods.moviewalker.jp/

2023.05.24
初日舞台挨拶決定!

この度、6月2日(金)に公開初日を記念して舞台挨拶を実施する運びとなりました。
是非、ご参加下さい。

詳細はこちら
https://info.toho.co.jp/kaibutsu_snc/

2023.05.22
第76回 カンヌ国際映画祭 コンペティション部門正式出品  公式上映実施のご報告

フランス時間5月17日(水)に、カンヌ国際映画祭で『怪物』のワールドプレミアとなる公式上映が行われた。
日本からは、是枝裕和監督に、脚本を手掛けた坂元裕二、主演の安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太がカンヌの地に降り立ち、華々しくレッドカーペットに登場!熱狂的なファンの歓声に迎え入れられた。是枝監督は、サインや写真撮影にも応じるなど、ファンサービスもたっぷり。全員が一列に並び、時に手を繋いだり、談笑しながら、和やかな雰囲気で各国メディアの撮影にも応じつつ、レッドカーペットを進んで、上映会場となるGRAND THÉÂTRE LUMIÈREへと入った。

会場では拍手で迎え入れられ、客席に向かっておじぎをしたのち、着席し上映開始。
エンドロールが始まると、会場からは再び拍手が沸き起こり、坂本龍一さんへの追悼文が流れた際には、さらに割れんばかりの大きな拍手や歓声に会場が包まれた。そのままスタンディングオベーションは9分半に渡って続き、監督や坂元、安藤、永山らは感激しながら手を振り、会場を見渡しながら笑顔で称賛にこたえ、喜びを分かち合った。

カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選出された計21作品の中から、最高賞となるパルム・ドールをはじめ各賞が発表となるのは、フランス時間の5月27日(土)の授賞式を予定。
引き続き、ご注目下さい。

2023.05.11
完成披露試写会イベント実施のご報告

本作の完成披露試写会が、5月8日(月)TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われ、安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、高畑充希、中村獅童、脚本家の坂元裕二、そして是枝裕和監督が参加しました。

チーム『怪物』が久々に勢ぞろいしての舞台挨拶に、安藤は冒頭から「(MCからの呼び込みの)『怪物の仲間たちに~』という言葉でグッときて、2人(黒川・柊木)をみたら泣きそうになりました」とコメント。今回、脚本家の坂元裕二と初タッグを組んだ是枝は「以前から脚本を自分で書かないのであれば坂元さんにお願いをしたいと思っていて、ラブコールを送っていました。そして川村元気プロデューサーからプロットを開発しているとの話を聞いて、内容を読む前から引き受けることを決めていました」と念願の組み合わせだったことを告白。その坂元は「是枝監督は尊敬する脚本家でもあるので、そんな方に自分が書いていいのかと…受け入れてくれたことに正直驚きました」とコメントした。
そんな坂元と是枝について、坂元作品には欠かせない存在で、是枝作品には初出演となった永山は「坂元さんとは、二十代の前半からいろいろお付き合いさせてもらい、数々の素晴らしい脚本を書いてもらいました。僕が俳優を続けている限り、一生お付き合いしたいと思っています。是枝さんは、僕が俳優をはじめてから、自分なりにこの人が日本映画を変えていくのだろうと感じて、全作品を拝見してきました。そのお二人の座組に自分が入れたことを幸せに感じています」と出演にあたっての喜びをコメント。一方で安藤はオファーを受けて「ものすごく嬉しい反面、監督の現場にすぐ戻ること、坂元さんの脚本であることは、私にはものすごく敷居が高いように思えて、かなり長いこと怖じ気づいてなかなか覚悟を決められませんでした。でも、現場に参加して、完成した作品をスクリーンで観た時に、その時の自分を”一発殴りたい”気持ちになりました。自分の想像をはるかに超える作品に参加できたこと本当に嬉しく思っています。本作に参加した一員というよりは、作品を観た一人として、本作に感動して涙が止まりませんでした」とコメントした。
オーディションで抜擢された黒川と柊木について、是枝は「黒川君は横顔のラインがいい。柊木君は会った瞬間に“この子だな”と思った」と起用理由を明かし、坂元も「お二人とも素晴らしいお芝居をされていて役に合っている。この物語は僕自身の子供の頃の体験を基にしていて、柊木君は転校していった僕の友達にとても似ている」と自らの体験を投影したエピソードを明かした。
撮影中のエピソードについてお芝居に悩んだりすることはなかったかという質問に、黒川は「カットがかかっても、なかなか湊くんから自分自身に戻ることができなくて、苦しくなったり、悲しくなったりすることがありました。でも、とても楽しかったです」と語り、柊木は「(お芝居に悩むことは)特に悩むことはなかったです」とコメントし、「撮影期間中に安藤さんや黒川くんたちと花火を見に行って、すごくキレイで楽しかったです」と思い出を語った。
 是枝作品への参加が念願だった高畑は「撮影前からワクワクしてインするのが楽しみだったけれど、私の初日が他の皆さんのクランクインとも被ってしまって、急に緊張。永山さんとも初めてだったので緊張感マックスでした。でも是枝さんが温かみを持ってくださっている気がして、じんわり温かい気持ちであっという間に終わってしまいました」と語り、是枝監督ファンだいう中村は過去 「“いつか僕を使ってください!”と言いに行った」と監督に直談判していたことを明かし「それからかなり時間が経ったけど、2020年のコロナ禍の時に家族に“死ぬまでには是枝監督の作品に出られたらいいな”と話していた数か月後にこのお話を頂いた。想いは叶うんだなと思った」と出演への喜びを噛みしめていた。
 さらに、本作の音楽を坂本龍一が手掛けたことについて是枝は「撮影場所が諏訪に決まって風景が明解になったときに、夜の湖に坂本さんのピアノが響けば良いなと思った。撮影中も編集しながら坂本さんの既存の楽曲を映像に仮で当てていて、撮影後に仮当てした作品と共に手紙を書いて坂本さんにオファーしました」と経緯を説明。坂本からは「全部を引き受ける体力は残っていないけれど、音楽のイメージが何曲か湧いたので形にしてみます。気に入ったら使ってください」との返信があったという。「坂本さんが亡くなられたのは本当に残念だけれど、最後にこのような形でご一緒できたのは自分にとっても誇り。この作品に坂本さんの音楽は必要だったと誰よりも自分が感じています」と感慨深げに語った上で「色々と特別なものが映った映画になったと思います。スタッフが完成試写を観てすべての人がいい仕事をしていると言ってくれたのが嬉しかった。いいチームで本当に素晴らしい映画が完成したと確信しています」と自信を持って『怪物』を送り出した。

関連リンク
https://www.toho.co.jp/movie/news/kaibutsu-movie_20230508

2023.04.13
第76回カンヌ国際映画祭【コンペティション部門】 正式出品決定!
本予告も解禁!!

この度、『怪物』がフランス時間5月16日(火)~27日(土)開催予定の
第76回カンヌ国際映画祭の【コンペティション部門】に見事選出され、正式出品が決定致しました。

出品決定にあたり、是枝監督、主演の安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太よりコメントが届いています。
さらに、ここで本予告映像も解禁となりました!是非、こちらもチェックしてください。

 

▼是枝裕和監督 コメント▼
是枝は韓国映画ではありますが昨年も参加していて流石に2年続けてはハードルが高いですよとスタッフには話していました。にもかかわらず、公開日が映画祭直後に決定してしまったので少々焦りました。ですから、コンペに決まったと連絡を頂いた時には嬉しいというよりはホッとしたという気持ちのほうが強かったです。映画はスタッフとキャストの一期一会の短い出会いと別れの間に生命を授かります。その産声を初めて観客の皆さんに聴いていただく場所としてカンヌ映画祭は、やはり、最高の舞台だと思っています。またあの場所に連れて行ってくれる『怪物』と、その関係者の皆様に心から感謝します。今回は残念ながら参加が叶わないスタッフ、キャストの皆さんの思いも、出来るだけ沢山胸に抱いてあの特別な場所を一緒に歩きたいと思います。

▼安藤サクラ コメント▼
是枝監督カンヌ国際映画祭出品おめでとうございます。こんなにも早くあの場所に戻れるとは思ってもいませんでした。また是枝組の一員としてみなさんと映画祭に参加できること、とてもとても嬉しいです。カンヌは幼い頃から憧れていた遠い遠い遠い憧れの地。なので今はまだ気持ちがふわふわしていて、少しお腹が痛いくらいです。でも、行けるとなれば目一杯楽しみます!いってきます!!

▼永山瑛太 コメント▼
是枝監督、坂元裕二さん、坂本龍一さん、素晴らしいキャスト、スタッフの皆さんの座組に、私が携われた事、改めて幸せを噛み締めてます。感謝と希望を忘れず、日々、役者として邁進していきたいと思います。

▼黒川想矢 コメント▼
僕は最初、どんな演技をしようとか、上手に演じたい!とか自分の事ばかり考えていました。是枝監督の演出からは、どうやって芝居をするのかではなく、ただ湊として動けばいいということが感じ取られ、腑に落ちた気がしました。また、僕が表現に悩んでいる時に瑛太さんから「俳優は監督の脳みそにあるものを表現するもの」というアドバイスをいただき、俳優としての心構えが一変しました。途中、湊が抜けない…というような感覚になり苦しい時もありましたが、現場の皆さんが温かく包み込んでくださって、なんとか撮影を乗り越える事ができました。是枝監督とみんなで作り上げた作品を、カンヌ国際映画祭で世界中の方々に観てもらえることが、とても楽しみです。

▼柊木陽太 コメント▼
僕が初めて出演した映画「怪物」がカンヌ国際映画祭にノミネートされて、とても嬉しいです。撮影はとても楽しかったです。大変なこともありましたが皆さんのおかげで最後までやり切ることができました。そして、素晴らしい共演者のみなさんや、スタッフさん、そしてこの作品に関わらさせていただいたことにとても感謝しています。初めて海外に行くのですが、是枝監督や共演者のみなさんと一緒に行くのが本当に楽しみです!そして世界中の人に作品を観てもらえると思うと今からワクワクしています。

2023.04.07
THEATERページを立ち上げました。

『怪物』の公開劇場はこちらをご覧ください。

https://theater.toho.co.jp/toho_theaterlist/
kaibutsu-movie.html#region2

公開は6月2日(金)からとなります。

2023.04.04
坂本龍一が音楽を担当した『怪物』のサウンドトラックが5月31日(水)に発売決定!

坂本龍一が音楽を担当した映画『怪物』のサウンドトラックの発売が5月31日(水)に決定し、ジャケットアートワークが公開されました。
是枝監督からのオファーで坂本龍一が音楽を担当することになった本作。
今年発売された坂本龍一の6年ぶりのオリジナルアルバム『12』から「20220207」、「20220302」のほか既存曲と、映画への書き下ろし2曲が収録されている。

サウンドトラック『怪物』
‘MONSTER’ directed by Kore-eda Hirokazu MOTION PICTURE SOUNDTRACK
アーティスト:坂本龍一
発売日:2023年5月31日(水)

書き下ろし2曲を含む全7曲収録。
アナログ盤 / CD ブックレット:是枝裕和監督コメント掲載

<発売形態>
アナログ盤 / CD
DL ※バンドル配信のみ
サブスク ※Aquaは除く6曲で配信

<収録曲>
1. 20220207
2. Monster 1
3. hwit
4. Monster 2
5. 20220302
6. hibari
7. Aqua

ご予約はこちら
https://commmons.lnk.to/MONSTER

2023.04.03
ムビチケ前売券絶賛発売中!

本作のムビチケ前売券が絶賛発売中です。是非、お買い求め下さい!

ムビチケカード

※劇場窓口販売はございません

 

ムビチケオンライン券

※紙券はございません

2023.04.03
映画公開に先駆けて『怪物』ノベライズ発売決定!

〝怪物〟とは一体だれなのか。その正体とは……!?

日本を代表するストーリーテラー・坂元裕二(脚本/『花束みたいな恋をした』)と映像作家・是枝裕和(監督/『万引き家族』)が初めてタッグを組んで描いた圧巻の人間ドラマ。

6月2日(金)の劇場公開に先駆けて、完全ノベライズが登場!坂元×是枝の“物語”を存分に小説で味わうことができる一冊です。

さらに、初回限定発売の『特装版 怪物 NFTデジタル特典付き』も登場!こちらは小説に加えて、是枝監督の画コンテ1点をデジタル特典で味わえるとともに、映画の世界観がうかがえる風景写真で構成された、デジタルミニ写真集がセットで付いています。

全3セットから1セットがランダム封入された特別限定版です。

全国書店等で予約受付中!

 

宝島社文庫 怪物
定 価:770円(税込)
発売日:2023年4月24日(月)※一部地域により異なる場合がございます
著者名: 脚本 坂元裕二 監督 是枝裕和 著 佐野晶
出版社:宝島社

 

宝島社文庫 特装版 怪物 NFTデジタル特典付き
定 価:1,375円(税込)
発売日:2023年4月24日(月)※一部地域により異なる場合がございます
著者名: 脚本 坂元裕二 監督 是枝裕和 著 佐野晶
出版社:宝島社

<デジタル特典内容>
是枝監督の画コンテ1点と、
映画の世界観が伺える風景写真で構成されたデジタルミニ写真集
(それぞれ3種のうち、1種ずつをランダムで封入)

※「怪物」の結末は映画公開まで〝秘匿″でお願いします。

2023.03.31ポスター新ビジュアル解禁!

泥だらけの2人の少年と3人の大人たちがこちらに送るまっすぐな視線と
『怪物』というタイトルの間に記された「だーれだ」というコピー。
いったい「怪物」とは誰なのか?
意味深で謎がますます深まるこちらのビジュアルを使用したポスターは、
3月31日(金)より全国の映画館(※一部を除く)にて順次掲出予定です。

 

2023.01.05 

本作の音楽が、坂本龍一に決定!
さらに、安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、
高畑充希、角田晃広、中村獅童、田中裕子ほか
超豪華実力派キャストの出演情報も解禁!!
是枝監督からのコメントも到着しています。

 

音楽:坂本龍一

〈坂本さん Comment〉
「怪物」
怪物と言われると誰が怪物なんだと探し回ってしまうんだが、それはうまくいかない。誰が怪物かというのはとても難しい問いで、その難しい問いをこの映画は投げかけている。さて、その難解なテーマの映画にどんな音楽をつければいいのだろう。救いは子供たちの生の気持ち。それに導かれて指がピアノの上を動いた。正解はない。
今回残念ながらスコア全体をお引き受けする体力はなかった。監督からのたってのご所望でピアノ曲2曲を提出した。新しいアルバム「12」からの曲や、古い曲を使って全体を構成してくださった。

〈是枝監督 Comment〉
長年の念願が叶ってようやくコラボレーションが実現しました。撮影中も編集中もホテルの部屋で坂本さんの音楽をかけながら作業をしていたので正直お引き受け頂けなかったら途方に暮れていたと思います。歓喜、しています。


出演:安藤サクラ 永山瑛太 黒川想矢 柊木陽太
高畑充希 角田晃広 中村獅童
田中裕子

〈是枝監督 Comment〉
安藤サクラさん、永山瑛太さん、田中裕子さん、こんなキャスティングが実現したらいいですね、と坂元裕二さんとワクワクしながらお話した通りのキャストが出演してくれました。身震いしました。
安藤サクラさんは『万引き家族』に続きまして、2作目のお付き合いでしたが、前回とはまた全く違う凄みのある役を見事に体現していただきました。
永山瑛太さんは初めての出演でしたが坂元裕二さんが瑛太さんに当て書きした役でもあり、もう彼以外ではあり得ない妙な、しかし、愛すべき人物に仕上がっております。
田中裕子さんは、実は学生の頃に一度だけお会いしたことがあり、映画はもちろんですが、久世光彦さんと組まれたドラマの大ファンだったのでプレッシャーでしたが、至福の時間でした。怪物でした。
主役の2人の男の子はオーディションを重ねて選ばせて頂きました。黒川さん、柊木さん、ふたりとも抜群でした。顔立ちも個性も全く違うのですが、撮影中見事な化学変化を作品にもたらしてくれたと思います。将来が楽しみです。
高畑さん、獅童さんは以前ご挨拶をさせていただいてまして、いつか、とお約束していたのでこの作品で実現して良かったです。
角田さんは、元々ファンでしたが「大豆田」でお芝居を拝見して、更にファンになり、お願いしました。登場しただけでちょっと微笑んでしまうんですが、素晴らしい存在感でした。

2022.11.18 

監督・編集:是枝裕和

基本的には自分の映画は自分で脚本を書いて来ましたが、誰か脚本家と組むなら誰が?という質問には必ず
「坂元裕二!」と即答してきました。それは、そんなことは自分のキャリアには起こらないだろうとどこかで諦めていたからです、きっと。夢が叶ってしまいました。こんなことを言うと坂元裕二ファンには怒られるかも知れませんが、加害者遺族、赤ちゃんポスト、子供達の冒険旅行、疑似家族と、同じモチーフに関心を持たれている方だなと親近感を抱いておりました。もちろん作品になるタイミングは前後していますし、扱い方は全く違うのですが、それでも彼と自分は同じ時代を生き同じ空気を吸って吐いているんだと感じていました。そして、何より、その題材をとてつもなく面白いものに着地させる手腕には、羨望と畏敬の念と両方を抱いておりました。今回は、縁あって共同作業が実現してしまいました。監督としてこの素晴らしい脚本とちゃんと勝負しなくてはいけないと、ファンであることは隠したつもりだったのですが、恥ずかしながら、バレバレだったと思います。
まだタイトル以外は明かせませんが、誰よりもこの作品の完成が待ち遠しいです。


脚本:坂元裕二

是枝作品の脚本を是枝さん以外の者が書くと聞くと、観客の方はどのように思われるのでしょう。わたしは、「え、そんなことはありえるの? 無理に決まってるでしょ」派です。是枝監督は世界一の脚本家でもありますから。しかも撮影現場で俳優やスタッフと対話しながら脚本を作っていくタイプの監督です。そんな仕事を引き受けた脚本家がいたら、身の程知らずだなと苦笑いするはずです。まったくもって愚か者ですね。
是枝さんは学年もクラスも違っていて話したこともないけど、時々廊下で目が合ったり、持ってるものを見て真似して手に入れたくなる、憧れの存在のような人でした。あんな人になりたかったな、なれなかったな。いいな、羨ましいな。そんな嫉妬めいた思いの対象だった是枝さんが、『海よりもまだ深く』という映画の作中やインタビューで「こんな自分になりたいわけじゃなかった」と語られていて、驚きました。是枝さんの秘密をちょっと知ったような気になりました。誰だって多かれ少なかれ自分に納得いかなくて、こんなつもりじゃなかったと思いながら生きていて、どこかで折り合いをつけようとするけど、良いこともあれば悪いこともある。自分のことがあまり好きじゃなかったりする。廊下の向こうにいる是枝さんのことを見かけるたびに、「僕もそうなんだよね」と心の中で勝手に話しかけてみたりする、そんな存在に変わって、この映画もそんな風にして作っていきました。自分を好きになれない誰かへのエールになるといいなと思っています。