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『華氏119』

好評デジタル配信中

INTRODUCTION

着々とアメリカを、世界を変えていく大統領。この男、ひょっとして“デキるヤツ”? 『ボウリング・フォー・コロンバイン』『華氏911』の“アポなし突撃男”がトランプのからくり、全部見せます!

2016年11月9日、アメリカはもちろん世界中の人々が、何かの間違いか、大掛かりなジョークかと驚いた。ドナルド・トランプが、アメリカ大統領選の勝利を宣言したのだ。当選してからもトランプは、連日のツイッター炎上に、虚言暴言やスキャンダルをまき散らし、政権はカオス状態に。だがその一方で、着々と公約を果たしてアメリカを変えると共に、国際政治にも精力的に取り組み、同盟国である私たち日本を筆頭に、世界に影響を及ぼし続けている。
当初は、すぐに本性を現し、無能もバレて、世界中からブーイングを浴びながら、“任期の途中で罷免”などという予想さえ飛び交っていたのに、いったいなぜこんなことに!? そんな、あなたの疑問にすべて答えるために、あの“アポなし突撃男”が、またまたやってくれた! ブッシュ政権にケンカを売って拍手喝采を贈られ、世界的大ヒットを成し遂げた『華氏911』のマイケル・ムーア監督だ。
実はムーアは、2016年7月に「大統領選にトランプが勝利する5つの理由」というエッセイを書き、この暗黒時代を予測していた。止められなかった未来を迎えてしまった今、11月の中間選挙に一撃を与え、次の“再選”という未来だけは体当たりで阻止するために、監督生命はもちろん人生さえもかけたムーアの闘いが始まった──!

私たちのヤバい未来、そこまで伝えて大丈夫? 危険レベルぶっちぎりの命がけチェンジ・ザ・ワールド・エンターテインメント!

支持率も得票数さえもヒラリー・クリントンの方が上だったのに、そもそもなぜ当選できたのか──トランプが勝利を奪うために駆使した、アメリカ大統領選の“裏技”とは? そして、トランプ支持の少数派が望む政策が、アメリカ全土の意志へと変わってしまう、見事なまでに狡猾な“からくり”とは? ムーアの執念の突撃取材により、驚愕の真実が次々と暴かれていく。やがてムーアは、トランプの言動が狂気に突き進む直前のヒトラーに重なることに気付き、ナチスを裁いた99歳の元検察官に意見を仰ぐと、恐ろしい答えが──。
さらに、ムーア砲が直撃したのは、トランプだけではなかった。ブッシュ、クリントン、民主党、そしてヒーローだったはずのオバマまでが、“やっちゃった過去”を暴かれて吹き飛ばされる。その一方で、カメラは銃乱射事件で生き残った高校生の銃規制への涙の訴えや、汚染水問題に立ち上がった住民、教師による低賃金に抗議するストなど、巨悪に立ち向かう個人の勇気ある行動が、全米へと広がっていくムーブメントも追いかける。ただし、甘っちょろい“希望”ではなく、今すぐ必要な“行動”だと釘を刺しながら──。
いつの間にか“トランプ慣れ”してスルーしているうちに、“実はデキるヤツ”に見えてきたなんて、政治家も、メディアも、そしてあなたも、みんなトランプの術中にハマってた! まずは、トランプのワナを解いてくれる爽快なムーア砲を浴びることが、チェンジ・ザ・ワールドの第1歩!!

COLUMN.1

ドナルド・トランプってこんな人!?

不動産会社トランプ・オーガナイゼーションの会長兼社長、カジノ・ホテル運営会社トランプ・エンターテイメント・リゾーツの設立者。1971年、父親のエリザベス・トランプ・アンド・サン社の経営権を受け継ぎ、70~80年代に隆盛を極める。その後、自身の会社を4度も破産させたが、その度に復活を遂げた。所有・開発する不動産に必ず「トランプ」を冠した名前を付けるなど、自己顕示欲が非常に強い。大統領就任前は、10年以上もの間、TVのリアリティショー「アプレンティス」にホスト役で出演。「お前はクビだ!」などの流行語や過激で差別的な発言で話題を呼んだ。また、「若く美しい女性を手に入れることは成功の証」だとして結婚と離婚を繰り返し、現妻のメラニアは3人目、子供は5人。前々夫人イヴァナとの間に生まれた長女イヴァンカを大統領補佐官に任命するなど、自分に意見する人間を避け、家族や忠誠心の高い人物で周囲を固める。2016年の大統領選では、共和党代表として立候補、エリート支配層を批判し、民主党代表のヒラリー・クリントンに勝利。公職未経験のビジネスマンが大統領に就任するのは初めて。オバマケア撤廃、移民規制の強化、パリ協定離脱表明などの政策を打ち出し世界を混乱させた。「フェイクニュース」発言に象徴されるメディア嫌い、ツイッターの度重なる炎上、官僚の相次ぐ辞任・解任、ロシア疑惑など、常に話題の尽きない存在。

COLUMN.2

本気のムーア!!
11月の米中間選挙への一撃なるか!?

中間選挙とは、アメリカ大統領の任期4年のうち2年が経過したタイミング(=大統領選の中間)で行われる、連邦議会上院の3分の1(今回は欠員補充もあり35議席)と下院全ての議員の改選のこと。その時点での政権に批判的な票が投じられる傾向にあるが、現在は上院・下院ともに共和党が議席の過半数を占めている。トランプ大統領に不満を抱く共和党員の増加、相次ぐ暴露本の出版、世代交代による支持層の変化、セクハラを告発する #metoo ムーブメント、ロシア疑惑の捜査などにより、トランプ政権も例外なく苦戦を強いられるだろう。一方でトランプ側は、所得減税を始めとする税制改革法や、史上初の米朝首脳会談に象徴される北朝鮮との融和を図るなど、選挙公約の実行を通して、低下した支持率の回復を目指す。

STORY STORY

2016年11月7日、投票日前夜、アメリカの人々は初の女性大統領の誕生を確信していた。だが、11月9日、当選者として発表されたのは、ヒラリー・クリントンではなく、「あり得ない」はずのドナルド・トランプだった。
「僕らはどれだけ彼を知っているだろう?」と、マイケル・ムーアは問いかける。娘のイヴァンカを異常なほど溺愛し、人種差別を堂々と表明し、独裁者など強い男が大好きで、女性にはセクハラ三昧。誰もが知っているそんなスキャンダルはしかし、トランプというモンスターの爪先ほどの情報にすぎなかった。
時は2010年にさかのぼる。トランプの古くからの友人であるスナイダーという大富豪が、ムーアの故郷であるミシガン州の知事に就任した。権力に目がくらんだ知事は、緊急事態を宣言して市政府から権限を奪い、代わりに自らの取り巻きを送り込んだ。2013年、スナイダーのもとを訪れたトランプは、友人が支配する街を見て、羨ましそうに「次に進むためなら仕方ない。国も同じかも」などと発言。さらにスナイダーは金儲けのために、黒人が多く住むフリントという街に民営の水道を開設するが、この水に鉛が混じっていた。だが、知事は頑として問題ないと主張し続ける。
時は再び選挙運動の真っ只中へ。そもそもアメリカは左寄りの国で、トランプの支持率は元々低い。リベラルな民主党が常に高い支持率を誇り、大統領選の得票数も、ヒラリーがトランプより300万票多く獲得した。では、いったい何があったのか? ムーアはこの国の根深い問題である、ひとり1票ではない“選挙人制度”と無投票数が絡み合い、トランプを支持する少数派がアメリカ全土の意志へと変わってしまう、恐ろしい“からくり”を明かしていく。
さらにムーアは、罪はトランプだけではないと、勝利だけに走り民主党のハートを失くしたビル・クリントン、労働者階級や若者から絶大な人気のあったバーニー・サンダースを降ろしてヒラリーを代表にするために、民主党が使った禁断の手を紐解いていく。
カメラは一転、腐敗した権力と闘うために、立ち上がった人たちを追いかける。フリントの汚染水問題に抗議する地域住民、「誰もやらないなら私がやろう」と下院に立候補した、1年前まではレストランで働いていたアレクサンドリア・オカシオ=コルテス、ウエストバージニア州で教師の低賃金に抗議するために決行されたスト、フロリダ州パークランドの高校銃乱射事件で生き残った高校生エマ・ゴンザレスの銃規制への訴え──。
激しくなる一方の抗議に追いつめられたスナイダー知事は、当時の大統領オバマに助けを求める。オバマとの対話集会が開かれ、市民は“私たちのヒーロー”が助けてくれると歓喜するが、あろうことか彼は壇上で水を飲むパフォーマンスを行い、人々を心底ガッカリさせる。
再びカメラがトランプに戻り、ムーアはヒトラーが暴走する前のドイツと今のアメリカとの共通点を挙げる。そしてヒトラーは、“ドイツ・ファースト”を掲げて人気を博した。トランプは今、2期目への選挙運動を始めている。「4年、8年、16年だっていい」などと口走りながら。もはや民主主義はそこにあるものではなく、守らなければならないものに変わったのだ。
果たして、世界一のトランプ・ウォッチャーとなったムーアが出した、未来のための答えとは──?

PRODUCTION NOTES

マイケル・ムーア 監督/脚本

1954年4月23日、ミシガン州フリント生まれ。
父と祖父は組み立て工、母は秘書、叔父は自動車工労働組合創立者のひとり、という家庭環境で育った。10代の頃から政治活動に目覚め、高校を卒業した年には校長と副校長の解雇を求め教育委員会選挙に出馬、当選。辞職に追いやった。地元の大学を1年で中退。ジャーナリストとして22歳で地元紙を刊行、30代前半に西海岸に渡り編集者を務めるが5ヶ月で地元に戻る。89年、ゼネラル・モーターズによる大量解雇に揺れるフリントと当時のGM経営者ロジャー・B・スミスにアポなし突撃取材を敢行したドキュメンタリー映画『ロジャー&ミー』を製作、批評家の絶賛を浴びる。その後、テレビの世界にも活躍の場を広げ、独自の取材スタイルを通じて批評精神に溢れたユニークな番組を生み出していった。98年TV番組「マイケル・ムーアの恐るべき真実 アホでマヌケなアメリカ白人」が話題に、人気を博した。02年、アメリカ銃社会の抱える問題点を鋭くえぐった『ボウリング・フォー・コロンバイン』を発表、アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞のほか、カンヌ映画祭特別賞など数々の賞を受賞。また、ジョージ・W・ブッシュ大統領をこき下ろし、返す刀で民主党をも一刀両断にしたノンフィクション「アホでマヌケなアメリカ白人」は全米でベストセラーに。04年には、9月11日の同時多発テロ以降のアメリカ社会をテーマにブッシュ政権の実態に迫る『華氏911』を発表、カンヌ映画祭最高賞<パルムドール>を受賞。批評、興行両面で大成功を収める。その後、『シッコ』(07)では米医療保障制度に、『キャピタリズム マネーは踊る』(09)では、アメリカの資本主義の不条理さに、『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』(15)では、各国を巡りアメリカにはない様々な制度や文化を皮肉たっぷりに紹介し、アメリカの由々しき現状に、ことごとくメスを入れ続けた。
あらゆる権力からの抵抗にもめげず、ユーモアを身に纏い、一貫してアメリカ社会の銃、人種問題、政治、企業の不正に対して猛然と闘いを挑む不屈の異端ジャーナリストとして、作品を世に放ち続けている。