プラマーの次にキャストに加わったのは、馬のオーナーで、愛嬌ある「負け組」のデル・モンゴメリー役を演じたスティーヴ・ブシェミ。「デルは競馬場で育ち、その世界しか知らないような男だ。過去の栄光に浸りながらも、自分のキャリアも終わりに近いと感じ葛藤している」とブシェミは言う。それに監督が付け加える。「デルは、どうにか生活していこうと頑張っている男なので、露骨な悪人にはしたくなかった。ブシェミは自然体で周囲にいる皆を支えてくれる、この映画には欠かせない人物だよ」
次にキャストに加えられたのは、騎手ボニー役のクロエ・セヴィニー。原作小説では2人だったキャラクターを統合して作り上げた映画版ボニーは、競馬場でチャーリーに出会ってから、彼にとって母親のような存在となる。セヴィニーは語る。「ボニーは皆を育む母親みたいな人。この映画の主要人物の中では唯一の女性だけど、ちょっと大雑把な女性ね。彼女はチャーリーを小さな子供として扱わないから、なんだかいい関係だな、って思ったわ」
ヘイは、セヴィニーとブシェミの共演を特に喜んでいた。「僕が大好きな映画『トゥリーズ・ラウンジ』(96)以来、2人が共演する姿を見られたことがすごく嬉しかった。2人の間には、嘘偽りのない気楽さがある。それに役者として相性がとても良いんだ」
さらに、カルバン・クラインのモデルから俳優に転向したトラヴィス・フィメルが、厳しい人生を歩んできた女好きの父親レイ役を、インディーズ映画から熱視線を集めるスティーヴ・ザーンが放浪者シルバーを演じる。「レイとシルバーは2人とも大人になりきれていない大きな子供みたいで、自分が守るべき人たちを守れない。根はいい人なのですが、良くない選択をしてしまう。そんな役柄を、トラヴィスとスティーヴはとてもうまく演じてくれた」と監督は語る。