雄大で荒涼とした風景と感情
ジョン・ヒューストン、
ヴィム・ヴェンダースから
ウィリアム・エグルストンまで

 本作の主要撮影は2016年8月13日にオレゴン州ポートランドで始まり、同年9月10日に終了した。主にポートランド・メドウズ競馬場や、ポートランド北部郊外のデルタ・パークなどの町とその周辺部で撮影された。車が移動する場面や川の場面はポートランド東南東にあるフッド山近辺の山岳部で、そしてさらに3週間かけてオレゴン州バーンズの小さな集落で砂漠の場面を撮影した。ヘイは、デンマーク人の撮影監督ヨンクと共に、太平洋岸北西部のみずみずしい緑の色調と、後半部分でワイオミング州ララミーからコロラド州デンバーに向かうチャーリーの旅路の背景となる、乾ききった太陽が照りつける広大な砂漠の高地の色調を捉えた。
ヘイとヨンクはインスピレーションを求め、ジョン・ヒューストン監督の『ゴングなき戦い』(72)やヴィム・ヴェンダース監督の『パリ、テキサス』(84)、ポール・トーマス・アンダーソン監督の『ザ・マスター』(12)など様々な映画を観た。彼らはまた、ウィリアム・エグルストンやスティーブン・ショア、そしてジョエル・スタンフェルドなどによる写真作品の数々も参考にし、アメリカの辺境に見られる雄大で荒涼とした風景を研究した。こうして2人は、映画の視覚が感情に及ぼす影響を強化していった。
また彼らはチャーリーをできるだけフレームの中央に置き、幅よりも高さを強調するために1:2.35(シネマスコープ)ではなく、1:1.85(アメリカンビスタ)で撮影するようにした。その結果、登場人物は周囲の広大な景色の中で小人のように見える。「僕たちは、この少年の人生を間近で見ながらも、彼を助けることができないということを表現したかった。ヨンクと僕は、優しい美しさとソフトなリアリズムでこの映画を表現したかったんだ」とヘイは語る。