今やイタリアを代表する監督となったパオロ・ヴィルズィは、『はじめての大切なもの』と『人間の値打ち』が数々の国際的な賞を受賞したことから、「アメリカで映画を撮ってくれ」というオファーをいくつか受けていた。だが、イタリアを心から愛し、母国での映画製作にしか興味のなかったヴィルズィ監督は、すべて断り続けてきた。そんな監督を説得したのは、インディアナ・プロダクションのプロデューサーたちだ。彼らはアメリカの小説が詰まった箱を、ヴィルズィ監督に次々に送りつけた。 その中に、高齢のカップルがキャンピングカーで旅をするという、マイケル・ザドゥリアンの小説があった。ヴィルズィ監督は、「私はこの本に非常に魅力を感じた」と語る。「その破壊的なマインド、つまり社会的および医学的規制、さらには医者や自分の子供たちに強制される入院からの反逆に惹きつけられた。」 それでもまだ、アメリカへ行くことに抵抗のあったヴィルズィ監督は、プロデューサーたちに「もしドナルド・サザーランドと、ヘレン・ミレンが出演を了承したら、映画を作ることを誓う」と約束する。実はヴィルズィ監督は、まず無理だと思っていたのだが、なんと二人は快諾!すぐにプロジェクトが動き始めた。