すべての始まりは、「TBS社内に三島由紀夫の貴重な映像がある」という情報だった。企画プロデュース平野隆とプロデューサー刀根鉄太は、全部で4時間近くある映像を見て、東大全共闘との討論に目を奪われた。当時は三島についての知識はごく一般的だったという刀根は、「討論は難解で理解できない部分もあるのに〝とにかく面白い〟ことに驚きました」と語る。
この約80分の討論の映像はTBSだけにしか存在しない、つまり〝世界に一つだけ〟だと知った平野と刀根は、「これは絶対に後世に残さなければならない」「そして見る人に、あの900番教室にいるような感覚を味わってほしい。お茶の間でTVを見るのではなく、映画館の中で〝体感〟してもらいたい」との思いに駆られる。
そこで平野は、同期であり報道局編集部長の竹内明に連絡し、報道素材の使用や取材の協力などTBS報道局のバックアップを得て、企画をスタートさせる。
2018年初頭のことだった。