50年前も今も、それぞれのスタンスを持つ元東大全共闘の3人

何と言っても〝現場〟にいた方々に〝真実〟を語っていただこうと、当事者を探すことからスタートした。まずは、カメラと共に入ったTBSの記者だ。「定年退職された元キャスターの小川邦雄さんだとわかり、最前列から見ていた様子を伺いました」と刀根が説明する。

そして、東大全共闘随一の論客と呼ばれた、芥正彦氏は外せない。現在は劇作家、演出家、俳優、舞踏家、詩人という肩書を持つ芥氏との最初の面会という大役は、刀根と共同プロデューサーの大澤祐樹に委ねられた。「すごい目力と迫力でした。伝説の闘士は今も熱かったです。『なぜこれを映画にしたいんだ?』と詰め寄られて、ここでバシッと決めなければ引き受けていただけないだろうと必死でした。この奇跡的な討論を、下の世代にも引き継がなければならないという想いを懸命に話しました。『わかった、協力しよう』と言っていただけた時に、初めてこの企画はいけると思いましたね」と刀根が振り返る。本番のインタビューはなんと4時間に及んだ。豊島監督は「勝負だと思いました」とその時の気持ちを思い出す。「『お前、何も知らないな』と怒られる様子が撮れたら面白いなと思っていたら、本気で怒られました(笑)。これが自分の仕事だと頑張りましたが、話がどんどん脱線していって、勉強になりましたね」

当日の司会を務めた木村修氏からは、討論会の後日に三島と電話で話したという意外なエピソードも飛び出した。「あれで一気に討論会の見え方が変わりました。木村さんのお話を聞いて、三島に会ってしまった人たちというのは、やはり少なからず運命を変えられたのではないかと感じましたね」と豊島監督は指摘する。

「敗北」という言葉で言われることもあるが、全共闘運動の総括はどう果たされたのかという質問は、「総括されていないということは、終わっていない。つまり現代につながっていると考えて、この質問を用意しました」と豊島監督は説明するが、事前の質問表には入れていなかったという確信犯でもある。そんな監督について刀根は、「討論を見て、監督も熱くなっていたんじゃないですか。それにしても、あらためて監督はハートが強いなと思いました」と称賛する。