豊島圭介VS13人の証言者たち

4人の識者は、それぞれの役割で選ばれた。平野啓一郎氏は三島文学に造詣が深く、三島の後継者とも言われている小説家だ。内田樹氏は、全共闘運動の後に東大に入学していて当事者に近い。小熊英二氏は、1968~69年あたりの時代を非常に研究している学者。瀬戸内寂聴氏は、実際に三島と会って親しくしていた。

平野氏と内田氏のインタビューを聞いて、スタッフ全員が様々な疑問が解けたという。小熊氏の時代背景の話で、尺の問題でカットせざるを得なかったが興味深かったのが、木村氏の学生服の話だ。当時、詰襟は右翼の学生が着る物と認識されていたので、木村氏は反動的だと指摘されて、会の途中で脱いだのだという。

「取材を終えたスタッフは、勉強になったり刺激を受けたりして、いつも高揚して帰ってくるのが印象的でした」と刀根が指摘する。「この映画のタイトルは『三島由紀夫VS東大全共闘』ですが、『豊島圭介VS13人の識者たち』の討論ものでもあります。芥さんにはぼろ負けでしたけれど」と笑う。「いえいえ勝とうとかとんでもない。胸を借りるつもりで向かい合いました」と答える豊島監督。