“His face recalled the noblest moment of Greek sculpture-pale, with a sweet reserve, with clustering honey-colored ringlets, the brow and nose descending in one line, the winning mouth, the expression of pure and godlike serenity. Yet with all this chaste perfection of form it was of such unique personal charm that the observer thought he had never seen, either in nature or art, anything so utterly happy and consummate.”
Description of the young character Tadzio
in Thomas Mann’s novel, Death in Venice
彼の顔は最高峰のギリシャ彫刻のように色白で、優しくもよそよそしさを漂わせており、房になった蜂蜜色の巻き毛、眉からすっと一筋になった高い鼻筋、勝ち誇るような口元、そして純粋で神のような落ち着きをたたえた表情をしていた。姿形がこれだけ完全でありながら、自然であるのか芸術であるのか、だれも見たことがないほど喜ばしく完璧であるというのは、独特な個人の魅力があるがゆえだった。
——トーマス・マン「ベニスに死す」 若い登場人物
タジオについての描写 (海外プレスより翻訳)
1970年、映画監督ルキノ・ヴィスコンティは、トーマス・マンの小説『ベニスに死す』(71)の映画化において絶対の美の化身となれる完璧な少年を探し、ヨーロッパ中でオーディションを開催していた。そして、ストックホルムでビョルン・アンドレセンをみつけた。この内気な15歳のティーンエイジャーは一夜にして世界的な名声を得ることになり、ベニス、ロンドン、カンヌ、遠く東京に赴き、波乱の青年期の短くも強烈な時期を過ごすことになった。『ベニスに死す』公開から50年、巨匠ヴィスコンティの傑作において伝説のキャラクター、タジオを演じたビョルン・アンドレセンが、50年の時を経て、彼自身の記憶、映画史、輝く魅力と悲劇の旅へと観客を誘う——。