「パヴァロッティの人生とは何か?」から始めたオスカー監督

 ドキュメンタリー映画『ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK 』を監督したロン・ハワードは、同作でタッグを組んだプロデューサーのナイジェル・シンクレアから、デッカ・レコードがパヴァロッティのドキュメンタリーを撮れる映画監督を探していると聞いた時、彼についてもっと知りたいという衝動に駆られた。すぐにリサーチを開始し、部外者の新鮮な目線でパヴァロッティを見ることは、スリル以外の何物でもないことに気づく。ハワード監督は、「まずは彼の巨大な成功に夢中になった。しかし、さらに深く覗き込んだ時、彼がいかに多くの芸術的なリスクを背負っていたかも見えた。それは予測できないドラマで、極めて人間的だと思った」と振り返る。

 貴重な映像、絶頂期のパフォーマンス、保管されたインタビュー、数十本の新しいインタビューに目を通したハワード監督は、パヴァロッティの良きことを好む陽気で楽天的な気取らない性格に魅了される。しかし同時に、トップスターとしての地位、天井知らずの期待、荒れ狂った人間関係と戦う姿と、名声を得てもなお高みを目指す姿にも惹かれていく。
 ハワード監督は、映画全編の構造を3幕のオペラとして捉えることにし、「パヴァロッティの人生とは何か?」という疑問をベースにすべてを構築したと語る。「彼の最も野心的な目標は、より多くの人がオペラを愛するようになることだった。彼は音楽と人間を心から愛し、音楽の美しさを世界中の多くの人々に届けたいと思っていたんだ」