3度のアカデミー賞に輝いた録音技師、クリストファー・ジェンキンズが、伝説のアビー・ロード・スタジオで、ドルビーアトモスの多次元音響技術とパヴァロッティの歌声を結合させた。ジェンキンズは、生の歌声を聴いた時に体で感じる力強さや鋭さを、映画館でも感じられるようにしたいと考えたと語る。「どんな音楽的手法よりも、人間の声こそが感情に訴えかける。パヴァロッティの声は、最も精巧な楽器だ。だから彼の歌声は、オペラに限らずジャンルを超えるのだと思う。彼の声は、世界中の人が偉大な絵画、音楽、食べ物、愛情、思いやりから感じるものと同じだ」
ハワード監督は、観客を引き込むためには、ミキシングが重要だと考えていた。オペラファンはアンプを通さない自然な声が劇場に響き渡ることを好むが、最先端の録音技術が、その喜びを再現できると証明した。ハワード監督は、「すべての観客に、かつてない心躍る体験をしてもらいたい。この映画のサウンドに、皆さんびっくりすると思うね」と胸を張る。
ジェンキンズは、ドルビーアトモスを使うことで、様々な環境で歌うパヴァロッティの声を、サウンドトラックに取り込むことができたと説明する。「小さなリハーサル会場で、パヴァロッティと二人きりでいるような気持ちになるような場面も作った。また、アマゾン川の流域にいるような気分になる場面や、野外競技場で三大テノールを聴いていると感じる場面もある」
ジェンキンズはまた、オーケストラのサウンドをリアンプして、可能な限り生き生きさせたと語る。「パヴァロッティの曲とオーケストラの曲を持ってきて、アビー・ロードの第一スタジオで再録音した。部屋に12本のマイクを置いて、映画館内の音響を再現したんだ。こうすることで、音がオリジナルの録音にとても近くなり、同時に普通なら不可能な録音の空間を作ることができた」
なぜ、パヴァロッティの声は、多くの人々を感動させることができたのか? ユニバーサル・クラシックス・アンド・ジャズのCEOで、本作の制作デザインを担当したディクソン・ステイナーは、「声を聞くと、一つ一つの音符を大切にするフレージングの特徴と美しさで、すぐに彼だとわかる」と指摘する。
また、1964年からパヴァロッティの作品をレコーディングし、1990年代には三大テノールの本拠地となったデッカ・レコードのクラシック音楽部門も、過去の非常に貴重な記録を提供し、本作の強い味方となった。