ダイアナ妃とボノとの友情から生まれたスピリット

 パヴァロッティの人物像について、ハワード監督はこう語る。「彼はいい奴だった。愛らしい男なんだ。同時に抜け目がなく、活力にあふれていた。この映画ではそんな両面を表現している」
 劇中で最も観客を引き込む場面の一つが、1991年にパヴァロッティがダイアナ妃に会うところだ。それは彼にとって転機となった。パヴァロッティはダイアナ妃とあっという間に友達になっただけでなく、有名人が世界のためになることをすることができるのだと彼女から学ぶ。
 ハワード監督は、「彼らはお互いを称賛していた。慈善事業を支援するだけでなく、そのために尽力して献身することで、大きな満足感を得ることができるということを、ダイアナ妃は彼に教えたのだと思う。彼はそれを生涯続けたんだ」と解説する。
 その想いが、1992年にモデナで開催された「パヴァロッティ&フレンズ」のチャリティ・コンサートにつながった。それを通して彼は、世界中で慈善事業に関わっているもう一人のアイコン的人物、U2のボノと友達になる。劇中でボノは、パヴァロッティがどのようにその企画を成功に導いたか、好奇心をそそるエピソードを楽しげに語っている。「ルチアーノは、感情に語りかけるのが非常に上手いんだよ。だから僕たちは結局モデナに行くことになった」

 ハワード監督は二人の友情についてこう語る。「ボノはパヴァロッティのことが本当に大好きで、それがはっきりとわかる彼のインタビューは、パヴァロッティの思い出にとっても、私たちの映画にとっても素晴らしい賜物だった。彼が自分の人生経験をどうやって自らの音楽や人道援助の働きにつなげたのかという謎に、ボノが光を当ててくれた。チャリティーイベントをするアーティストは数多くいるけれど、パヴァロッティのように大勢の人たちを巻き込むやり方は他に類を見ない。オペラとポップスをミックスさせたことで批判されたりしたが、多額の募金が集まって、大きなインパクトを与えることができた」
 音楽と同様に慈善事業も、パヴァロッティの人生を愛する心から広がったものだ。マントヴァーニが、こう締めくくる。「ルチアーノはボジティブな姿勢を皆に向かって発信しようとした。どんな時にも人生を最大限に生きることができるということをいつも示してくれたわ。彼は偉大なアーティストだけれど、才能だけでは十分ではない、鍛錬も不可欠だと分かっていた。コンサートをするたびに質が上がっていくべきだというのが、彼の信念だった。人生の秘訣とは、自分がやっていることを楽しむこと、またいつの時にもお返しをすること。それが彼の生き方だったのよ」