2023.10.02 POSTED

瀬々敬久監督「春に散る」をひっさげ川越少年刑務所で講演会実施!

9月22日(金)に川越少年刑務所にて本編の上映(上映は18日)と瀬々監督の講演会を実施致しました。講演では、「春に散る」撮影への道のりから、監督の映画との出会い、どのように監督になっていったのかなどについて語られました。
※以下、講演の一部を掲載※

瀬々監督:~26歳の時に上京して助監督を始めました。「お前、もうこの業界では歳をとりすぎてる」と言われたのですが、なんとかやってこれました。その時に支えてくれたのが、一緒にやってた仲間がいた。それが大きかったです。この映画の中でもそうですが、仁一は年老いてから、若かった頃一緒にボクシングをした仲間と再び一緒に暮らそうと声をかけますよね。いま、皆さんの年齢で出会った仲間、友人というのは永遠、永久に続いていく人たちだと思います。そういう人たちを絶対に見つけたほうがいいと思います。
もう一つ言えるのが、音楽や小説といった娯楽というか、そういった好きなものに勇気づけられるという事が往々にしてあるという事です。僕が沢木耕太郎さんの小説に出会ったのもそうでした。音楽や友人など、自分にとってのそういうものに出会ってほしい。そう思います。
僕にとって映画とは仕事です。仕事というのは英語で2つ言い方があって「job」と「work」。「job」は使役、人に与えられる仕事。「work」というのは自ら率先してやる仕事。人生活動のようなものだと思います。僕らは映画を通して、仕事を通して人と出会っていきます。それが生きる事に繋がっています。この映画の中で、考えるボクシング「自由になれ」というセリフがありました。人から言われた事ばかりやっているとなかなか自由になれない。自分にとっての「work」を発見するという事がとても重要な事です。
そうなれる仕事を見つける事がとても大切なことだと思います。映画の中ではそれが「ボクシング」でした。
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色々言いましたが、自分で考える、そして自由になる。人から言われた仕事ではなく、自分で進んでできるやりたい仕事、それを見つける事。そして、やり直しは何度でもきく。そういうことが、皆さんにこの映画を通じて伝えたかった事です。

公開中作品を観られる機会がないので楽しんでいただいた様子の受刑者の方々。
最後に質問に監督が答える場面もあり、「色んな人からの要望を聞きながら映画を撮るのは大変では?」という質問に対して

シネコンでやるような大きな商業映画というのは僕のやりたい意志だけでどうにもならないんです(笑)。よく言ってるんですが、そういう映画を作るというのは大きなビルを建てるようなものなんですよね。たとえば、高層ビルの最上階には住居部分があったり、真ん中にはオフィスがあったり、一番下にはお店が入ったりしています。大規模な商業映画ってそういうビルなんですよ。そうすると、それぞれの人を満足させないといけない。いろんな種類の人を。これは結構大変なことなんです。もう一方にあるのは、一軒の家を作るように映画を作るという仕事です。そこに住む一家族を満足させればいい。そこでは独特の個性豊かな家を作ることも出来る。予算は少なく小さい映画かも知れないけど、もう少し自由に作れる。こういうふうに仕事というのはたくさんあります。それぞれに魅力があります。大きなビルを建てるということは、大変さもあるけど、色んな人と色んな考えの持ち主と一緒にやるという楽しさがあります。色んな種類の人に人に問いかけ訴えかけることのできるような映画。それとは別に、自分の小さな家を建てるという仕事も10年に1本くらいやっているんですけど、それは自分と知り合いでお金を出し合って作る映画だったりします。人間と一緒で映画も色んな種類があるから楽しいんだと思います。

と、答える場面もありました。
監督の答えに対して笑いも起きる一方、監督の真摯な言葉に真剣なまなざしで聞き入る受刑者の姿も印象に残る講演会となりました。