2023.10.05 POSTED

瀬々敬久監督、松浦慎一郎、加藤航平、星野秀樹ティーチインイベント レポート

10月4日(水)、TOHOシネマズシャンテにて瀬々敬久監督、加藤航平(撮影監督)、松浦慎一郎(出演・ボクシング指導)、星野秀樹プロデューサー登壇によるティーチインイベントを実施致しました。

満員御礼でスタートしたティーチインに瀬々監督は「テオ・アンゲロプロスやヴィム・ヴェンダースの映画が上映される同じ場所で自分の映画が上映されるのがとても嬉しい」と感激。観客の中には22回も映画を鑑賞したという熱狂的なファンもおり、Q&Aも白熱したものになった。

公開後の反響について松浦は「ボクシング関係者からの反響も多くて、翔吾の『わかったよ、走るよ』というセリフは今まで観た映画の中で最も感動したセリフになったと言われた」と絶賛の声を伝えると、シャイな瀬々監督は「僕の友人は口の悪い奴が多いから『最近の瀬々映画ではマシな方だな』と言われた」と自虐。場内爆笑となった。

Netflix版『新聞記者』の横浜を見て翔吾役に抜擢したという瀬々監督。その理由について問われると「俳優とは演じているときに素が出てくるのが面白い。今回も流星君の素が出ている部分があってそれがチャーミング。『新聞記者』では彼の真面目さが出ており、本作でもやんちゃながらも真面目さが出ている。彼の持つその芯の部分がいいと思った」と好青年的な人柄に惹かれたと明かした。

また本編から泣く泣くカットしたシーンの有無についての質問が挙がると、星野Pは「撮影時ではなく脚本時にカットされたところはあって、そこはそもそも撮影自体を行っていない」と打ち明け、瀬々監督も「俳優たちの体調面を気遣う意味も含めて、カットするか否かの判断は撮影前にシビアに行った」と安全第一で製作が進められたことを語っていた。

『あゝ、荒野』『アンダードッグ』などのボクシング映画に関わってきた松浦は、ボクサーを演じた横浜のポテンシャルについて「流星君は覚悟と信念が凄くて、僕に『松浦さんがこれまで作ったことのないボクシングシーンにしてください』と言った時の目つきや言い方は、僕にお願いをしながらも自分もちゃんとそれに応えるという肝の据わり方があった」と回想。

ライバルボクサー役の窪田正孝については「窪田君はボクサーに対するリスペクトがあり、自分でもボクシング映像を見て好きなボクサーを見つけたらそれを真似して凄く練習していた。でも普段はひょうひょうとしていて笑顔で、常に現場を盛り上げようとしてくれる。そのようなキャパシティの広さが窪田君にはあった」と人柄を伝えた。

そんな2人の凄まじい試合にカメラで肉薄した加藤は「当初は様々なボクシング映画を参考にして映画としてのボクシングを撮ろうと思ったけれど、いざ2人がリングに上がって戦う姿を見たら、そんなのどうでもいいと思った。僕には彼らが本物のボクサーにしか見えず、目の前で起こっていることを撮ればいいボクシングシーンになると確信した」と横浜&窪田のリアルすぎる姿に痺れていた。

劇中にはミット打ちの最中に翔吾の凄まじいパンチでミットが吹っ飛ぶシーンがある。松浦は「撮影ではわざと飛ばしたけれど、流星君との練習中に流星君のフックが強すぎて実際にミットが飛んだ。そこから着想を得たもので、本番ではいい感じにカメラの前に飛んでくれて良かった」と舞台裏を紹介した。

本作撮影後、横浜は実際にプロボクサーとしてのライセンスを取得した。その指導にも当たった松浦は「時間的に間に合わなかったので、プロに教える以上の厳しさで指導しました。というものプロテストを受けに来るボクサーたちは世界チャンピオンを目指している人たち。相手が横浜流星だとわかると気合が入る。それに負けないくらいにしなければいけなかったので、実際にプロとスパーリングしたりしてプロテストに臨みました。練習は相当きつかったと思うけれど、流星君は文句ひとつ言わずにやっていた」とひた向きな横浜の姿を思い出していた。

最後に瀬々監督は「監督の仕事はスタッフ・キャストに託すことが大切。最後の浩市さんの死顔は、流星君に託したという顔。そこには相手に託す幸福がある。社会は相手に託すことによって前進していくものだと思うので、そのような幸せがこの映画にはあります。この映画も皆さんに託したので、たくさん可愛がってください」と熱弁。

星野Pからも「6年以上に渡って企画をして、凄いスタッフ・キャストに集まっていただき完成した作品。それを複数回も観ていただくというのは、プロデューサー冥利に尽きることです」とリピーターの皆様に感謝を述べイベントは終了した。