2024.02.19 POSTED

<完成披露試写会レポート>

2月13日(火)約500名を超える観客が見守る中、会場には作品を象徴する巨大なクジラの造形が出現し、
MCの呼びかけと共に、杉咲花、志尊淳、小野花梨、桑名桃李、さらには主題歌を手掛けたSaucy Dogからヴォーカル・ギターの石原慎也がクジラの上から登壇!
さらに、原作者の町田そのこ、成島出監督も登壇して舞台挨拶が始まった。

杉咲は、この作品への出演を「かけがえのない出会いになりました」と語り「この物語で描かれていることをひとつひとつ知っていくにつれて、もしかして自分がいままで見えていなかったかもしれない存在の周波数、自分が聴こえる周波数が少しだけ広がったんじゃないかと思っていたりもして、すごく大切な出会いになったと思います」と本作への並々ならぬ思いを口にした。

志尊は「知らないことが多すぎたので、とにかく知ることを大切に演じさせていただきました」と語り、事前にリハーサルの時間をたっぷりとった上で、撮影に入ったこともあり志尊は「(撮影に)入るときは、みんな団結していたし、役を理解する時間も多く取れました」とふり返った。杉咲も「ウォーミングアップの時間を含め、役を知っていく時間でもあったし、お互いを信頼できる贅沢な時間をつくっていただきました」とうなずく。

小野は杉咲とは以前から仲が良く「花の家に1か月くらいお泊りしてたりした(笑)」と明かすほどだが今回、共演するにあたっては「公私混同しないように、過剰に距離をとったりしていました」と明かす。劇中でも親友同士の役柄で「役作りが要らない、お互いを探る時間が必要なくて、それは贅沢な大事な時間になりました」と充実した表情を見せる。

一方、杉咲はプライベートでもよく知る小野との共演について「友達が仕事場にいるって感覚に慣れなくて、こっ恥ずかしさもありました」と照れくさそうに明かしつつ「お芝居が始まった時、(役柄の)美晴として存在してくれる花梨を目の当たりにして、背筋が伸びる思いでした」とも。小野も“女優”杉咲花について「佇まいも、スタッフ一人ずつへの気遣いも、普段は見れない一面を見せていただいて、非常に勉強になりました」と語ったが、杉咲さんは「ちょっとイジられてるような…(苦笑)」と返し、2人の微笑ましいやりとりに会場は笑いに包まれた。

桑名は本作が映画初出演で、舞台挨拶に登壇するのもこれが初めて。緊張した面持ちを見せていたが、現場の様子を尋ねられると、「(杉咲さんが演じた)貴瑚さんの家のテラスから見えた景色がすごくキレイでした。あと、飛行機が初めてだったからすごくワクワクしました」と笑顔で語り、さらには「みんなの演技に圧倒されちゃって、演技してるのを間近で見て、腰をぬかしちゃいそうになりました」と語った。

本作の主題歌「この長い旅の中で」を書き下ろしたSaucy Dogのヴォーカル・ギターの石原は、本作の物語に触れ「僕自身、他人のこと心から信頼するのが難しい性格なんですが、原作を読ませていただいて、(孤独を抱える)52ヘルツのクジラたちってたくさんいるんじゃないかと思ったら、気が楽になりました。自分も人のことを信じてみたいとか、自分のことを騙す人がいても、その人のことを大切に思っていたいと思える人はいるなと思ったので、そういう気持ちで書かせていただきました」と曲に込めた思いを明かした。
杉咲は主題歌「この長い旅の中で」について、「人との関わり合いに前向きな気持ちになれる曲だなと感じました。エンドロールが流れる時間って、生活に戻っていく心構えをする時間でもあると思っていて、劇場を出た時にそっと背中を押してくれる温かい音楽が最後に流れるのを嬉しく思いました」と称賛と感謝の言葉を口にする。

原作者の町田は、完成した映画について「自分の原作にはない新しい感動がグッと迫ってきました。たくさんの人が関わること、その全ての方たちが、原作者の私以上に情熱と愛情を抱いてくださって、だからこそ、私がなしえなかった、もう一歩先までみなさんが作ってくださったと思っています。ありがたいと思うと同時に、人の心と情熱ってすごいものがあるなと感動しました」と最大限の賛辞を送り、成島監督との脚本段階でのやりとりについても「ご褒美が届くような気持ちで、脚本を待っていて、普通に楽しみでした。どんなふうに生まれ変わるのかと完成するまでずっと楽しみでした」と楽しそうにふり返る。

志尊は、初めてとなった成島監督作品への出演についても言及。「10代の頃から見させていただいていて、役者だったら『出たいな』という気持ちが強かったんですけど、途中からもう交わることがないだろうと感じていた中で、このお話をいただきました。それでも簡単に『やりたいです』と言えるような作品、役柄ではなく、自分にそこまで背負える覚悟を持てなかった段階で成島さんとお話した時、作品にかける思いをお聞きして『これは一緒にやっていきたい』と思えたので、今回、一緒にできたのは幸せな経験でした」と万感の思いを語る。

成島監督は「本当にみなさん(オファーを)受けるかどうかというところから悩みが始まって、脚本も読んでいただいて、意見をもらうことを繰り返し、いろんな障害をひとつひとつ乗り越えていって、みんなで一丸となって脚本づくりの段階から始まった感じでした」と述懐。若い俳優陣との現場についても「正直、はじめは不安も大きかったんですが、リハーサルをやっていくうちに、みなさんの本気度と作品に対する誠実さ、難しい役に対するアプローチに感服しました」と賛辞を送る。

また、志尊は杉咲との共演についても「今回、僕がこの作品の出演を決めたひとつのフックは、主役が花ちゃんだったこと」と明かし、現場での様子ついて「俳優が作品に向き合う姿勢ってこうだよな…というのをまざまざと感じました。いまにも倒れそうな熱量で役と向き合っていて、撮影が終わったら終わりじゃなく、宣伝活動ひとつひとつに対しても、誰よりも前に立って突き進んでいく姿を見て、尊敬しかなかったし、お芝居をしていても『杉咲花、素晴らしいな』と思いました」とリスペクトを口にする。
杉咲は「恐縮です」と照れつつ「最初は探り探りでしたけど、この作品に対してどう思っているか? 意思を共有しながら、安吾としての眼差しをカメラが回っていないところでも向け続けてくださって、絶対的な味方としていてくださったんです。サポートに徹してくださって、こんなに素敵な共演者さんと出会えたことが幸せですし、何より身を捧げて安吾という役を演じ切られた姿に尊敬しかないです」とこちらも敬意と称賛の言葉で返し、会場は感動に包まれた。さらに、映画にちなみ「自分を元気にしてくれるもの」をそれぞれが発表。

舞台挨拶の最後には、杉咲が登壇陣を代表してマイクを握り「とても緊張しています。こんなに緊張することはあまりないんですが…」とこれから作品を観る観客を前にややこわばった表情を見せつつ「私たちは、この物語を本当に大切に思っていて、どんなふうに届けられるかを議論し続けてきました。本当にいろんなことが描かれるんですけど、最後には光を見出そうとする姿を描き切れるだろうかというところにみんなで、いまできる限りの力を注いできました。きっと色々な感想があると思いますが、そこでの気づきを人生やこの先関わっていくモノづくりにフィードバックしていけたらいいなと思っています。観てくださる方々が、この物語をもしも必要と思っていただけたら、『こんな映画があったよ』と誰かに伝えていただけたら嬉しいです。隣にいる人のことを想像できる作品になっていたらいいなと思います」と思いの丈を語り、会場からは温かい拍手が沸き起こった。